報告書.15
7月14日
数日前に保護した怪獣の様子を聞く。
兎型怪獣の名前は現在仮で『バの2』と名付けられているそうだ。
どことなく英語のバニーと掛けた名前に思えるがツッコムのは野暮だろう。
映像を見せて貰ったが、もう毛が生え始めていた。
全体は白色だが所々に紫色の幾何学的な斑点模様がある点はやはり怪獣らしい特異な部分と言える。
基本的には四足歩行で移動しているが目が開ききっていない為、時々壁に頭をぶつけそうになったらしく、現在はウレタン素材で壁を覆って安全対策しているらしい。
見た目は本当に色がちょっと変わったデカい兎で危険性は少ないように思えるが、問題は成長後なので私も油断しないように注目しておかねばならない。
バの2の検査を終えた博士が私の様子を見に来た(という名の休憩)ので、軽く話を聞いてみた。
詳細な検査結果が出ていない為確実な事は言えないが基本的には既存の兎と体質、習性、食生活、共に変わらないようで食べ物も野菜を中心としているそうだ。
ただし目に見えて気になる点もあったらしい。
まず下半身や背骨の構造を調べてみた所、成長すれば高確率で二足歩行に移行するということと脚部の筋肉が異様なまでに発達しているらしい。
兎のジャンプ力の高さは私も聞いたことがあり、助走無しでも相当な高さを跳ぶことが可能で足の速さも自動車並みだという。
それが怪獣としてさらに強化されているとなれば、ちょっと洒落になっていない。
下手すればキック一発で壁を粉々にされてしまう上に、ジャンプで天井をぶち破る可能性も出てきた。
二足歩行に移行するのならば多少腕の筋肉は退化していくのではと考えたが、自由になった分フレキシブルに動かせるようになるので取っ組み合いが出来るようになるという点に気を付けなければならない。
それこそ私のように、だ。
さらにもう一つ、まだ発達はしていないものの爪と指の間に腺のような器官が出来つつあるらしい。
十中八九、毒かそれに準ずる分泌物を生成する為の物だろう。
いよいよもって私の中でバの2の危険度が増してきた。
念の為に咥内攻撃器官について聞いてみたが、それについては確認されなかったらしく、歯と歯茎の間を調査しても腺に当たる器官は見つからなかったそうだ。
しかし油断は禁物であり、何時そういった器官が発達するか分からない以上、監視と制御は必須だろう。
何よりそこまでの攻撃的な器官を持ちながら、人格がないどころか動物の赤ちゃんレベルの知能しかないのは由々しき問題だ。
今後の育て方で何か変わってくれればいいが、そもそもどこまで大きくなるのかすら分からない以上、研究員を増員するかもしくは洋上収容船への移送も視野に入れておくべきかもしれない。
博士に進言してみた所、私と同じような答えが返ってきたので万が一、有事の際は私が手伝う事も今の内に明言しておいた。
映像の中ではバの2が、もそもそとキャベツを齧っている。
出来ればこのまま大人しくあって欲しいと切に願う。
追記:
もし毒がフグのように食べたものから蓄積されるタイプのものならば、現状の生活環境では脅威となることはないのだろうか。
コメンタリ:
は「少しピリピリし始めた頃だね」
コ「話を聞いててちょっと怖かったですよ。研究員さん達に実害が出ないかどうか心配でした」
は「最善の注意を払って研究しているけど、そういうのを軽く飛び越えてくるのが怪獣の凄い所であり怖い所だからね」
コ「皆様も怪獣に遭遇した際は絶対に近寄らないで下さい。場合によっては私も含めて、ですよ?」
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