第20話 ポルノ雑誌

南井家に暫く羽鳥先輩が居る事になり。

親父も少しだけ戸惑っていたが暫くして納得してくれた。

羽鳥家には取り敢えず.....説明してない。


その代わりに晴子さんという侍女のおばあちゃんに説明した。

晴子さんは心配していたが、この様な感じになっていては、と。

快諾とはいかないが納得してくれた。


それらの事で.....祭とテレビ電話を結ぶ。

スマホのテレビ電話だ。

羽鳥先輩の事件の有った夜の話だが。

祭は眉を顰めながら話す。


『.....あの家は元からクズだからな。だから俺と記憶喪失の時に引き離したのさ。人が誠心誠意謝ろうとしたのを......ゴミの様に扱って。.....やっぱり本当に最低だな。心底、思ったわ』


「.....お前が最低って言うぐらいだから相当なもんだな」


『.....ああ。俺は近付きたく無い家族だ。.....だけどすまないな。仮にも親戚をお前の家に泊めて』


「.....気にする事はねぇよ。取り敢えず義妹も納得したしな」


祭は.....少しだけ複雑そうな顔をして、そうか、と言った。

それから羽鳥の様子は.....と祭は心配げに言う。

俺は柔和な顔で.....祭に向く。

そして.....祭に静かに話す。


「今.....羽鳥先輩は今、義妹の部屋で寝てる。相当に疲れたんだろうな。今日の事件で」


『.....何もかもで迷惑を掛けるなお前に。すまん。一応.....仮にも親戚だからな』


「.....大丈夫。羽鳥先輩は守るさ俺が」


『.....全くな。お前に出会えて良かったよ。全てが.....俺が。.....絶望から救われたからな。やっぱり何時もの和彦だな』


何を言ってんだ言い過ぎだ、と俺は苦笑する。

でもマジだぞ、と祭は言う。

そして.....俺に口角を上げて向く。

そう、お前が居なかったら俺はまだ不死鳥のリーダーだったからな。

と、呟きながら、だ。


『不死鳥は解散して正解だった。そして今が有るからな』


「.....お前が不良を完全に辞めるって言い出した時は.....衝撃だったもんな」


『.....ああ。てーか、路線がズレたが.....まぁその、羽鳥を任せて良いか?今度俺もお前んち行くよ』


「.....ああ。顔を見せてやれ。頼むわ」


おう、んじゃあな、また明日.....じゃねーか、今はゴールデンウィークだもんな、学校ねぇし。

とクスクス言いながら祭は言う。

その様子に今度遊びに行こうぜ、と俺は誘う。

祭は突然の事に見開いたが、静かに頷いた。


『ああ』


「じゃあまた明日でも」


『おう。じゃあな』


祭との通話を切った。

それから少しだけ笑みを浮かべて背後を見ると。

何故かヌッとした感じで菜美が立っていた。

ちょ、ウオォ!?


「何やってんだテメェ!?」


「何を言っているの。呼んでも応答無かったから入ったんでしょ」


「だからと言えど勝手に入って来るなよ!?ビックリするわ!」


うーん、って言うかこの部屋だってお兄ちゃんを監視する場所なんだから。

とハイライトを消していく、菜美。

その技は今は通用しない.....ぞ!

思いながら青ざめつつ。


「.....それは良いけど羽鳥先輩の様子はどうだ?」


「.....羽鳥先輩、かなり熟睡している。結構お疲れだと思うんだ」


「.....そうか.....」


「.....お兄ちゃん。思い耽るの.....あまりしないでね。疲れると思うから」


本当に心配だから、とベッドに腰掛ける、菜美。

そして髪をなびかせた。

俺は、そうだな、複雑な顔で横を見る。

すると何かに気がついた様に菜美がそれを発見.....あ。


「.....お兄ちゃん。これ何.....?」


「.....ポルノ雑誌だ」


「.....そうだね。で?何でこれを持っているのかな?」


言い訳がしづらい。

だんだん顔が深刻になっていく、菜美。

仕舞うのを忘れていた俺のお気に入りのポルノ雑誌であった。

俺は青ざめながら.....いや、その、と冷や汗をかく。


「.....お兄ちゃん。真面目にバラバラにされたいのかな?」


「.....ご、御免なさい」


「次やったらマジに殺すから。許さない」


「.....そ、そうですね」


そんな会話の中でも。

何と言うか義妹は何時ものテンションだ。

俺は青ざめながらもそう思う。

取り敢えずは.....良かった。


「ちょっとお兄ちゃん聞いてる?」


「聞いてる。すまん」


「次買ったらマジに殺すからね」


「.....あ、はい」


バンバンとポルノ雑誌を叩く、菜美。

いや、かなり怖いです。

思いながら菜美に土下座をしつつ。

少しだけ.....ホッと息を吐いた。



「.....ん?」


気が付くと朝になった様だ。

俺は.....少しだけ目を開きながら.....朝を感じる。

小鳥のさえずりとか聞こえるしな。

でも今日はゴールデンウィークの中間だ。

寝れるぜ、ヒャッハー!


「こらこら。起きなさい。和彦くん」


と思ったらその様に声がした。

多分、裕子さんだろうけど.....もう少しだけ寝てくれ。

思いながら俺は布団に包まる。

すると.....頬をツンツンされた。


「うーん。起きて。和彦くん」


「.....ハッ!」


二度目の言葉にガバッと起きた。

忘れていたがこの家には.....羽鳥先輩が居た!

思いながらその人物を見る。

黒縁の眼鏡、そして.....エプロン姿の羽鳥先輩だった。

ニコニコしている。


「せ、先輩。お、おはようございます。すいません」


「うんうん。おはよう。その、ズボンが脱げているから.....直してね」


「.....え.....?.....ハッ!す、すいません!」


ズボンが脱げて下着が丸見えだ。

俺は真っ赤になりながらキャと言いながら布団に隠れる。

紅潮しながら羽鳥先輩は苦笑した。

それから.....羽鳥先輩は柔和に言ってくる。

手を差し伸ばして、だ。


「.....暫く.....宜しくね」


「.....はい。先輩」


「.....君にまた救われたね。私は」


「.....救って無いっすよ。俺は」


そして立ち上がる。

それから.....羽鳥先輩はじゃあね、下で待っているから。

と立ち去った。


俺は.....それを見送りながら。

仮にも元気なった様だ、と柔和に思いつつ。

複雑な顔をした。

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