スペシャル撮り下ろしインタビュー:コゲラ

 西島(以下西)「今日はよろしくお願いします」


 コゲラ(以下コ)「はい、よろしくお願いします」


 西「あのインタビューの前に手、大丈夫ですか!?」


 コ「これ(左手)ですよねぇ、自分もちょっとびっくりしました。まさか貫通されるとは思ってなかったので。流石に三日じゃ完治とはいかなかったですね」


 ※注:収録の三日前の出動で左手に穴が開く大けがを負った。

   療養中の為、収録の延期を申し出たが話相手が欲しいからと

   変更なしでの収録となった


 コ「とはいえ終わっちゃえば『あー、やっちゃったなー』ってくらいのもので。薬塗って普通に生活してれば治りますね」


 西「以前からコゲラさんは激しい怪我が多いイメージがあります」


 コ「たぶん出動回数が多いから、相対的に怪我も増えてるってだけな気もするんですけどね。そこそこ頑丈な体してるって自信もありますし。でも体が半分焦げた時はちょっと焦りましたよ『戻るの、これ?』って」


 西「その時の写真が残ってますけど、あれはキツそうでした」


 コ「私ただでさえ焦げっぽい色してるんで、医療班の人から『お前はこれ以上コゲてどうすんだよ』って言われちゃって。だから『じゃあその時はマルコゲラに改名します』って返したら大ウケしました」


 西「(爆笑)」


 コ「スタッフさんここ笑うとこですからね!良かった西島さんいて!スベったかと思った!」


 西「言っちゃなんですけどコゲラさんのギャグはいつも体張り過ぎなんですよ。皆が『え、これ笑っていいの?』ってなりますから。私はもう慣れましたけど」


 コ「若干、不謹慎だよね(笑)。でも個人的にはそんくらいで笑ってくれた方が安心するんですよ。あ、良かった良かった戦った甲斐があったみたいな。ちょっとズレてる感覚かもしれませんけど、頑張ったけど何にも言われないって方が寂しいので。ちょっと気にしてくれたら嬉しいなって、図々しいよね」


 西「でも感覚的には普通のことと思いますよ。…あれ?ちょっと待って下さい、じゃあ売店で売ってたコゲラクッキーのココア味って」


 コ「ははは、気づきましたね!そう、あれマルコゲラなんですよ。カカオ多めで焦げっぽい味にしてあるらしいです。凝ってますよね」


 西「ここの人達も感覚がおかしくなってる…(笑)」


 コ「まあ自分で言うのも何ですけど四六時中怪獣と過ごすわけですから普通の感覚じゃやっていけませんよ、どっかネジが飛んでないと」


 西「皆、タフですねぇ」


 コ「ま、そういう任務ばっかやってるんで、そうなっちゃうんでしょうね」



 テーマ1:最近どう?


 コ「ざっくりですなぁ(笑)!いや元気ですよ、いつも通り。あー、でも最近になってようやくマメハチといい勝負出来る位には格闘が上手くなったかなぁと」


 西「コゲラさんは昔から怪獣の中でも珍しい技術重視の方ですからね」


 コ「そーですね。それこそ以前は他の怪獣からすら『意味あるの?』みたいなことよく言われてきたんですけれども、これは私の性格もあるんですけれど日本という土地柄上、身に着けておくの必須だろうなって考えもあるんですよね」


 西「と言われますと?」


 コ「まず第一に土地が狭い。高層ビル同士の間隔も結構狭いじゃないですか。道路もそこまで広いわけじゃないですし、アメリカみたいにでっかい土地でバーンて暴れるようやり方だと確実に被害総額がとんでもないことになるんで。日本そんなお金ないのに(笑)。だから出来るだけ締め上げたり、組み伏せたりする技を覚えられれば仮に街中で戦う事になっても建物とかをそんなに壊さないで済むかなぁ、という期待を持ってるんですよね。まあ、実行できてるかは微妙なとこなんですけど」


 西「相手にもよりますからね。確実に人型の怪獣が来るかって言われるとそうでもないですから」


 コ「寧ろ『全然人型じゃないじゃん!』ってことの方が多いですからね。だから結局、熱光線頼りになっちゃう。良くないと思うんだけどなぁ…単純に危ないし」


 西「とはいえ、これまでの戦いを振り返ってみても強敵揃いと言いますか、一筋縄ではいかない怪獣達ばかりですからね。熱光線を使わないことには何とも」


 コ「まぁねぇ…そりゃ私の都合通りに現れてくれるわけないだろうって言っちゃったら、それまでなんですけど使わずに済むなら使わないでいたいですよ。きちんと訓練はしてますけどね」


 西「訓練と言えば試作装備破壊事件とかもありましたけど(仮組みの本を捲る)あ、こんな前の事だったんですね」


 コ「あれかー(笑)、熱光線耐えたのに素材が変質劣化して粉々になったやつ。あれニュースのインパクトが強いからでしょうけれども、皆からも最近の事だって思われて凄い言われるんですけど『いや何年前の話よ?』って言ったら結構驚かれます。ちょっと皆、時間止まり過ぎだよ!って言いたい」


 西「最近もそういうのやってます?」


 コ「まあ守秘義務なんでその辺は…ちょいちょいって感じです。まあ装備は常に更新していかないといけませんからね。現状装備では全然まだ怪獣に対抗できる強さにはなってないでしょうから。開発の人達も現場の人達も常に命がけです。そういった人達の負担を少しでも軽くするのが私の役割でもありますから開発協力含めてしっかり取り組んでますよ、とだけ言っておきます」


 西「ありがとうございます。」


 コ「あ、話変わるんですけど、ちょっとびっくりした話していいですか?」


 西「はい」


 コ「成人雑誌からグラビアの依頼が来ました」


 西「(笑)。マジですか!?」


 コ「マジ。しかも真っ当な、真っ当な成人雑誌ってなんだ(笑)?まあいいや、とにかく結構な部数は出てる、そのテのものとしてはオーソドックスな雑誌なんですよ。もう困惑するしかないんですよ。誰が得するんですか、それは?みたいな。編集部さん寝不足でおかしくなったか、別の雑誌の企画が混ざっちゃったんじゃないのって」


 西「仮に別の雑誌の企画だとしてもコゲラさんのグラビアって。つまりそれはあなたがセクシーなポーズをするってことですか!?」


 コ「ってことでしょうねえ!いやー、これやっちゃったらまたうちのオカンが泣くぞ~って。違う意味で泣いちゃいますね。いよいよ会いに来てくれなくなりますね。いや、本当にこれどうしよってなりましたね。まあ最終的に断りましたけど」


 西「あー、断っちゃったんだ」


 コ「何でちょっとそんな残念そうな顔するんですか(笑)。でもねぇ、ちょっと気になって調べてみたんですよ。そしたらなんとモンスターグラビアって名前で海外では割とメジャージャンルに分類されるやつだったんですよ」


 西「おおう!」


 コ「あのー。あ、子供さんも見るのかこれは、じゃあ駄目だ紹介出来ない(笑)。深く掘り下げられないなこれは。また別の機会に詳しく説明しましょう。けど藤戸さんとかに聞いてみても『あー、あるある。俺やったことあるよー。何?やる?』みたいな、すんごい軽い感じで、割と愛好されてる方いらっしゃるそうです」


 西「広いなー、世界」


 コ「中には絡みとかもありますからね」


 西「マジですか!?」


 コ「やべーぞ、これって思いましたね。いやー、話してもどうせカットされちゃうだろうからなー、残念だー。でもいつか若いうちにやってみてもいいかもしれないですね(笑)。写真集第二弾は、セクシー路線!」


 西「衝撃!コゲラが脱いだ!みたいな(笑)」


 コ「いつも殆ど脱いでるってのにね!生のコゲラを激写、生コゲラですよ(笑)!で、また便乗して変なお菓子出すんですよウチが。もう完全に流れが読める」


 西「カステラとか八つ橋とかの生菓子でやるんだ」


 コ「そうそうそう、賞味期限短いのに作っちゃって、在庫抱えるわけにはいかないから、またそこで限定生写真とかを付けるんですよ、サイン入りで(笑)」


 西「基地で怪獣グラビアの手渡し会を。ツーショット幾らとか」


 コ「そりゃもう料金取りますよ!当然じゃないですか(笑)!その代わりもう好きな方には堪らない、悩殺ショットを撮らせますから。そこはもうサービスしますから、あっはっは、ダメだなー馬鹿話が大好きなせいでこういう時だけ、物凄く話が捗っちゃうんですよねぇ」


 西「いや私はもう一気に親近感が湧きました。もの凄い真面目なイメージ持ってましたから」


 コ「まあ普段はこんなおちゃらけた態度で行ったら怒られますからね。でも中身はこんなもんで普通の男ですよ。もう暇な時は年中ぐだぐだこんな下らない事ばっかり考えてますから。いやー、しかしこういうネタはいつの時代も距離を縮めさせてくれるなぁ(笑)、エロは偉大だ。グラビア受ければ良かったかなぁ」


 西「じゃあ次の写真集で、ぜひ」


 コ「あははは、じゃあちょっと検討しておきます(笑)」



 テーマ2:他の怪獣との関係


 コ「これもまあ、いつも通りというか。仲いい奴とはずーっと仲いいんで。ああ、でも報告書を本にするにあたってボルスガにアドバイスを求めにはいきました」


 西「怪獣エッセイのパイオニア的存在ですね」


 コ「うん。私、英語苦手だからどうしようかってなったんですけど、そこは通訳の平田さんが小粋なジョークもバッチリ訳してくれました。調子に乗って日本でしか通じないネタをやったら、それは無理ですってバッサリ返されました。この場を借りて、平田さん無理言ってすみませんでした」


 西「そこでもやらかしたんですね(笑)、ボルスガとはどんな話を」


 コ「んー、まあ普通の事と言えば普通ですかね。人間と怪獣の間に意識のずれというかギャップがあるからそこは十分に理解してねとか、機密情報に触れるところがあるからチェックは何重にもしてもらってとか、後は見てる人にどういう気持ちになって貰いたいかを一番に考えてってのも言われましたね」


 西「そういったアドバイスは上手く取り入れられた感じですか?」


 コ「そうですね。意識してってよりは編集してる途中でボルスガと話したことを思い出して、その度に推敲したり相談したりってのを繰り返しましたね。やっぱり先駆者がいるっていうのは精神的に助けられますよ。実際、彼の本を見て学ぶところが多かったですからね。特に怪獣に成りたての頃は、どうしたらいいのか分からなかったですから。指針となるものが世に出てくれてるのはありがたかったです」


 西「世界的にも怪獣達の中では愛読書として人気みたいです」


 コ「でしょうね。国によって違いはあれど人格を持ってる怪獣が日々感じている事って多分そんなに大きな違いって無いと思うんですよ。だからああいった本が世界中で訳されて人間怪獣問わず読まれているってことは納得出来ます。まあ最初は読まず嫌いで数ヶ月ほったらかしてたんですけどね」


 西「そうだったんですね」


 コ「宣伝の煽り文句が良くないんですよ。何万部達成とか感動の作品みたいな書かれ方してて、そんなもん誰が読むか!みたいな(笑)。怪獣になって間もない時にそういうの紹介されても読む気になれなかったんですよ。しかも当時は私専用のタブレットがまだ無くて、テレビとかに繋がないと読めなかったんですよ。その作業も面倒くさくて余計に活字から遠ざかってましたね。本当にタブレット貰えてよかった」


 西「実際それが今回の出版にも繋がっているところもありますからね」


 コ「そうですねー。やっぱり思い立ったらすぐ書けたり読めたりする環境が整ってくれたってのは気持ち的にも非常に前向きになりましたし大きなターニングポイントでしたね」


 西「報告書内でも多数の怪獣達が出てきますが」


 コ「改めて原稿を見返して予想以上に載せることが出来てちょっと驚きましたよ。大多数は許可が降りなくてボツになると思ってましたから。特にウェンズデー関連は絶対に本人が反対すると覚悟して最初から除外する気でいたんですが意外にも本人がすんなりオーケーしたどころか音声データをそのまま書き起こしてくれとまで言ってくれて」


 西「普通ならちょっとセンシティブな部分というか、それ載せちゃうんだ!?みたいな言い回しもあって」


 コ「ね、赤裸々ですよね。でも本人はやるなら出来る限りきちんとした気持ちを伝えたいって意思があるみたいで。私が打ち直すとどうしても避けてしまう表現とか、感情の捉え方のズレができてしまうので、そういう意味では私と彼女の二人で揃ってこの決断が出来たのは意義深いことかなと思います。賛否両論くることは覚悟していますけれど、それも含めて今一度、怪獣について考えるきっかけになってくれればなと思います」


 西「堂々としてますね」


 コ「いやー、勢いというか意地張ってるだけかもしれないですよ。凄いサバサバしてんなーとか我が道を行くタイプかなって思ったら、急にどよーんて落ち込んで自己批判始めたりとかするし。何だろう、うーん、色んな感情が常に彼女の中でせめぎ合ってて、で、それが整理されないまま外に出ちゃってるのかな?ただ確実に私より色んな事柄に対して諦めてないし行動力があるんだと思うんですよね」


 西「諦めてない?」


 コ「あくまで私の解釈なんですけど、やっぱりどうしても怪獣になった以上、色々諦めなきゃいけないというか暗黙の了解的に『ここまではいいけど、この先まで言っちゃうと批判くるよね?』とか『これ欲しいけど、要求したら色んな人に迷惑かけちゃうよね』とか、あんまり人の苦労とかお金とかかけちゃ駄目だよねっていう考えが誰かに言われたわけじゃ無いんですけど、頭の中よぎるんですよ」


 西「遠慮しちゃうと」


 コ「まあそれは私があんまり自分から『こうしたいです』って言う方じゃないから余計にそう考えちゃうのかもしれないんですけれども、ウェンズデーって良くも悪くも遠慮がないんですよ。どうなるかは分からないけれども、取り敢えず言ってみてからどうするかを考えるみたいな、頭の中でウジウジ考えるよりはスパッと言って駄目だったら切り替える方が早いでしょって、そんな印象受けるんですよね。だから愚痴も遠慮がない」


 西「パワフルですね」


 コ「うん、そこだけだとね。ただやっぱり彼女の中にも彼女にしか分からない後悔とか悩みがあるみたいなんですけど、アイツは結構プライド高いタイプなんで、中々そういうのを打ち明けるのが難しいのかなと。よく喋るんだけど、本当に肝心な事は深く話し合って聞き出さないと、いつまでも自分の中にそういう不満を蓄積させちゃうタイプだなって、最近になってようやく分かってきたかな?って思います。まあ勝手な予想ですけどね。後でアイツが見た時『ちげーよ』て言われそうだ(笑)」


 西「よく見てらっしゃるんですね」


 コ「いやいや付き合いが長いだけ。しかもそれでもまだまだ分かんなくて苦労してる事ばかりだから。楽しいですけどね、フランクに話せる相手って中々いないんで」



 テーマ3:怪獣って摩訶不思議


 西「怪獣って深く掘り下げようとすればする程、分からないことが増えていくんですよ。コゲラさんが相手にした怪獣を調べるだけでも不思議なことがいっぱいで」


 コ「いやー、竜神様と湖の主様は未だに訳が分かりません。私って基本、怪獣信仰の類には否定的なスタンスなんですけれども、ああいうのを見ちゃうとちょっと、そういう主張が出てくるのも止む無しだよなぁって心が揺らぐんですよね」


 西「コミュニケーションが取れない、あるいは思考パターンが読めないっていうのも一因かと思います」


 コ「そうなんですよね。基本怪獣って人格の有る無しに関わらず、やりたい事があるから動いてるんですよね。まあそりゃ生きてるんだから当然なんですけれども、例えばフェイチウとかは栄養補給の為に飛来して、でも多分そこまで体が硬い構造じゃないのも自分で分かってるからすぐに逃げるんですよね。だからこそやり辛い相手で苦労してるんですけれども、つまりこちらとしては対策は難しいけれど、相手が何を考えて行動してるのかが何となく読めるから、効くかどうかはさておき準備しておくことは出来るんですよね。」


 西「データもかなり蓄積されてますからね」


 コ「ああ、そうですね。で、そういったことによって気休め程度かもしれないけれど安心感、じゃないな…心構えかな?そういうものは多少出てくると思うんですよ」


 西「実際、国家間のデータ共有で現在はかなり被害を抑えられてる印象です」


 コ「そうそうそう、ところが竜神様とかになると、そういうのが一切無いんですよね。まず既存の生物に行動基準が当てはまらない。怪獣って外見とか行動が多少、動物に似通ってくるものなんですけれども、まず見たことが無かったり、常識から大きく外れたりしてデータ戦略が通用しないんですよ。だから手を出していいのかすら分からないんですね。湖の主様に関してはそれが原因で一回攻撃喰らっちゃいましたからね。あれはちょっと悪手だったかなぁ…」


 西「でも陸には攻撃してこない」


 コ「そう。あれも結局分かんなかったんですよ、何でだったの?ってずーっと聞いても、もうそれがあいつのポリシーだったんじゃないのっていう結論しか出なくて。だとしたら私は湖の主様のこだわりのおかげで生き延びたのかみたいな、ぞっとしますよホントに。あれまともに喰らってたら死んでましたからね!?いやー、それだけにあんな馬鹿みたいな倒し方をすることになるとは」


 西「結局、怪獣も消えて、件のお婆ちゃんも良く分からず」


 コ「んーーー、何だったんだろうなぁ、あれ。まあ日本って古くから色んなものを神様扱いしてて多分その内のいくつかは怪獣だったのかなって思ったりもするんですけれど、あれはちょっと本当の意味で神とか死後の世界とかあるんじゃないかなって自分の中で揺らぎが起きましたね。気になってそれも調べたんですけれども、世界的に怪獣関連の話でちょっとそういう説明不可能な出来事ってあるらしいんですよ」


 西「私も調べてみましたけれど意外と解明されていないものがかなり」


 コ「ね。怪獣が世間に浸透してから未確認生物的な話題って、もう死語同然みたいな考えだったんですけれども、いやーまだまだ神秘ってあるんだなって、分かったように見えて上には上がいるのかなって思います」


 西「高次元の存在が」


 コ「――四次元生物かなぁ、それはもう対抗するのは無理だなぁー(笑)」



 テーマ4:人間から見て私ってどうなんだろう?


 西「これは確かコゲラさんが提案されたテーマでしたね」


 コ「うん、やっぱり第三者からの視点って中々得られないから、この機会にぜひ聞いておこうかと」


 西「私から見れば、若干言い方が軽いかもしれませんけれど。日本を守っている怪獣ですかねぇ。もうシンプルにそうだと思います」


 コ「なるほど、ありがとうございます」


 西「こういう感じの答えで大丈夫ですか?」


 コ「大丈夫大丈夫(笑)!別に試している訳でもないし、そもそもこの質問の答えって何種類もあるだろうから。寧ろ一番シンプルなのを出してくれたんでホッとしてます。たまーに意地悪な人は穿った意見をぶつけてきて困らせようとしてきますから」


 西「答えに困るやつですね」


 コ「そう。何か事情があるんだったらまだしも、『そういうことを聞くのが俺のキャラだ』みたいな感じに勝手に役割を背負って向かってこられると猶更、厄介なんですよね。こっちも気分良くはなれないからムッとなるんだけど、そうすると怒ったこっちを『洒落の分からないヤツ』とか『これだから怪獣とは話せない』みたいなレッテルを貼り付けてくるから」


 西「センセーショナルさをウリにしている人に当たっちゃうと、そういうことに巻き込まれることありますね。私も何度か経験があります。なので今はもうそういう人達からの依頼は完全にシャットアウトしてます。その方が気が楽ですから。一番大事なのは自分のメンタルが正常に働いている事です」


 コ「西島さんも苦労してるねぇ」


 西「まあ私は自分で拒否出来る立場でもあるからいいんですけれども、コゲラさんはそういうのは難しいですか?」


 コ「そうですねぇ、基本的には広報の人が良く吟味してくれて媒体とか記者さんの傾向とかも見てから判断してくれるんですけれども、たまーに『ええ、何この人』って思う人に当たる時はあります。そこは運が無かったってことで心を無にして適当に対応した後に筋トレでもして寝ます(笑)。ただ、会う人によっては自分の考え方を改めたり新しい知識を得られたりする時もあるんで、極力インタビューとかは受けてみたいんですよね。何だかんだ引き籠りなんで、外の世界の動きに付いていく為にも」


 西「それもまたタフな考え方ですね」


 コ「まあ、それ関連で言うと、ずっと前に印象的な出来事がありまして。私、よく社会学習で見学に来る小学生達の質問とかに答えてるんですよ、テレビ通話越しですけれどね。で、そういったことがある時に必ず子供達の中に怪獣被害に遭った子がいないかっていうのを徹底して調べて貰ってるんです」


 西「それは大事ですね」


 コ「うん。本人じゃなくても親戚とか祖父母は大丈夫だったのかとか、そこらへんまで確認して大丈夫だったら来て貰うって形を取ってるんですね。で、ある時、いつもみたいに子供達の質問に答えていたんですけれども、ある男の子を指名した時に、ずーっと俯いてるんですよ。最初は恥ずかしがってるのかなと思ったら違いました、泣いてたんです。驚いて、どうしたのって聞いたら物凄く怒った顔で『何で怪獣は家を壊すんだ!』って叫んで。その後も家を返せ家を返せ!って喚いて結局、ウチのスタッフや引率の先生に別室に連れていかれて。皆ポカンとしちゃったんです」


 西「調査漏れだったんですか?」


 コ「私も最初はそう思いました。それに私が戦闘中に誤って壊しちゃった家の子なのかもしれない。どうしようって悩みました。何を言っても彼には届かない気がして。けれど何度調べても彼の家が怪獣に襲われたという記録が出てこなかったんです。それどころか彼の親戚も、どれだけ辿ってもまったくそういった被害にはあっていなくて、まあ怪獣捕獲の為の渋滞に巻き込まれたことはあるらしいんですが、何か具体的な被害に遭遇したという記録が全くなかったんです」


 西「それでは一体?」


 コ「彼の両親や先生が何度も理由を聞いて、ようやく分かったんですが彼とは別のクラスに怪獣に家を壊された子がいたんです。その子ととても仲が良かったのに、怪獣被害が原因で遠くに引っ越しちゃったんです」


 西「そういうことでしたか」


 コ「そういうことだったんです。先生や両親にはどうか彼を怒らないであげて欲しいとお願いしました。私が関わっていない事ではあるんですが、彼は怪獣に仲良しな子との繋がりを奪われた上に、その悲しみをどこにもぶつけることが出来ないというストレスをずっと抱えてきたことになるんですから。そりゃあ私を見ていい気分をしませんよ。当たりたくもなるってもんです」


 西「子供には子供なりに抱えているものがあるんですね」


 コ「そうなんです。子供は純粋であるが故に心に傷を負うと、それがいつまでも痛みを発し続けて苦しみます。大人は忘れたり、あるいは忘れたふりをすることが出来ますが、子供にとってはどうすればいいか分からない、だから泣いたり怒ったりするしかないんです。難しいかもしれませんが、どうか『そんな程度』なんて思わずにしっかり話を聞いてあげて、その上で前に進む方法を探してくれればと思います…何か綺麗事言ってるみたいでイヤだなぁ」


 西「そんなことはないですよ、大事な事じゃないですか」


 コ「いやー、だって言ってる当の本人がこうやって引き籠りですからね。具体的な事も言えないのに無茶を要求しているようで、何だか申し訳ない」


 西「うーん、私はコゲラさんにはそれを言える資格は十分にあると思うんですけれどね。これまで沢山傷ついて、今も怪我をされて、それでも日本だけじゃなく海外まで遠征しにいって、多分私も知らないくらい想像を絶する苦しみもあったと思うんですよ。それでもずーっとそうやって優しい性格のままでいらっしゃるわけじゃないですか。そんな方から出た言葉ですから綺麗事かもしれないですけれど、そこには芯が通っていると私は思います」


 コ「そんなそんな、筋トレと読書と映画にしか興味の無いただの一匹の怪獣ですってば、でもありがとうございます。そう言ってくれると救われます」



 テーマ5:怪獣の生活って大変


 西「そういえば余り聞いてこなかったんですけれど、普段の生活ってどうされているんですか?」


 コ「言える範囲で言うと訓練して、出動命令が出れば現場に出て、イベントの依頼が来たらそっちに行って、オフの日は映画か本を見るかゲームしてるかですね。」


 西「そこだけ聞くとシンプルなライフスタイルに思えちゃいますね」


 コ「出来ることならあんまり余計な事を考えずに日々を送りたい派なので、何もなければ単純なのが一番です。特に不便さを感じる事も無いですし、楽しくやってます…いや待てよ。あったあった、不便な事があった、体のコリを取るのが大変!」


 西「肩こりとか腰痛ですか?」


 コ「そうそう、なるんですよ怪獣も。もう首とか肩が痛くて痛くて。おまけに最近は腰も固まってきてるんで、よーく解すようにしてます。私、体大きいんで気軽に風呂とか入れないし整体師さんもいないんで、これ割と深刻な問題なんですよ」


 西「塗り薬も駄目ですか」


 コ「駄目でしたねー、鱗で弾かれちゃいますし、これも大量に必要になっちゃうんで。どうにも対策が取れないんですよ。実はボルスガの本にもそういったことが書いてあって、大変だなぁなんて他人事のように考えてたら自分に降りかかって来たんですよね」


 西「どなたか怪獣に整体師になっていただくしか」


 コ「そうねです。最低二匹は欲しい!そうなるともう最強ですよ。世界のパワーバランス握ったも同然ですよ。何せこの話、私に限った事ではないみたいですから」


 西「最強の怪獣は整体師(笑)!」


 コ「今学んでおけば怪獣界隈でトップに立てますよ。企業の方々もマッサージ器具の開発で世界取れる可能性有りますので開発する事をお勧めします!」


 西「多数の企業の挑戦をお待ちしております」


 コ「それで言うと、お風呂にも入りたいんですよねぇ。ずーっとシャワー生活なので。いや設備があるだけ有難いんですけどね。さっきの話とも繋がるんですけど体の疲れを取るならやっぱり風呂だろうと!」


 西「日本人感が大きく出てますね」


 コ「いやー、やっぱりあの感覚は忘れがたいですからねぇ…でも世の中探してみると怪獣用のでっかい温泉を作るなんて計画があるらしいんですよ」


 西「本当ですか!?」


 コ「どこかの石油王さんだったかなー、怪獣と生活しててお風呂に入ってみたいって言い出したんで広大な土地を改造して作るらしいです。で、希望すれば世界各国の怪獣も入れるように手配すると」


西「おお、凄い事になってる!」


コ「日本は温泉国家なんで、この国の怪獣は狙い目だと思われてるんでしょうね。でも実際入れるんだったら行きたいんですけど場所がなー遠いんですよねー。出動命令が出たら戻らないといけないだろうし、もうちょっとウェンズデーとかがしっかり活躍してくれればなー」


西「ウェンズデーさんは寧ろ率先して遊びに行きそうなイメージが」


コ「ねー、絶対俺の事なんか無視してさっさと出かけちゃいますよ。ちくしょう今度行った時に文句言ってやろうか(笑)」


西「本人のいないところで恨みを買ってる」


コ「まあ冗談ですけど、でもそんくらいですかねー、日々の生活で思う事って。さっきも言いましたけれど怪獣としては本当に満足のいく生活を送らせて貰っていますよ。研究所の皆さん、本当にありがとう。ただごく稀に夜中に実験に付き合わせるのはいい加減止めていただきたい!テンション上がってるのは分かるけど、それは次の日でもいいだろう(笑)!」



 テーマ6:これまでの事、これからの事


 西「さてそれではそろそろ纏めに入りたいと思いますが、ずばりコゲラさんのこれまでとこれから、というテーマで」


 コ「変わんないですよ、そんな急には(笑)。いつも通り過ごすだけです、ただこの本を出版した後は確実に何らかのリアクションが返ってくると思いますから、そこには注目していきたいですね。出来ればネットだけではなく、直接買った人からの話が聞けたりするといいんですが、そこはもうしょうがないので諦めます。」


 西「日本では初の怪獣エッセイですからね。注目度も高いと思います」


 コ「そーですかねー、ボルスガのパクりとか思われてませんー(笑)?内容も今まで書いてきたものの寄せ集めですし、自分で出しておいてなんですけど面白いかどうかわかりませんよ、これ」


 西「一応、このインタビューは巻末に載る予定なんですから最後の最後にそんなことを言ってしまっては(笑)」


 コ「あっはっはっは、余韻台無しですね!でもまあ、その時その時で真剣に書いていたのは紛れもない事実なんで読んだ方に何かしらの想い出を残せればいいですね。後は怪獣の事についてもっと色々知って貰えれば、とも思います。」


 西「本日はありがとうございました!」


 コ「こちらこそ、ありがとうございました!」

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