第5話

…ほらな、朝方まで澪をイジってたからヤバイくらい寝みぃ。

いや、まじハンパねぇ。

仕事にならんなこりゃ。

こんな時はあいつに頼ろう、いやこんな時しか頼りたくねぇ。


俺はスマホであいつに電話した。


「うぃっす、リクどうした?

お前から電話なんて珍しくね?

明日、台風来るかもな。」

電話の向こうで笑い声がする。


「おぅ、ザッキー。

頼みがあるんだけどさ、今暇か?」

電話の相手は山崎という表向きは取引先さ。


「お前の頼みって、あれだろ?

緊急で呼び出せってやつ。

別に暇だからいいけど、昼過ぎまでだろ?

昼メシ奢れよ。」

こんな時しか頼らないから、あいつも分かってるな。

まー、メシくらい出してやるつもりだったからいいけどさ。


「そうだよ、その通りだ。

昼メシは奢ってやるよ、アキバのカレーでいいか?」

「アキバのカレーかぁ、悪くは無いんだけど食後にコーヒーは付くか?」

あいつの言う食後のコーヒーはメイド喫茶だな。

あんま、好きじゃないんだよなぁ。

確かに可愛い娘がウジャウジャいて目の保養になりそうだが、結局そんなメイドは見ないでスマホの澪を見てるからな。

高いコーヒー代を払って、蔑まれた目で見られるんだよな。

俺の得は何処にある?

しかし、背に腹は替えられない。


「分かったよ、食後のコーヒーをつけるから頼むよ。」

「よっしゃ、五分後にお前の所の課長に電話してやるよ。

緊急ミーティングだって言ってな。」

山崎は喜んで電話を切った。


取り敢えずトイレに逃げるか。

課長に電話を取らせなきゃいけないからな。

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