第11話 皇(後編)


「皇族に会いに行け?…俺がですか?」


 今から二十年前。たまたま本部に寄った玄宗を、野坂巌が引き留めた。

 このとき玄宗は二十歳。皇入門から三年が経ち、紀明とともに全管轄地区を回って悪鬼の退治を専門に行なっていた頃である。まだ関守ではなく、頭も丸めていなかった。

 玄宗は忙しさにかまけて放っていた黒髪を、師匠の章太郎に倣って雑に括っていた。巌にはそれが大変不愉快のようで、冷ややかな視線をくれながら「詳細は安斉に聞け」と言って踵を返してしまった。


 師匠にこの旨を話すと、彼はひとつに束ねた長い髪を揺らしながら、からからと笑った。


師匠わたし弟子おまえが仲良くしてるのが気に食わないんだろう。自分は紀明に逃げられたから。…ま、それだけじゃないけどね。自分と真逆のやり口が成功している、ってのが一番面白くないんだ。あいつは最後まで外様の入門に反対していたから。」


 皇は、全国屈指の霊能組織である。安斉・野坂・猪尾の三家で構成されていて、この三家も親戚同士である。代々世襲・一族運営のかたちを取り、余所者が入り込まない仕組みを作り上げていた。


「天下の皇も年々、霊力のある者が生まれなくなってきていてね。組織の弱体化を懸念して、各々策を講じた。…この辺は、お前を引き入れる時に話をしたね。」


 玄宗と章太郎が出会ったのは、玄宗が十五歳の夏である。既に幹部となっていた章太郎・巌・綴の三人は、それぞれ弱体化への対策を練っていた。


 巌と綴の意見は概ね一致していた。それまで口伝式だった呪術を可能な限り書き記し、術者の教育体制を整えて能力の底上げを図るというもの。彼らによる研究・教育機関は四半世紀経っても尚、本部に設置されている。


 異端なのは章太郎だった。

 彼の提案は、外部の優秀な霊能者を引き入れるというもの。皇にとって一番の御法度である。故に大きな波紋を呼び、彼は幾度となく周囲と対立した。それでも章太郎は実現すべく多くの弟子を育てつつ、入門試験を設けて質の高い術者のみを登用できる仕組みを作った。


「霊仙を口説き落とす時にね、切り札として出したのが宮様なんだ。…彼は竹ノ宮といって、皇にとって何より大事なお方だ。だが、宮様は私達には会ってくださらない。マンネリがどうとか言っていた。…だが外部の霊能者は、彼に目新しく映るだろう。」

「……俺に何をしろと?」


 警戒する玄宗へ、章太郎は手元でコーヒーカップを弄びながら「そんなに深刻じゃないよ」と笑った。


「巌の言葉通り、会いに行けばいいよ。紀明も連れてね。」

「紀明も?」

「宮様は、紀明あいつの母親をずいぶん気にかけていたから。初めての外様と、野坂昴のさかすばるの子ども。顔を見せるだけで喜ぶと思うよ。…ただ、くれぐれも失礼のないようにね。」


 彼の言葉一つで、我々は存在できなくなってしまうからね。

 そんな恐ろしい台詞を、持ち前の胡散臭い笑顔で吐かれてしまっては、玄宗は身が竦むどころの話ではなかった。初めて会った時もそうだった。章太郎がこの笑みを見せる時、玄宗では手に負えない事情が隠れているのだ。


 ミヤサマに会いに行けってよ。玄宗が紀明へ伝えると、彼は少し間を開けてから「応」と答えた。


 それから数日後。玄宗は、紀明と二人で竹林を歩いていた。舗装された砂利道の、緩やかな登り坂。玄宗は怪訝な表情をしている。てっきり皇居に赴くのかと思っていたのだ。紀明はそんな玄宗を横目に、涼しい顔のまま口を開いた。


「皇居に用事はない。宮様はとっくに死んでいる。」

「は?」

「書類上は。」

「書類上?」

「実際は逆なんだよ。」

「妖か?」

「妖ではない。」

「その言い方じゃ人間でもねえんだろ。」


 紀明は「なんだと思う」と言いながらニイ、と笑った。玄宗はしわくちゃのジジイを思い浮かべながら頭を掻く。伸び放題だった髪は、見兼ねた蘭子に切り揃えられていた。


「……お前答え知ってんだろ。教えろよ。」

「俺も初めて会う。章太郎の話じゃ、既に二百歳を超えているらしい。」

「二百歳?なんで。」

「うっかり肉を食べてしまったのだ。人魚のな!」


  よく通る声とともに、二人の肩へ勢い良く振り下ろされた手のひら。咄嗟に二人が振り返ると、すぐ側に青年が立っていた。


「よく来たな、皇の。」


 声音と対照的に、柔和な顔立ちをしている。細身に白いシャツと黒のスラックスを纏い、緑がかった髪を品良く後ろへ流している。自分達より干支一回り大きいくらいの、どこにでもいる青年の姿だ。しかしどこか浮世離れした雰囲気を持つその人に、玄宗は面食らっていた。気配もなく背後を取られたのは久しぶりだった。


 紀明はすぐさま畏まり、礼をひとつした。俊敏な動きに反して、紀明に焦りの色は無い。


「野坂紀明と申します。」

「そうかお前、昴の…。」


 竹ノ宮は淡々と述べた紀明の両頬を両手で包む。そして自身の柔和な顔と紀明の涼しい顔とを向かい合わせた。流石の紀明も面食らっていて、されるがままだった。


「うん。昴と稜紀いずきの、どちらの面影も感じる。…よくぞ生きて、我の所まで来たものだ。」


 降り注ぐ竹ノ宮の慈悲深い眼差し。どこか物悲しさを含んだそれは、彼のため息によって終わりを迎える。


「野坂昴。彼女は本当に、稀有なだったのになぁ。」


  そう嘆く竹ノ宮の視線が、玄宗へ移った。


「お前のことは章太郎から聞いているよ。今はゲンソウと名乗っているそうだな。お前もよく生きて、我に会いに来てくれたな。」


 ふわりと微笑む竹ノ宮からは、年齢に似合わない落ち着きを感じた。若々しい出立ちに反比例した老人くさい言い回しの所為だろうか、などと呑気に考える玄宗だった。はじめこそ突飛な行動に驚かされたものの、竹ノ宮に恐れを感じないのは、隣にいる紀明と霊気の気質がよく似ているからだ。玄宗にとって、彼らの人並み外れた強大且つ清らかな霊気は、恐るべきものではない。


「お前の加入に反対した者も多かったと聞く。我は、お前に会えて嬉しいよ。お前は必ず皇を変える。…いや既に諸々変わったか。我も章太郎が始めた入門試験とやらを受けてみようかな。ああでも年齢制限があったな。紀明のいうとおり、我は二百歳を超えてしまったからな。」


  満足そうに二人の肩を叩き、竹ノ宮は二人を追い越した。その先に、屋敷を囲む立派な門が見えた。


 竹ノ宮から少し離れたところで、玄宗は紀明へと小声で話しかける。


「人魚の肉を食ったってことは、あの姿のまま何百年も生きるのか。」

「不老長寿と不老不死、二つの説がある。気になるなら本人に聞いてみればいい。」

「できるかそんなこと。」


 竹林に響く、よく通る笑い声。竹ノ宮は「聞こえているぞ」と言いながら振り向いた。


「生まれくるもの、滅びゆくもの。その狭間にお前達が、否、我らがいるのだ。人魚の肉を食ったとて、その理から外れはせんよ。ただ少しだけ、猶予が出来ただけのこと。」


 ふっと笑う青年は、とても達観して見えた。人里離れた小さな屋敷で、彼は世捨て人のように暮らしているのだろう。玄宗はそんな解釈をして歩みを再開した竹ノ宮の後をついて行った。


「我は皇の親族にあたる。否、皇が我らの血筋の者達なのだ。かつては神官として我らを護り、国を護ってきた。…次第に神々への信仰が薄れ、妖の存在は都市伝説となり、我らは政から手を引いた。皇は表舞台から消えていき、今や立派な裏家業。今日のお前達がそうだ。」


 皇は、天皇の血を引いた組織である。故に、彼らは外部の人間を拒み続けたのだ。玄宗はようやっと巌の態度に合点がいった。


「章太郎がお前達を寄越した魂胆はわかっている。お前達はこれから、関守として困難な土地を任されると聞いた。だから後ろ盾として、この我を駆り出す気でいるのだ。お前達にはすでに加護があるというのに、過保護だな。……初の外様と昴の子。うん。乗ってやるには十分だ。」


 竹ノ宮の目の前には正門がある。彼はくるりと後ろを向いて、改めて二人を見た。

 翡翠の瞳が至極柔らかく笑い、すぐさまよく通る優しい声で言った。


「この二人に限り、我の守役を任せよう。そしてこの二人にのみ、我の手を貸してやる。…もてなさずに申し訳ないが、早急に戻って章太郎へ伝えてくれ。」




「で、どうしたんです。」


 会合終わりのその足で、二人は竹ノ宮の元へと赴いていた。

 屋敷には小間使いが居るものの、竹ノ宮は自ら出迎えることを好んだ。二人はすっかり初老手前だというのに、彼は未だ三十路くらいの風貌でいる。


「近々元号が変わる。」


 応接間へ続く廊下の途中、竹ノ宮は早速本題を切り出した。白熱電球の温かい色に溢れた廊下は南に大きな窓を備えていて、そこから見える景色はすでに濃紺に包まれていた。


「生前退位というやつだ。時期は未定だが、そう遠くないだろう。」


 ため息混じりの竹ノ宮はその背中に落胆の色を見せながら、廊下を左へ曲がった。


「しかしどこで漏れたかな、これに乗じて我が一族を滅してしまおうと、刺客を向けられているのだ。警察隊では歯が立たん。相手は暴漢ではないからな。」


 応接間へと辿り着き、くるりと後ろを見る竹ノ宮。二人はまだ応接間前の廊下にいて、存外せっかちな彼は、なんだ入らんのか?と首を傾げていた。その言葉に促されたわけではないが、玄宗は応接間へと足を踏み入れる。

 庵に見えた外観とは裏腹に、中の作りは洋館だ。玄宗は如何にも高級そうな絨毯を踏み、壁に掛かった古い絵画やら菊花紋の装飾品やらを一瞥してから、踵を返した紀明へ声をかける。すると彼は背を向けたまま「偵察に出る」と呟いて来た道を戻っていった。


「あれはいくつになっても懐かんな。難儀な奴だ。」

「あいつが誰かに懐いてるとこなんざ見たことないですよ。」

「昴の件の後、お前が入り、紀明は野坂から離れた。…少しは皇の流れが変わったと思っていたが、案外そうでもないようだな。」


 失望をのぞかせながら、竹ノ宮は窓際に置いてある椅子へと腰掛けた。玄宗は護衛の為、側へと歩み寄る。


「皇はゆっくり衰えた。…お前、ここ数年で霊仙を見たか。」

「…数年どころか、一度も。」


 玄宗は皇に入門してから一度も、頭の霊仙と顔を合わせたことがなかった。関守は自身の管轄地区を離れることはなく、殆ど本部に寄り付かないことも大きな理由ではあるが、それ以前に皇には「霊仙は幹部以外の誰とも会わない」という暗黙の了解がある。言われてみれば、おかしな話だ。


「霊仙の生死よりも、章太郎の奴が一体何を隠しているのか。我の興味は其処にある。暴こうにも奴は尻尾を出さん。」


 竹ノ宮はちらりと玄宗を見やる。玄宗は苦い顔で首を振る。残念ながら玄宗にも、章太郎の魂胆は分からない。


「あの御簾の奥は何も無い。我はそう踏んでいる。…まあ章太郎あいつのことだ。我の不利益になるような企みは持たんだろう。軽薄で飄々としているが、あれほど忠義に厚い者も居るまい。…あれはあれで、難儀な奴だ。」


 窓枠に肘を掛けながら竹ノ宮は言う。彼は常々、章太郎に対して憎まれ口を叩いているものの、信用している素振りを見せた。


玄宗おまえに継がせる気でいることだけは、分かっているんだがな。」


 思わせぶりに視線をくれる竹ノ宮へ、玄宗が反論するより先に、ガラスのひび割れる音がした。


「話は後です。」


 玄宗は咄嗟に竹ノ宮を窓から離した。ガラスには蜘蛛の巣状に亀裂が走り、屋敷全体が地響きに包まれた。


「玄宗上だ!」


 紀明が叫んですぐ、天井が落ちた。瓦礫と共に敵が押し寄せてくる。ついでに紀明も上から合流し、玄宗は竹ノ宮を担いで外へと向かった。


「いやあ派手にやられたなあ。」

「無事ですか。」


 竹ノ宮は玄宗に担がれながら、崩れていく屋敷を呑気に見届けていた。屋敷の脇には竹ノ宮がこだわって作った庭があり、玄宗はそこへ彼をおろした。紀明が竹ノ宮を挟んで玄宗の背後へ回る。


「偵察はどうなったんだよ。」

「見ての通りだ。」

「馬鹿野郎。」


  玄宗達を取り囲むのは、白装束の集団だ。頭に深く笠を被り、無言でじりじりと距離を詰めてくる。背丈はまばらで、その数ざっと四、五十体。彼等の手は長い袖で隠されていたが、袖で包むようにしてそれぞれ錆びた鎌やら、釘の刺さった木片やら、泥に塗れた鉈やらを携えていた。


「この間うちに来た奴らだな。数が増えている。」

「この間?」

「二日前かな。我が頼みたかったのはこれなのだ。」


 笠の上には白い札が貼られている。札の文字は掠れて読むことは出来ない。紀明は目を細めてはかっ開いてを繰り返し、白装束に覚えた既視感の正体を探っていた。


「……しめじだ。」


 呑気に手を打つ紀明。それに対してこれまた呑気に頷く竹ノ宮。二人が同じ血を引く者であることを、玄宗はこんなところで実感する。


「我もな、ずいぶん愛らしいと思って笠を外してみたのだ。そうしたら中身は大層気味の悪い傀儡でな。」

「何やってんですか。」


 呆れた玄宗が術を展開させる。竹ノ宮の周囲に護衛の結界を張り、白装束に向かって捕縛の縄を投げた。縄には無数の呪符が付いている。


 白装束は見た目に反して俊敏だった。縄をすべて避け、玄宗と紀明へ襲い掛かる。その手に握った錆び付いた武器を容赦なく振り下ろしてきた。玄宗は縄をピンと張り、鉈を絡めとって放り投げる。ついでに玄宗は、これらが妖ではなく式神の類であると推察する。


「お前達にはな、こいつらの主人を探して欲しいのだ。」


 地面へと叩きつけられた式神は、尚も体を起こそうとする。よく見渡せば数体ほど手には何も持たず、竹ノ宮を目指して歩みを進める者がいた。玄宗が投げようとした縄を制止するのは竹ノ宮で、彼は結界の中から、己に近づく気味の悪い式神へと手を振った。


「先日はただ穏やかに戯れたのだ。笠を外してすぐ、こいつらは力尽きたようで我の前から姿を消した。こんな風にな、我を心配して寄ってくるのだ。」

「そんな風には微塵も見えませんけどね。」


 玄宗はその手に錫杖を持つ。紀明は式神どもの頭上へ結界で足場を作り、大幣を握って笠を見下ろしていた。


「光を知らぬ不浄の者よ。在るべき場所へ還るが良い。」


 錫杖の金属音と、大幣の乾いた音が同時に響いた。玄宗が地面を揺らし、紀明が風を切っている。


 式神達は無音で狼狽えた。鎌を捨て、鉈を落とし、おろおろと竹ノ宮の周りへと集まっている。袖で隠れた手でぺたぺたと結界を叩き、その様はまるで助けを求めている様だった。


「次は主人と一緒においで。」


 竹ノ宮が微笑むと同時に、紀明は大幣を弓矢へと変えていた。それを真上に向かって射る。一本の矢が無数に裂けて、光へと変わって庭一帯に降り注いだ。


 光で洗われた地面は水面の様に揺らいでいた。玄宗が錫杖で突いたところから波紋が広がり、地面からも湧き上がる光が、式神達を青白く照らしていた。


 天地を清らかな光に包まれて、式神は成す術なく効力を失っていく。糸が切れた様にその場へ倒れていく式神の笠を、玄宗と紀明は容赦なく外していった。


「うわ本当に気味が悪ィな。」

「なんだこれ死体か?」


 笠の下に頭はない。

 首の断面は雑に縫合されていて、ちらついた肉は紫に変色している。これのどこが愛らしいのか、玄宗は竹ノ宮の発言を思い返して首を傾げた。


 紀明が白装束の襟元へ手をかけると、彼らは蒸気の様に消え失せてしまった。


 全貌を暴くことは叶わなかったが、紀明は笠に張り付いていた古い札を一枚引き剥がして懐へと入れていた。それは玄宗も同じだが、懐へ手を入れた瞬間、仕舞っていたはずの嘆願書がないことに気付く。


「我の頼みを完遂すれば、この嘆願書とやらを叶えてやろう。」


 結界の中、悪戯っぽく笑う竹ノ宮の手には、玄宗の懐から抜き取った嘆願書が収まっている。


「生け捕りですか。」

「なるべくなら。」


 返答を聞いた紀明が結界の上で煙草に火をつける。肺を一気に煙で満たし、それを下へ下へと吐いた。


 滝の様に落ちていく煙が、地面に触れたところから垂直に立ち上がって、人間のかたちへと変わっていった。もくもくした三体の人型は、白装束がいた場所へ立ち、辺りを見渡してから、三体それぞれの方向へと歩いて消えていった。

 玄宗は結界を解き、竹ノ宮へと向き直る。


「術をかけます。」

「我にか。なんの術をかけるのだ?」

「敵を欺く術です。…手を。」


 竹ノ宮が差し出した白い手を取り、玄宗はその甲に指で文字を書いていく。文字は青白い光を放ち、皮膚へと透けて、彼の体内へと馴染んでいった。


「次に危険が迫った時、あなたを安全な場所へ誘導するものです。」


 竹ノ宮の表情は嬉々としていた。彼はどうにも好奇心が強いようで、二人の成すことすべてに関心を寄せる。先ほどの紀明の術も、見せ物でも見ているみたいに拍手を交えて翡翠の瞳を輝かせていた。


 彼の年齢と心は比例しないらしい。玄宗には、竹ノ宮が人魚の肉を食べたであろう年齢から、心身ともに老いていないように見えた。時折見せる達観した眼差しが嘘のようである。それとも自分が歳をとり、この青年が幼く見えるだけなのか。


 文字を書き終えると、竹ノ宮の手の甲は何事も無かったかの様に光を失っていた。


「して、我はどこへ飛ばされるのだ?」


 わくわくと、瓦礫の山と化した自身の屋敷を眺めてから彼は玄宗を見る。坊主頭を掻きながら、玄宗は居心地悪そうに答えた。


「決まっているでしょう。俺と紀明のところです。」

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