第四十五話 リュンvsアリーシャ
時間は瞬く間に流れ、リュンとアリーシャが戦う日が来た。
一日の授業が終わった放課後、魔法学校の裏手にある広い空き地には、リュンとアリーシャの戦いを見物しようとすでに野次馬たちが集まって円を作っている。
その円の中では、すでにリュンとアリーシャが向かい合っていた。
自分が負けるとは微塵も思っていないのか、アリーシャの顔には余裕の笑みが浮かんでいるが、対するリュンは大勢の視線にさらされたからか見ているこちらが辛くなるほど挙動不審にきょろきょろとしている。
一週間足らずでできることなんてほとんどなかったようなものだが、一応やれるだけのことはやった。あとはもう祈るしかない。
リュンとアリーシャの間に立った、審判役であるユーリカが杖でトンと地面を叩くと、瞬く間にギャラリーのざわめきが小さくなる。
何も聞こえなくなるのを待って、ユーリカは口を開いた。
「それでは、今からリュン・リフラ・リィンと、アリーシャ・シュトライトの決闘を始めます」
それからユーリカは決闘の内容を説明する。
内容は至ってシンプルで、自分の持てる魔法、体術、その他の技能を使い相手を戦闘不能にした方の勝利。殺傷能力のある魔法の使用だけは禁止だが、その他なら何をしてもいいというルールだ。
一応勇者のお供をかけての戦いなのでこういうなんでもありにしているらしい。
ルールの説明が終わると、場の空気がひりついたものに変わっていくのがわかった。
ギャラリーが固唾を飲んで、勝負が始まるのを今か今かと待ちわびる。
ユーリカが杖を持ち上げ、再び地面を鳴らすと、声を張り上げた。
「それでは、始め!」
こうして、リュンとアリーシャとの決闘は幕を開けた。
ーーー
先に動いたのはリュンだった。
「ファイアボール!!」
構えた杖の先端にある宝玉が輝き、火の玉が複数個放出されると、アリーシャに向かって一直線に進んでいく。
だが、そんな単調な攻撃をアリーシャも簡単には受けてくれない。
「ファイアボール」
アリーシャの杖から火球が飛び出る。
リュンのものよりも二回りほど大きいそれは、リュンの火球に吸い込まれるように当たると炎をあたりに撒き散らしながら破裂した。
魔法使い同士の戦いは、必然的に魔法の打ち合いになる。
そうなると当然魔法の力の強い方が有利であり、今の火球を見る限りアリーシャが圧倒的に優勢であるのは間違いなかった。
おそらくアリーシャはそれを見せつけるためにわざわざリュンと同じ魔法を使ったのだろう。さすが高飛車お嬢様、捻くれておられる。
「サンダースピア」
間髪入れず、アリーシャは雷の槍をリュンに向けて放つ。
距離が離れているため、なんとか脇に飛んで避けることに成功するが、それすらも勘定に入れていたのかすぐ後に放たれたもう一本の雷槍がリュンに迫る。
「っ……ファイアボール!」
雷槍に合わせて火球を放つが、出力が違いすぎてあっさりと突き破られる。
軌道だけはなんとか逸らすことに成功するが、肩をかすめたのか顔を歪ませた。
だが、リュンに休んでいる暇はない。
「っ!?」
リュンの周りを冷気が漂い始めたかと思うと、地面についていた手と膝が凍りつき始め、身動きが取れなくなる。
ある特定の場所を凍り付かせ、相手を動けなくするホルド・アイスという名前の魔法だ。
精度は術者の技能によるところが大きく、使い勝手は悪いとユーリカは言っていたが、あれだけ正確な場所に作れるとなると相当練習しているのだろう。
動けないリュンに、アリーシャが放った三本目の雷槍が迫る。
じたばたともがくリュンだが、凍りついた腕と足は地面にがっちり固定されているため逃げることもできない。
もはや避けることは不可能に思えた。
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