スペシャルコメント:博士

 まずは出版おめでとう。

 そしてお疲れ様。

 日々忙しい中でよく頑張ったと思う。


 君が報告書を提出するようになってから何年も経つけれど、時々見返しては笑ったりしみじみしたりしているよ。

 最初はタブレットを手に入れたテンションの高さから始めたものだから、途中で飽きて投げ出しちゃうかと思ってたんだけどね。

 まさかここまで続くとは思っていなかった。


 そして何より面白いよ。

 君は謙遜するけれど、間違いなくこの報告書の出来は良いものだし一日の終わりに読むのがとても楽しみになっている。


 口では言えない事も報告書でなら書ける事もあるみたいで、君の文章を見て初めて知った事も沢山ある。

 そんな君のことを知る度に、どうすればもっと君が楽に暮らせるだろうか、幸せに生きていけるだろうかと考えているよ。


 また、すみませんとか言いそうになったろ?

 ちっちっち、甘いね。それが私の仕事であり、やりたい事なのさ。


 正直、戦いとは縁の遠かった君を怪獣との一騎打ちという最前線に送り込むことには今でも疑問が残るところではある。

 それでも君は『誰かがやらなくちゃ』と言って基地を飛び出していく。

 君は本当に根っからのヒーロー気質だと私は思うよ。


 そんな君だからこそ隊員達も研究員の皆も君を好きで助けてあげたいんだと思う。

 君は時々、自分自身の事を取るに足らない一匹だと言うけれど君の優しさに救われた人々は大勢いるんだ。

 そう間違えちゃいけないけど『優しさ』にね。


 君の力の本質は強靭な肉体でも熱光線でもなく優しさにあるんだ。

 怪獣になっても人格が残っていたのは運なのかもしれないが、その後まで、ずっと皆を守り続けてこれたのは間違いなく君の『優しさ』という強さの賜物だ。


 私の我が儘を一つだけ許してくれるのならば、どうかその優しさをずっと持ち続けて欲しい。

 もしそれが辛くなったらいつでも私に言ってくれ。

 このちっぽけな体で出来る事はそう多くはないが君の為に頑張ろうと心から思う。


 この本が世に出る事によって多くの人達が君の考えや想いに触れるだろう。

 何かには猛烈な反発を喰らうこともあるかもしれない。

 けれど少なくとも私からしてみれば君が感じる事や悩むことは今の君が抱いて当然の事だろうと考えている。


 別に私だけが君の味方だと気取るわけでは決してないが、君の考え方を私はとても大切にしていきたいと思う。

 それは私がやりたいことの一つだからね。


どうにもこういったコメントを書くのは苦手できちんと文章がまとまっているか心配だが、最後にこの本を手に取ってくれた方々に伝えることがあるとするならば、どうか彼を愛して欲しいという事だ。


怪獣に対して様々な想いがあって当然だと思うが、それでも彼は人間の為に日々一生懸命頑張っている。

街で見かけた時、ニュースで見た時、どこかで話題を聞いた時でいいので少しだけでも彼の事を思って応援してくれれば、私としてはこれ以上ない幸せである。

それでは、改めて、出版おめでとう。


あ、最近チェスの腕前を上げてきてくれて嬉しいよ。

まあ、まだまだ勝ちは譲らないけどね。

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