第六話 野菜勇者誕生

「グオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!ユウシャ、ニゲタ!ニゲル、ユルセナイ!ユルサナイ!」


 トロールが雄たけびを上げる。


 明らかに勇者達に憤慨していた。ていうかお前言葉話せんのかよ。


 でもその気持ちはよくわかる。そしておそらくこの村の人間も皆そう思っていることだろう。


 だが今のトロールの発言でひとつはっきりしたことがある。


 こいつが突然村にやってきたの、あいつ等のせいだわ。


 魔物は勇者を倒す使命を帯びているという話を以前聞いたことがある。こいつらが昨日突然やってきてドンちゃん騒ぎしたからそれを聞きつけてきたんだろう。


 なんなのあいつら。余計なことしかしてないじゃん。


「ど、どうするんじゃ村長!このままでは村が!」


 ただもう四の五の言っている時間はなかった。


「俺が戦って時間を稼ぐ。その間にみんなは逃げてくれ」


 俺がそう申し出ると、親父が反対してきた。


「駄目だマサヨシ。いくら体力自慢のお前でも、勇者様達ですら適わなかったトロール相手じゃどうすることも出来ん。無駄死にするだけだ」


 別に擁護する気なんてこれっぽっちもないが、決してアーレン達が弱いわけじゃない。

 このトロールが強すぎたのだ。

 さすがにゴブリン達を率いているだけ合って知能もそれなりに高い。避けるということを知っているからなおさら性質が悪い。


 当然死ぬ気なんてない。ただ、こうなったのには俺にも原因の一端はある……あるか?いや、ないか。ないわ。全部あいつらが悪い。勇者の名を騙ったあいつらが悪い。


「大丈夫だ。なんたって俺は勇者だからな」


「だ、大丈夫かマサヨシ。頭でも打ったのか?」


 嘘じゃないのに誰一人として信じてくれなかった。ふえぇ。


 まぁわからなくもないけどね。俺だって突然親父が「俺、勇者になったわ」って突然言ってきたらついにボケたかって思うもの。


「ともかく、誰かがこいつを止めないと村が壊滅するどころか死人が出る。村は再建できても、死んだ人は生き返らない」


「マサヨシ……。わかった。お前がそんなに村のことを思ってくれていたとは思わなかった。絶対に死ぬんじゃないぞ」


「ああ」


「これを渡しておく。素手よりはいいだろう」


 そう言って親父が渡してきたのは真っ白い……


「ダイコーンじゃねぇか。確かに硬いけど間違いなく折れるだろうが。ぽっきりいくだろうが。戦闘中に野菜持って戦う奴がどこにいるってんだよ」


「だが食べれば回復も出来るぞ」


「確かに!」


 みんなが逃げている間に、俺はダイコーン片手にトロールに向かい合う。


 端から見たら馬鹿にしか見えねぇなこれ。


「ユウシャ、ニゲナイ。オマエ、ユウシャ?」


「そうだ、俺が本物の勇者だ。どっからでもかかってこい」


「ユウシャ、タオス!タオス!死ねぇ!」


「え?今めっちゃ流暢に言わなかったってちょ、待、速っ!」


 大きく振りかぶったトロールの腕がその図体からは考えられない速度で俺に迫る。


 ていうかお前アーレン達相手にも本気出してなかったのかよふざけんなよ。


 とてもじゃないが避けられない。


 勇者マサヨシ、十九歳。ダイコーン片手にトロールに挑み戦死。字面に起こすとほんとただのアホみてぇだな。


 どうせ死ぬならせめて一太刀浴びせてから死にたい。持ってるの野菜だけど。ダイコーンだけど。


 そう覚悟を決めて大根を握ると、突如として持っていたダイコーンが輝き出す。


 なんなのこれ?最近の野菜って光るようになったの?


 トロールの大きな拳が迫る。数秒もしないうちに殴りつけられる。


 ええい、わけわからんけどもうどうにでもなれ!


 ザクリ。


 採れたてのダイコーンを包丁で切ったときのような音がしたかと思えば、トロールの拳がズシンと音を立てて地面に転がっていた。


 俺の手には一本のダイコーン。だが輝きを失ったそれは、どういうわけか細い剣のような形に変化していた。


 いやほんとどういうことなのこれ。

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勇者なのにパーティを追い出された俺の逆襲無双~野菜武器で世界最強~ @sazamiso

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