第16話 ミリアと菜美の関係
アメリカ人でラノベ作家のミリア・ラシュード。
多分だが彼女自体はそれなりに優しいのだろうと思う。
菜美を異常に好いているけど.....だ。
今、話を聞きながらそう思った。
まあ俺に対しては相変わらずの接し方だが。
俺達は客間でミリアと話していた。
ミリアは白髪を揺らしながら頬を膨らませて話す。
「正直言って菜美が義兄さんと一緒に暮らしているのが嫌です。私は.....菜美の貞操を守りたいんです」
「.....貞操って.....ミリア.....」
「貴方の存在は.....純白の様な存在だから。だから.....嫌だから」
「.....」
俺はミリアの言葉に溜息を吐く。
そして.....菜美を見る。
菜美は酷く困惑していた。
俺はそれを確認して、ミリアを見る。
取り敢えずは.....言ってみるか。
「.....ミリア。正直言ってお前の守り方は病的だ。だから気を.....」
「アンタは黙れ」
「.....」
盛大に溜息を吐いた。
俺とミリアは水と油だな、思いつつ......黙る。
するとミリアはフンと息を鳴らしてから菜美を見た。
菜美は少しだけオドオドしながら話す。
「でも信じられない。そんなに.....ミリアが私の事を.....」
「.....菜美は忘れているかも知れないけど、私は菜美に救われたんだよ。昔」
「.....え?」
「.....幼い菜美が.....図書館で外国人だからって友達が居なくて一人ぼっちだった私に声を掛けてくれたから.....だから私は文章を書く様になったから」
俺は驚愕しながら菜美を見る。
菜美は、確かに声を掛けた事が有る様な.....、と言う感じで考え込む。
でもその時の.....まさか、と目を丸くする。
それからミリアは、有難う、と頬を染めた。
「.....お前.....そんな事をしていたんだな」
「.....そうだね。昔は.....気軽に人を助けていたから。でもそれがここまで有名な人になるなんて思って無かった.....」
「.....私はあの一言で変わろうと思った。だから絵を描きたかったけど、才能が無かった。だから文章にした。それで.....今、絵を描いている貴方の事を知ったから.....どうしても貴方に絵を描いてもらいたくて.....!」
「.....そう.....なんだね」
少しだけ悲しそうな顔をしながら菜美は俯いた。
それから、御免なさい、と頭を下げる。
そして.....ミリアを見た。
「.....今、作品が人気で.....とても忙しくて.....ミリアの小説の絵まで手が回らないの.....だから.....貴方の希望に答えられないんだ。ごめんね。ミリア」
その言葉に.....ミリアはショックを受けた様な顔をして。
それから静かに俯いた。
そしてゆっくりと顔を上げて笑みを見せる。
だよね、と、だ。
「.....やっぱりそうだよね.....うん.....無理を言って御免なさい。菜美。貴方も人気絵師だもんね。仕事もいっぱい有るよね.....」
少しだけ落胆した様子で涙を浮かべながら.....ミリアは言う。
俺はその姿を見つつ.....菜美を再度見る。
菜美は首を振った。
そして笑顔で.....菜美は話す。
「.....でもミリア。私はね。.....初めて私みたいなのでも人を救えていたんだって思えたよ。嬉しかった。.....だから.....担当の人に掛け合ってみるよ。貴方の熱意をね」
「.....菜美.....」
正直言って。
俺は菜美の過去を知らない。
それを聞こうとは思わないが.....そんな過去が有るとは思わなかった。
菜美が.....人を救っていたんだな。
思いつつ.....ミリアを見る。
「.....でも私、菜美が心配.....本当に」
「.....それは大丈夫。和彦。.....いや.....お兄ちゃんは私のお兄ちゃんだから」
柔和に.....菜美は話す。
その言葉を聞いて俺は目を見開く。
まさかの言葉だった。
お兄ちゃん。
そう、言われるとは思わなかったのだ。
「.....菜美は信頼しているんだね.....ソイツの事.....でも好きなんだよね?」
「.....す、好きじゃ無いけど.....」
赤面して.....俺を見てそして前を見る菜美。
え?菜美って俺の事を.....?
思いながら俺も赤面する。
ミリアはこの様子を見つつ不愉快そうに眉を顰めながら答えた。
「.....分かった。無理そうだから今は諦める。でも私、完全には諦めない。絶対に菜美を振り向かせてみせる」
「.....ミリア.....有難う」
「.....だって嫌われたくないもん。菜美にね」
そして立ち上がるミリア。
それから俺を見て.....指差した。
俺は?を浮かべながら見る。
そして強く、大統領が宣言する様に宣言する。
「.....アンタから奪ってみせる」
「.....ソイツは結構だな。.....奪ってみせろや。やらんけど」
「.....フフッ」
笑みを浮かべる菜美。
そして.....ミリアはその日、帰った。
それから.....俺達は顔を見合わせて.....笑みを浮かべる。
で、この日から.....俺の呼び名はお兄ちゃんという事になり。
その日は俺は驚愕に驚愕する日だった。
☆
「お前の知り合いって独特だな」
「.....そういうお兄ちゃんもでしょ」
「.....そうだな」
俺達は笑い合った。
真夜中。
俺達は菜美の部屋に集まっていた。
そして会話をする。
「.....正直、こうしてお前と会話して.....しかも.....お兄ちゃんって呼ばれる日が来るなんてな。思って無かったよ」
「.....私もこうして大きく話せる様になったの.....良かったと思う」
しかしな.....全てはあのエッチな絵のお陰だな。
思いながら.....不思議な運命も有るものだと思いつつ。
菜美を改めて見る。
「.....菜美。お前は頑張っているな」
「.....何で?いきなりどうしたの?」
「.....色々な人達と関わって.....俺だけじゃ無い経験値を貯めているからな」
「.....だね」
絵師として.....その全てで.....経験値を貯めている。
俺には到底真似は出来ない。
思いながら.....俺は笑みを浮かべた。
すると.....菜美は少しだけモジモジし始める。
俺は首を傾げて見る。
「.....で、その.....私.....お兄ちゃんの事、嫌いだから」
「.....それもいきなりだな。どうした」
「.....な、何でも無いから!」
「.....???」
言っている側から否定ですか。
ちょっと訳が分からない。
だが.....それならそれでも良いや。
と思いながら.....今の生活が.....これからも続けば良いな。
思いながら.....居ると。
ピコン
「.....メール?こんな深夜に.....」
菜美の携帯にメールが入った様だ。
俺はそれを見ながら周りを見渡しつつ居ると。
何故か菜美は唖然としていた。
「.....何これ.....」
「.....どうした?」
「.....お前の描いている絵を世間にバラすって.....メールが.....」
「.....は?」
俺は目を丸くして直ぐにメールを観る。
確かに、世間体を破壊、バラす、と脅しの様にメールが来ていた。
何だこれ、誰だこれ送ったヤツは?
思いながら.....菜美を見ながらメルアドを確認する。
だがこの文字列といい多分、捨て垢だった。
確認のしようが無い。
「.....バラされたらあまり.....良い気分じゃ無い.....っていうか何でアドレス知っているの?」
「.....仕事仲間とか?それだったら有り得るぞ」
顎に手を添える。
新たな火種が燻っている気がした。
そして.....その日から。
菜美に対して嫌がらせの様なものが始まってしまい。
俺は.....眉を顰めざるを得なかった。
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