第24話 私は架け橋になりたい
意外な素顔が見れている気がした。
アメリカ人で白髪の美少女で更には傲慢と思えた小説家ミリア・ラシュードについて、だ。
その素顔はそこら辺にいる成長期の女の子なんだな、と思った。
傲慢な素顔の無い、だ。
強気で確かに俺に接してはくる。
だけど.....してもらった事にきちんとお礼を言えるなら話が別だ。
確かにそう聞こえた。
『ありがとう』
と、だ。
俺は.....ミリアと一緒に行動するのが嫌だったけど。
今となってはそんな気はしない。
ただ.....ミリアを見守りたいと、そう感じた。
「何をニヤニヤしているの駄犬」
「.....いや。ノープロブレムってやつかな。そんな感じだ」
「は?キモい」
暴言ばっかだけどな。
俺は苦笑しながら目の前を歩く、ミリアを見る。
全く駄犬は駄犬ね、と言いながら、だ。
俺は再び苦笑いを浮かべる。
「それで私は何処ら辺に行ったら良いのかしら」
「.....それは自分で考えろよ。そこら辺に色々有るだろ。店は」
「ハァ?アンタバカァ?」
腰に手を当てて言う。
エ○ァの惣流・アスカ・ラングレーかお前は。
俺は思いながら盛大に溜息を吐いてそれから周りを見渡した。
何が有るかな、アイツ.....って言うか菜美の好きそうなの。
「.....そういや最近、楽器に触れているな。アイツ」
「.....じゃあ楽器買ったら良いのかしら」
「アホ。本人を連れて来なかったら楽器なんぞゴミになるぞ」
「.....うーん」
楽器は楽器で喜びそうな気がするけどな。
だけど.....うーん。
菜美に楽器を贈るっつってもな。
合わなけりゃ意味無い。
となると?
「.....そうだな。文房具にしたらどうだ」
「.....うーん.....」
「.....問題か?」
「.....簡単に言ってしまうとそれはありきたり過ぎるんじゃ無いかしら」
そう言われるとな.....。
俺は顎に手を添える。
そして.....歩いていると。
目の前に見知った顔が居た。
そいつは俺を見て目を丸くしている。
「何やってんだお前」
「そう言うお前はなんだ。祭」
「.....あ?俺?俺は.....まあ買い物だな」
飯草祭、俺の親友だ。
元不良ながらにとても良い奴だが.....。
しかし買い物.....ブランドの紙袋にプレゼントの様な包みを持ってか?
それはおかしいんじゃ無いか。
「.....にしてもお前、彼女連れているとかスゲェな。和彦」
「.....あー、この子か。この子は彼女じゃ無い」
「そうよ。誰よアンタ」
ミリアは自分より身長が10センチぐらい違う祭に話す。
祭は、まぁ.....和彦とはダチなんだが。
と顎に手を添える。
ミリアは、ふーん、と声を出す。
腕を組みながらも納得した様だった。
俺はそれを確認してから祭にもう一度、問う。
この場所に似合わない気がするんだが。
「それはそうとお前も何だ。ブランドの紙袋?プレゼント?怪しいな.....」
「.....んー。あー。まあ仕方が無いか。誰にも話すなよ。和彦。俺の義妹がもう直ぐ誕生日なんだ」
「.....あー.....マジか」
成る程な、七色さんだな。
俺は思いながら.....少しだけ目を丸くしているのを崩しながら。
祭に笑みを浮かべた。
それは.....母親が息子を見守る様な感覚だ。
俺は.....言葉を発した。
「.....お前、本当に変わったよな。優しくなった。トゲが無くなったつうか」
「.....お前のお陰も有るけどな。でも義妹は元から.....俺を支えてくれていたんだ。だから恩返しさ」
「.....おう」
祭は俺の肩に手を添えてくる。
それから、そろそろ行くけど、と祭は言葉を発した。
で、その言葉を発してから俺を見てミリアを見る。
そして笑みを浮かべる。
「ミリアだっけか。和彦を頼むぜ」
「.....?」
「.....そんな顔しなくても何もしないぜ。コイツは.....良い奴だから」
そして祭は手を振って去って行った。
俺はそれを見送りながら.....もう一度、ミリアを見る。
ミリアは真正面を見て祭の背中を見ていた。
それから俺を見てくる。
「.....アンタは.....色々な人を救っているのね」
「.....何だそりゃ?そんな事は無いぞ。偶然だよ」
「.....偶然でアンタに冷たくしていた私を救うの?それは違うと思うわ。それは貴方の才能よ。人に優しくするのはね」
「.....ミリア.....?」
俺は?を浮かべながら.....ミリアを見る。
そんなミリアは、正直、私は.....昔も貴方の様な人に救われたかったわ。
と.....小さく呟いた。
それから.....横の並木を見る。
そして風に靡く白髪を抑えた。
「.....行くわよ。.....和彦」
「.....お前.....駄犬.....っつーのは?」
「.....あら?何かしら?和彦でも合っているわよね?貴方の事」
「.....いや、合ってるけどな。.....違和感が有る」
失礼ね。
私をそんな感じに見ないでほしいわ。
まあ見られても仕方が無いのだろうけど。
とミリアは微笑んだ。
目を丸くする俺。
それはまるで.....スローモーションの様な感じに感じられたから。
☆
ミリアは結局、俺を駄犬と呼ばなくなった。
そして俺を和彦と呼ぶ様になり。
俺達は.....文房具屋を目指す。
この店の並びの先に.....輸入文房具屋が有るのだ。
ファー○ーカステルの様な高級文房具を取り扱っている様な、だ。
「.....和彦。その文房具屋で.....菜美はどんな文房具を好むかしら」
「.....簡単に言えば描きやすい物が良いと思う。俺が菜美ならきっとそうする」
「.....じゃあ少しだけ高い文房具を贈りましょう」
「それで良いと思う」
そんなに高く無く。
そして安くも無い物が喜ばれる筈だ。
誕生日のプレゼントでも無いしな。
考えながら.....俺達は文房具屋を目指す。
その途中でミリアがまた聞いてきた。
「.....和彦」
「.....何だ?」
「.....私は.....外国人だけど.....嫌いかしら。アンタは」
「.....嫌いな訳が無いな。それがどういう意味で行っているのか知らないけど。お前は良い奴だと思うしな」
そう。
と.....ミリアは声を止める。
俺は?を浮かべながら.....ミリアを見る。
目の前のミリアは立ち止まった。
「私が小説を書き始めたのは.....外国人だとしても.....周りに認めてもらいたかったからなのよね」
「.....それはつまり.....」
「.....ええ。私は.....日本人に外国人は面倒な存在じゃ無いって認めてもらいたいからなのよね。この日本では.....まだ外国人は控えめな目で見られているから。どんな手段でも.....認めてもらいたくて」
「.....」
そんな中で.....菜美という大切な存在に出会った。
それから私は.....自分が間違っている事をしているんだって気が付いたのよね。
とミリアは言いながら.....自販機にお金を入れた。
それから俺に冷たいお茶を渡してくる。
「.....菜美は言ったわ。私は.....認めてもらうのは良いけど.....闇雲にやっても目的は.....達成出来ないってね」
「そうだな。それは言える。何故かって言われたら.....日本人は繊細だから」
「.....そう。だから私は止めたの。闇雲もがむしゃらも、ね」
「.....お前がラノベ書き始めたのも.....多くの日本人が食いつきそうだったからか?」
そうね、というよりも私が.....漫画が好きだったのよ。
それにジャパニーズカルチャーは日本の文化でしょう?
だから.....日本人の数多くに認めてもらえそうだったから書き始めた。
それから......受賞したのよ。
ミリアは嬉しそうに話す。
本当に楽しそうだ。
俺は.....その姿を見ながら.....お茶を飲む。
ミリアはコーヒーを飲んだ。
それから缶に両手を添えつつ.....真正面を見る。
「.....いつか私は多くの日本人に外国人は控えめの存在じゃ無いって認めてもらって.....それから.....日本と外国の架け橋になりたいわね」
目を瞑ってからそう呟くミリア。
俺は.....笑みを浮かべた。
それから話す。
「良い夢だな。お前」
「.....でしょ。.....でもまさかこんな事をアンタに今、話すとはね。口が滑っちゃったわ」
「.....ははっ。.....でも有難うな。ミリア。話してくれて」
「.....私」
俺は?を浮かべる。
ジッと俺を見てくる、ミリア。
それから.....真剣な顔になる。
俺はますます?を浮かべる。
「.....私もアンタの事、知った様で知らなかったわ」
「.....そうかい」
「.....菜美の事を.....大切にしてあげて」
「.....お前は菜美の母親か。結婚するみたいに聞こえるぞ」
あら、そんな風に聞こえるかしら。
でも間違って無いわ。
私は.....菜美を大切に思っているから、と缶を捨てながら言う。
俺はヤレヤレと共にハァと息を吐きながら思い。
ゴミ箱にペットボトルを捨てた。
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