第6話

トイレから戻ると課長に呼ばれた。


予告通り五分後に電話がかかってきて、狙い通り課長が対応したみたいだな。


「高城君、いまsonodaの山崎様から電話があったぞ。

何やら、あちらの新作に関して高城君の意見が聞きたいと。

すぐに行って対応してくれないか?

うちが食い込める余地が有るかもしれないから、その辺も頼みたい。」

「分かりました、今なら手が空いてますからすぐに向かいます。」

俺は心の中でザッキーに親指を立てて『グッジョブ』と叫んでいた。


ザッキーとはアキバの電気街口で待ち合わせた。

手を振りながら、ザッキーが近付いてきた。


「さぼりん、元気?」

「変なあだ名つけんなよ。

ネカフェで少し寝かしてくれ、部屋代は俺が出すからリンちゃんのカスタマイズでもしてろよ。

そのあと、ハードディスクを買いながら昼メシな。」

俺はスケジュールを話してネカフェに向かった、後ろからザッキーがスキップしながら付いてくる。


こいつも俺と同じタイプの住人だ、NPCのリンにしか興味が無い。

だがこいつは、メイド喫茶やキャバクラみたいにリアルな女の子の一杯居る所に行きたがる。

こいつの考えてる事は分かりたくないが、多分間違ってない筈。


こいつは色んなタイプの女の子を見る事でリンのカスタマイズの方向性を決めてる。

女の子を観察する事で、仕草等をリンを人間に近付ける材料にしてるんだ。

俺も見習わなければ…と思っていたらネカフェに着いた。


「しばらく寝るから適当に起こしてくれ。」

「はいよ、ランチタイムが終わる前に起こすよ。」

ザッキーはネカフェのパソコンでTSSOにログインした。



「おい、カレー来たぞ。」

ザッキーが俺を揺すって起こした。


「カレー来た?

これから、食いに行くんだろ?」

俺は寝ぼけて聞き間違えたと思っていたんだが、カレーの匂いがする。


…目の前にカレーがあるし。


「カレーなんて、どこで食っても一緒だろ?

少しでもお前を寝かせてやろうって、俺の優しさが分からないか?」

「一分でも長くリンちゃんが見ていたいだけじゃないのか?」

パソコンにはリンの表情をプリセットする画面が開いていた。


「おまえさぁ、いくら何でも酷くねぇ?

本音と建前が見え透いてる時は、スルーするべきだろ?」

ザッキーはケラケラ笑った。


「俺さぁ、金沢のご当地カレーが食べたかったんだけど?」

「だから、カレーなんかどこも一緒だよ。

金沢出身の俺が言うんだから間違い無いって。」

「…いつから金沢出身になったんだよ。」

俺は目の前のカレーを食べ始めた。

ザッキーは右手にマウス、左手でカレーを食べてる。


カレーを食い終わると、ハードディスクを買いにパソコンショップに向かった。

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