いただきます

小さい頃に何度か食べさせてもらったことがある。

白い白米に、ほうれん草のおひたし。

その隣に温かい肉じゃがが並ぶ。

「メロンとみかんとどっち?」

おばちゃんが聞く。

この質問も何度も聞いた。

デザートにはシャーベット。

俺はメロン。美空はみかん。

懐かしさに浸りながら、コップを並べる美空を見つめてみると、改めて幸せだと思う。

でも付き合って何したらいいんだろ。

特に特別なことはって感じなのかなぁ。

そんな事を考えていると、隣には美空がいて、その前にはおばちゃんが座っていた。

「さっ!食べよ!」

おばちゃんの声が聞こえて、三人で手を合わせる。

「いただきます!」

そう言ってから、箸を握った。

まずは、おひたしに箸をつける。

「美味しい!!」

「そう?良かったっ」

気持ちをそのまま声に出すと、おばちゃんが嬉しそうに言ってくれるから、

美空の家は安心する。

会えなかった間の事をおばちゃんに沢山聞かれながら、俺もそれを楽しみながら3人で食べ終わった。

手を合わせ、席を立つ。

「夏樹……もう帰っちゃうの……?」

「うん。ご飯まで頂いちゃったし、これ以上は迷惑でしょ?」

「………」

美空も親に止められると思ったのか、何も言わずに俯いただけだった。

帰ろう…そう思いながら、鞄を持つと、おばちゃんの声が頭に響いた。

「ばーか!迷惑なんかひとっつも掛からんよー?!」

「え…?」

「あんたんとこがいいなら、泊まってっていいくらいよー!」

「ほんと……?」

美空が嬉しそうにおばちゃんを見つめてる。

「当然よー!!」

「ほんとに…いいんすか……?」

「うぅん!ほんとぉよー!」

「ありがとうございます!!

親に電話してみます!!」

俺は携帯を手に取り、親に電話をかける。

「ねぇ!おばちゃんが泊まっていいって!!」

『ほんとそれぇー?』

「ほんとだよ!ほんと!」

『もう。。じゃあ明日の朝には帰りなさいよ!ちゃんとありがとう言ってねぇ!』

「はあい!!」


「おばちゃーん!いいってぇ!!」

「はーい!でも夜更かしし過ぎないようにね〜」

「はぁい!ありがとー!」

おばちゃんにそう言ってから階段をかけ登り、美空の部屋に飛び込む。

美空が腕を広げて待っているので、

勢い余ってそこにまで飛び込んでしまった。

美空の体温と鼓動を感じて、

急に幸せが込み上げてきた。

「今夜はゲーム三昧だね…夏樹…。」

ニヤニヤしながらそういう美空に乗り、

「そうだな…美空…。」

美空の顔を真似しながら、コントローラーを握った。

それから、俺らはおばちゃんに部屋を覗かれ怒られるまで、ゲームをし続けた。

結局俺らが布団に入ったのは12時をちょうど超えた頃だった。


日差しが部屋に差し込んできて、

美空の隣で朝を迎える。

まだ美空は眠っていて、

俺は二度寝はどうだろうなんて

一人で首を傾げていた。

帰りたくない気持ちが勝って、布団にもう一度潜ると、

「二度寝?悪い子だね、夏樹っ」

起きてたのかよ、、、、、、

帰りたくないから仕方ないだろとは、言えなかった。

「悪くねぇよ、、」

試しにそう言ってみると、

「そうかもしれないねっ。」

なんだよ。悪い子だねっとか言ってくれちゃった癖に。

2人で布団に潜ってからちょっとした時、階段を登る足音が聞こえてきた。

キィーという音を立て開かれたドア。

「まぁだ寝てんのかっ!」

っておばちゃんが笑いながら言うもんだから、眠気は布団から逃げ出した。

でも、寝たフリを続けた。

美空も本当は寝てないと思う。

二人で背中を合わせて。

話せなくてもいい。

出来るだけ長く、隣にいたかった。


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Auf zum Tanze!! 浅葱 @sakura2121

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