第4話

『ピンポーン』

「高城さん、お届け物です。」

モニターによく見る宅配便のお兄さんが映っている。


ドアを開けると台車の上に木箱。

よく来るお兄さんは「なんすか、これ」と

木箱に興味津々だ。

今時、木箱で荷物が届く事ってそうそう無いからな。

「海外からだからな、精密機器だよ。」と

ハンコを押しながら会話する。


木箱を二つ玄関に置くと、伝票を受け取ったお兄さんは「重いっすよ、腰痛めないように」と笑いながら会釈をして帰って行った。


空の弁当を片付けて、木箱を玄関で開ける。

さて、木箱はどうするか?

とりあえず、放置しよう。

どうせ引っ越しの片付けも終わってないから、中に置き場所は無い。


ダンボールを開けて、中身だけを何も無い部屋に運ぶ。

5往復もしちまった、そこら中に発泡スチロールのカスが散らばってるし。

…あとで掃除しよう、そう…あとで。

自分に言い聞かせて説明書を読み始める。

説明書を読まないで組み始める奴も居るが、俺は急がば回れ派だ。

配線間違えてトンデモナイ事になったらやだしな。


一通り読んだら、説明書片手にセッティングを始める。

セットしてる間、待ってるの暇だろ?

その間に今のTSSOのゲームシステムを説明してやるよ。


TSSOは昔と変わらず二人一組のアクションゲームで、自分のアバターとNPCのパートナーの組み合わせがデフォルトだ。


カップルでやりたい奴用にバディモードって言うのもあるが、俺には無用だ(笑)


NPCはこちらからの希望はコマンドを打つ事で実行されるが、基本的にはAIで勝手に行動する。


大体の住人は自分が前衛でNPCが後衛で回復役にする、そうすればNPCが勝手に回復してくれる。

だから、プレーヤーは剣士とかナイトにNPCはヒーラーかソーサラーが多いな。


俺と同じ理由でダブル前衛とかやってる奴も居るがな。


ちな、俺のジョブはヒーラーで澪は剣士だ。

理由?簡単だろ、ずっと澪を見てられるからな。

たとえ同じ装備で美女が百人並んでも、俺は百発百中で澪を当てる事ができる自信がある。


ゲーム自体はカンストしてるから、イベントメインだな。

面白味から言えば他のゲームの方が良かったりするだろう。

だが俺にはゲームの面白味はあまり関係ないし、他のゲームをやらないから分からん。


俺にしてみれば、澪ありきだ。



さぁ、セッティングが終わったぞ。

VRを起動してみるか、まだゲームは出てないから取り敢えず動画共有サイトからVR動画を用意した。

ゴーグル越しに見える動画はビルの屋上から飛び降りて、窓を割って中に入り戦闘を行なう超有名な動画だ。


すげーっ、臨場感ハンパねぇ!

スペシャルエディション買って正解だったな。


俺は澪が目の前で動き回る所を想像した。

やばいぞ、楽しみすぎる。

早く発売日にならんかな。

NPCのパッチもゲームと同時に来るから、澪のアップデートも楽しみだ。


ただ、今回のパッチで澪のデータがGBからとうとうTBになるんだよな。

明日、帰りにアキバに寄ってハードディスクを買って来るかな。

楽しみすぎて、眠れる気がしねぇ(笑)

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