この足を踏み出した時

琴乃葉

この足を踏み出した時

よく晴れた空。頬を撫でる心地よい風。私の最期には似合わないけど―そう思いながら、私は立ち入り禁止の屋上へ続く階段を上った。

屋上に出る扉を開けた。やっぱり空は青く、そして高かった。空を見れば、私がいかにちっぽけな存在か思い知らせてくれる。思い返せば私は頑張ってばかりだったかもしれない…もう少し肩の力を抜けばやっていけたかもしれない…けれど、もうこんなことで悩まなくて済むんだ。そう考えたら心から笑顔になれた。笑ったのはいつぶりだったっけ?まあいいや。


柵から身を乗り出してみた。屋上から見下ろすのもあって、かなり高い。ここから見える校庭では、いろんな人が思い思いに放課後を過ごしている。部活にいそしむ者、友と談笑する者―みんな、私に気が付いていない。


最期はやっぱり独りだ。私は上靴を脱いで、柵を乗り越えた。この足を踏み出した時、私は一体どのように落ちていくのだろう。どのように痛み、どのようにこの世を去るのだろうか―。


私は意を決して、片足を踏み出した。私の身体は重力に逆らうことなく、アスファルトで固められた地面に引き付けられていった。そして―

私は鈍い音を出して地面に叩きつけられた。広がる血、音を聞きつけて集まってくる学校の人たち。叫び声が遠く聞こえ、視界が暗くなっていき―


















私の人生は幕を閉じた。


これで良かったんだ。だって、最期は笑って終われたんだから。

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この足を踏み出した時 琴乃葉 @km603065

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