第二十八話 学校怖い
すでに授業中なのか、俺とリュン以外に人の姿は見えず、玄関口は静かなものだった。
ふいにリュンが足を止める。
「どうした。行かないのか」
「あの、やっぱり今日はやめておきませんか?」
「なんで」
「それは……」
言い淀むリュン。
どうやら道中で引っかかったことがリュンの中で再燃してきたらしい。
ぶっちゃけ触れたくはない。なんというか嫌な予感しかしないし。これまでさんざんな目にあってきたからこそこれ以上余計なことには首を突っ込みたくないというのが本音だ。
だが、かといってここでまごついていたところでどうにかなるわけでもない。ユーリカの意に背いたら俺はこいつと結婚させられてしまうのだ。いやほんとどうしてなの。泣きそう。俺、こんなに自分が泣き虫だなんて知らなかったよ。
「ほら、行くぞ」
背中を押して歩き出すと、リュンは渋々といった感じで歩き出した。
ーーー
学校に到着したらとりあえず職員室へ向かうように言われていたのでリュンと共に足を向ける。
出迎えてくれたのはいかにも厳しそうなつり目が特徴の女教師だった。同じく三角形で尖った眼鏡をくいっと上げて、どこか尊大な口調で言う。
「ユーリカ様からお話は聞いております。えぇと確か……マサヤンさんでしたっけ?」
「マサヨシな。何その渾名みたいなの」
「あぁ失礼しました。ただの人間の名前なんてこれまで興味すら持ったことがないものですから」
ひどい言われようだ。
どうやらこの教師はあまり普通の人間に対していい印象を持っていないらしい。明かに敵視されている。
よくよく周りを見てみれば、部屋の中に数名いるおそらく教師と思われる人たちも、俺を訝しげに……というか、どこか嘲笑したような笑みを浮かべて見ている。
なにこれ完全にアウェーなんですけど。
リュンじゃないけどもうおうち帰りたいよ僕。
「えー、あなたにはこれから三ヶ月間、他の生徒と同じように授業を受けてもらう予定です。何かわからないことは?」
「その授業とやらは俺みたいな一般人でもわかるもんなのか?」
「一応馬鹿にもわかるような説明をこころがえているつもりですが……それでもわからないということであれば、まぁ、そういうことなんでしょうね」
ニヤリと笑って俺を見る女教師。この人授業を受けるまでもなく俺のことサル以下だと思ってるよ。怖すぎるんだけど。
「では、教室へご案内します」
女教師の後ろを歩きつつ、リュンにこっそり声をかける。
「なんかここ俺に対して当たり強くないか」
「……魔女も魔法使いもプライドが高いものですから、その、マサヨシさんのような普通の人間は自分たちよりも下等だと思う気質があるんです」
「なんだそれ、人種差別じゃねぇか」
魔法で転移してくるような辺鄙なところにある村だから、そういう風習みたいなのがあるのは理解できなくもない。
ちなみにカブの村も他の村のことをいえないが、あそこはいつ何時でも家の扉を全開にしておくみたいな平和なものしかなかった。トロールも受け入れちゃうくらいだし。さすがど田舎だね!
「あの、マサヨシさん。その……」
リュンが何かを言おうと口を開いたが、
「いえ、やっぱりなんでもありません」
そういって黙り込んでしまったので結局何が言いたかったのかはわからなかった。
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