第25話 ミリア・ラシュードの母親
ミリアは言った。
この日本で日本と外国の架け橋になりたい、と。
俺は.....ミリアの夢を聞いてから本当にコイツは良い奴なんだと思ってしまった。
って言うか思わざるを得ない。
俺はミリアを心底、見誤っていたのだろうと思う。
「でもアンタのお陰で本当に良い物が手に入ったわ」
「.....そいつは良かったな」
そこそこに高い絵を描く為の文房具を買ってから。
外に出て歩いている。
するとミリアが立ち止まった。
俺を見てくる。
「.....お礼をしないといけないわね。アンタに」
「.....俺は案内しただけだぞ。何もしてないじゃ無いか」
「あら?そうかしら。でも私を助けたりしたわよね。それはお礼物だと思うけど」
「そうかよ」
ミリアは少しだけ口角を上げながら俺を見る。
でも色々ともう十分に貰った気がするんだがな。
思いながらもミリアはお礼をしたいとの事でそのまま坂の下に有ったカフェに俺達は入った。
飲み物をお礼すると言う。
ミリアのご好意に甘えながら俺はミリアを見た。
見渡しながら空いている席を探している。
「それはそうとカウンターでも良いかしら」
「.....そうだな。カウンターにするか」
そうして店員に案内されてカフェのカウンターに腰掛ける。
店員がニコニコしながら俺達にメニューを渡してくる。
それを受け取りながら.....俺は奥を見ると。
かなり可愛い女子生徒と友人だろうか、座っていた。
「ご注文は後ほどお伺いしますね」
「あ.....はい」
あんな可愛い女子生徒も居るんだな。
俺は納得しながら.....横をみるとミリアがジト目で俺を見ていた。
首を降りながら、全く、と言っている。
「コラ。和彦。女の子に見惚れたらデートの意味が無いわよ」
「あ、ああ。すまん」
「.....まあでもマジに可愛いのは認めるわ。絶世の美少女と言えるわね、あれ」
「.....そうだな」
でも何だろうな。
あの美少女の女学生.....さっきから俺を見ている気がするんだが。
俺は???をうかべながらも視線を正面に向ける。
すると.....横から声がした。
「あの、すいません」
「.....え?あ、え?.....はい?」
「もしかして南井さんですか?」
「.....え?」
その美少女の女学生はそう言った。
黒髪の長髪。
それから.....カチューシャで髪を留めながらも。
清楚な感じが見受けられる。
和服でも似合いそうな色白の肌の整った顔立ちの顔。
しかしながらこんな知り合いは俺に居ないんだが。
「.....貴方は?」
「あ、私は.....飯草七色と申します」
「.....え!?!」
七色.....と言えば。
祭の義妹、七色さんだ。
それしかないが.....え?マジで?
こんな美少女なのか!?
俺は目を丸くしてパチクリする。
「七色さん?祭の義妹の?」
「.....あ、やはりそうなんですね。義兄がお世話になっています」
「マジか.....」
するとミリアが俺の袖を引っ張った。
それから.....誰なの?と聞いてくる。
俺は.....そんなミリアに紹介した。
「.....ミリア。さっきの祭っていう男の子の義妹さんだ」
「あら、そうなの?.....宜しくね」
「はい。お世話になっています。宜しくです」
頭を下げる、行儀の良い七色さん。
しかしそれはそうとこんな場所で会えるとは思わなかったな。
思いながら居ると、七色さんは俺を見てから言った。
「.....その節は義兄がお世話になりました。義兄を救ってくれて有難う御座いました。本当にお世話になっています」
「.....ああ、救ったって言っても.....連れて帰って治療しただけだけどね」
「いえ。貴方に出会って本当に義兄は変わったんです。お陰で.....だから南井さんには感謝しか有りません。昔は荒れていて.....本当に私と義兄は関係が悪かったんです」
「.....」
義兄とは喧嘩ばかりでした。
でも.....それを南井さんが救ってくれたんです。
と七色さんは和かに話す。
俺は.....その言葉を受けながら少しだけ笑みを溢す。
七色さんは頭を下げる。
「.....南井さん。本当に感謝しています」
「.....俺こそ感謝だ。祭には良くしてもらっているからな。有難う」
「.....はい。その節はお世話になっています。あ、用事が有るので.....一旦、失礼致しますね」
「.....おう」
同級生に呼ばれた七色さんは戻って行った。
俺はそれを見送ってからミリアを見る。
全く.....アンタは誰でも救うわね。
と溜息混じりで.....首を振っていた。
それから.....俺を見てくる。
「.....アンタの優しさ。それを利用されない様にしなさいよ。いつか.....仇となるわよ」
「.....そうだな。優しさが.....仇になるってのも有るしな」
「ええ」
そして店員さんを呼んで飲み物を注文をしてから。
暫く色々と話しつつ、その日にミリアと別れ、俺は.....家に帰ると.....菜美に説教を食らい.....。
その日は過ぎて行った。
菜美の説教は一時間に及んだ。
☆
「何をやっていたのかな?お兄ちゃんは」
「.....別に良いじゃねーか」
「.....良く無いよ?だって女の匂いが色々するし」
「お前.....」
リビングにて。
コイツの鼻ってドーベルマンだな。
俺は額に手を添えつつ思う。
だっておま。
普通に考えたら有り得ないだろ。
すると菜美は頬を膨らませたまま俺に話す。
「もう。お兄ちゃんの馬鹿。次やったらマジに解体するからね」
「.....お前、さらっととんでも無い.....」
「い・い・?」
「あ、はい」
怖いんですけど。
と思いながらも.....今日は色々な出会いが有ったな。
考えつつ少しだけ.....良い日だったと思った。
説教がキツいんだが。
☆
(アンタの事、見直したわ。有難う。今日は)
(.....本当に俺に出来るのはこれぐらいだからな)
(でも助かったわ。有難う)
ミリアとメッセージをやり取りしながら。
俺は.....ミリアの文章を読んでいた。
本当に.....俺に出来るのはこれぐらいだからな。
せめてと思ったから。
(和彦。アンタは今も昔に囚われているのかしら)
(.....何故、そんな事を聞くんだ?)
(.....菜美は言っていたわ。アンタが.....母親を救えなかった事を悔やんでいるって)
(.....アイツも余計な事を話すな)
俺は.....その様に溜息混じりに思いながら.....スマホを握る。
しかし何が言いたいのだろうか。
思いながら.....ミリアの返事を待つ。
すると一分ぐらい経ってから返事が来た。
(アンタのお母さんは後悔して無いわよ。きっと。アンタが.....頑張ってくれているのを今、空から見ているのんじゃ無いかしら)
(.....お前)
(.....悔やむ必要は有ると思うわ。だけどね。いつまでも悲しんでいたら.....アンタのお母さんは悲しむわ。アンタの思い、痛みは分かるから)
(.....それってどういう意味だ?お前も.....)
私は状況が違うわ。
だけど.....母親を失ったのは同じね。
交通事故で亡くなったから。
それも私の真横でね。
と、ミリアは話してくれた。
俺は見開く。
(.....お前.....そんな事が?)
(.....ちょうどママは即死だったわ。トレーラーの間に挟まったの。そうね.....簡単に言えば死体の損壊が激しかったわ)
(.....聞いて良いか。お前は.....何でそれで強く居れるんだ?)
(.....私の背後にママが常に居ると考えているから)
思いっきり見開いた。
それから.....ミリアの文章を見る。
そしてミリアは更に文章を続けた。
(.....男手一つで.....パパは育ててくれた。昔は.....そうね。アンタみたいに弱かったわ。でも私は生きている。勿論ママが亡くなったのは事実。だから.....私は.....忘れちゃいけない。だけど今、悲しむのは間違っている。そんな気がするのよね。何故かって言われたら.....眠れないと思うから)
(.....強いな。お前は)
(.....何も強く無いわ。無く事も有るわよ。でも.....ママは常に隣で私を見守ってくれている。そう考えたら.....気が少しは楽になるわ。アンタも.....私みたいになれとは言わないわ。でも.....お母さんは幸せだったと思うわよ)
涙が止まらなくなった。
その言葉を受けて.....少し報われた気がしたのだ。
俺は.....本当に.....。
(ミリア。お前のお陰で少し報われた様な気がする。色々と感謝するよ)
(.....あら?こんな事で良いのかしら。私は何もして無いと思うけど)
(.....お前.....)
俺の言った事をパクるなよ。
でもそうだよな。
亡くなった人が.....寝れないよな。
思いながら.....俺は.....窓から空を見上げる。
そして.....思いを馳せてみた。
そう、昔の思い出に、だ。
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