第27話 祭の不良時代の過去

智子が部活を辞めた。

と言うのも、吹奏楽部だったのだが音が大きすぎて耐えられなかったそうだ。

するとその智子はとんでもない事を言い出した。

部活を創る、と。


その為には六人の部員。

そして部活の担当の先生が必要だった。

今はゴールデンウィーク中なので.....部活を創設は出来ない。

だから休み明けの勝負となるが.....。

佐藤神子.....か。


菜美が部員に役立ててほしいと部員に選んだ菜美の知り合いだ。

俺は.....また女の子なのか?

と少しだけ胃痛がする。

女の子ばかりだとキツイな、と思いながら。


しかし担当の先生をどうする気なのだろうか、智子は。

思いながら俺は.....近所の公園にまた来ていた。

今日は裕子さん父さんは仕事だ。

その為に俺は暇だった。


横には羽鳥先輩が居る。

その羽鳥先輩は、アハハ楽しそうだね、と言う。

俺は苦笑しながらも頷く。


「でも本当に楽しそうだね。智子ちゃんを宜しくね」


「.....すいませんでした。先輩。せっかく入ったのに」


「大丈夫だよ。うん。だって.....無理は禁物だから」


「.....羽鳥先輩が入ったら楽しいと思いますけどね.....入れませんしね」


そうだね、私は部長だから。

とニコニコしながら返答する、羽鳥先輩。

俺は.....それを見ながら前の遊具で遊んでいる子供を見る。

持っていた缶コーヒーを一口、飲んだ。


「.....にしても漫研か.....楽しいだろうね」


「.....そうっすね。俺、部活嫌いなんですけど」


「.....部活は入った方が良いよ。人生は一度きりしか無いんだから」


「.....ですね。青春謳歌ですね」


そうそう、それだね。

と羽鳥先輩は笑顔で頷く。

すると.....横から声がした。

見ると、祭が立っている。


「おお。祭じゃねーか」


「なんか見知った顔が座っていると思ってな。何やってんだお前ら」


「俺達は話していたんだ。暇だからな。あ、そうだ。祭」


俺は用件を思い出しベンチから立ち上がって話す。

漫研の事を、だ。

そんな祭は目をパチクリしながら.....なるほど、と頷く。

そして俺を見据えた。


「.....良いぜ。入ろうか」


「.....ああ、マジか。有難う」


「良いって事よ。ダチの部活だしな」


「じゃあこれで.....後は佐藤神子が部活に入れば.....」


そこまで話を切り出していると。

佐藤.....神子?

と祭が眉を顰めた。

そして.....俺を見つめてきて。

予想外の言葉が出た。


「.....すまん。話は無かった事にしてくれ。俺は.....漫研に入らない」


「え!?どうしたんだ!?祭」


「.....佐藤.....神子と一緒は駄目だ。俺は.....多分.....」


と俯く。

俺は、一体どうしたのだ、と言う感じで見るが。

その答えが直ぐに出た。

背後の.....羽鳥先輩から、だ。


「.....それだったらちょっと祭は入らないかもね。漫研には」


「.....何があったんすか?一体.....」


「.....佐藤神子は.....祭の.....恋人だった人だ」


「.....え.....え!?」


素っ頓狂な声が出た。

目の前で遊んでいた子供達が俺達を見ながら驚く。

どういうこった!?

それは一体.....え!?


「祭は.....佐藤神子を心配しているんだよ。遠くから見るだけで近付きたく無いんだ。だから......無理だって言っているんだよね」


「俺は.....闘争の際に神子を.....相手側に切り捨てたんだ」


歯を食いしばりながら言う、祭。

俺は.....そんな祭を見ながら.....唖然としていた。

捨てた.....という事に、だ。

俺は静かに聞く。


「.....そんな過去が有ったのか?」


「.....不良には色々有るんだ。ごめんな。俺は.....入れないわ」


「.....分かった。じゃあ無理はしない」


そういう事なら仕方が無いと思う。

俺は.....思いながら笑みを浮かべて祭を見た。

そして羽鳥先輩を見ると.....羽鳥先輩は唖然としている。

え?と思って目の前を見ると。


「.....祭」


「.....?.....!?.....か、神子!?」


かなり冷ややかな目をした.....ボブショートヘアの女の子が立っていた。

泣き黒子、そして.....俺の学校の制服。

更に言えば.....鞄を持っている。

って言うか今.....学校休みなんだが。

と思ってしまうよりも先にこの子が神子さん?と思った。


「.....貴方.....のうのうとまだしているのかしら」


「.....いや.....そんな事はしてねぇんだが」


「.....切り捨てたくせに.....こんな場所で楽しく会話?ふうん。まあ良いけど.....」


それは.....と祭は悲しそうな顔をする。

俺と羽鳥先輩は顔を見合わせる。

そうしていると神子さんが寄って来た。

それから俺を見る。


「.....初めまして。菜美から話を伺っています。佐藤神子です」


「.....あ、ああ.....」


「神子ちゃん」


羽鳥先輩がその様に語りかける。

その言葉に少しだけ不愉快そうに返事をした、神子さん。

なんでしょうか、と、だ。

そんな中でも羽鳥先輩は笑顔で対応した。


「.....あの時は仕方が無かったとも言えるよ。必死に祭は頑張ったんだから.....もう恨むのは止めてあげて。祭は不良も捨てたんだから」


「.....私が.....あの不良達にどんな目に遭わされたか.....知っているんですか」


「.....知らない。だけど.....」


そうですか。

じゃあ話は終わりです。

行きましょう、と俺の手を握る神子さん。

それからさっさとその場を後にしようとする。

そんな神子さんに尋ねた。


「何が有ったのかな。祭と.....」


「そう言えばあの人とどういう関係ですか?南井さん」


「.....俺は.....祭の友人だけど」


「.....!!!」


手が振り払われた。

あんな人と友人ですか?

と少しだけ軽蔑した様な目を向ける神子さん。

俺は.....?を浮かべながら.....見つめる。


「.....馬鹿ですか?.....あんな人は捨てて下さい。南井さん」


「.....そんな馬鹿な事が出来るか。友人だぞ」


「.....そうですか。.....じゃあ私は帰ります」


「.....え!?」


だって.....あんな人と友人さんってどうせ.....と。

それから嫌ですから。

と.....俺を切り捨てた様にして帰る、神子さん。

俺は.....唖然として.....その帰る姿を見る事しか.....出来なかった。

何が起こっているのだろうか.....。


「.....和彦。アイツは駄目だ。根を持つから」


「.....」


祭は言いながら溜息を吐いた。

俺達は.....ただ立ち尽くす事しか出来ず。

そのまま取り敢えずと祭と別れてから家に帰った。

こんな事になるとは。

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