第11話

「おまたせ、場所がわかったから案内するよ。」

「えっ?良いんですか?

助かります。」

梨園の顔がパァーと明るくなった。


『表情が明るくなると澪に似てるな…』


「ボブ!ちょっといいか?」

「…佐野ですが。」

「一歩前に出てみ?」

ボブは一歩前に出ると店の外でリクと並ぶ形になった。


「で、梨園を事務所に送ってくるからコレ借りてていい?」

「一応、売り物なんですけど…」

「いくらだよ?」

「セットで二万です。」

「そっか、じゃ……

借りてていい?(笑)」

「今回だけ特別ですよ?

閉店までには返して下さいね?」


ボブ、そんな顔で見るなよ…

この後使い道の無いオモチャに二万は無いだろ。


「分かったよ。

あと、俺にフレ申請しとけよ。

ギルドに所属してないなら、うちのギルドに申請出せよ。」

「マジすか?フレ申請出していいんですか?

リクさんの居るギルドは恐れ多くて申請出せないですよ…

ギルドのメンツがヤバすぎですよ。

俺なんかが入れるギルドじゃ無いっす。」

「そんな事ねーよ。

会いたかったら、明日にでもギルマス連れてきてやるよ。

直接聞いてみな?」

「ヤノマンさんとリアルで知り合いなんですか?」

「あぁ、俺のツレだよ。

じゃ、閉店までには戻ってくるよ。」

梨園に行こうと言い、離れると電波が切れるからと手を出した。


「はい、お願いします。」

梨園は手をスルーして腕に抱きついた。


「リクさん!

何腕組んでんすか!」

「俺は手を繋ごうって言ったんだよ。

お前んトコの通訳機が壊れてんじゃねーの?(笑)」

「役得っすね、羨ましいっす。

写メ撮って、炎上させたい位っす。」

「や・め・ろ!」

リクと梨園は腕を組んだまま歩き出した。


「仲が良いんですね。

私は日本に知り合いが居ないので、ちょっと羨ましいです。」

「知り合ったのは梨園に出逢う半日前位だよ(笑)

会ったのも二回目だし。

ゲームの中でアイツは俺の事を知ってたみたいだけどね。」

「そうなんですか、二回目で仲良くなれるんですね。

私もリクさんと仲良くなれるかしら…」

「腕組んでる状態で何を言ってる?

周りから見れば、多分恋人同士だぞ?」

「そう見えますか?

……迷惑ですか?」

「迷惑じゃ無いよ。

ただ、周りの嫉妬の視線が痛いな(笑)」


駅を越えたところでマップを開いて詳しい位置を出した。

ここまで来ると店も少ないから人通りも疎らだな。

少し進むと、雑居ビルに『谷プロ』の看板が見えた。


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