第五章 菜美の仕事

第13話 白髪のゴスロリ

父さんの再婚相手の連れ子の少女。

つまり.....菜美の事だが。

かなりの変態で有り、ヤンデレで有り。

とにかくややこしい存在であるという事が明らかになりつつ有った。


だがその反対で菜美が心底、魂を削って.....物凄く頑張っている点は.....認めざるを得ないと思う。

一生懸命、読者を楽しませる為に、だ。


何故かって?

そうだな、イラストを徹夜で描いているからだ。

練習も兼ねてだろうけど。

俺は今日も描いているなと感じながら。

笑みを浮かべて夜、寝た。


そしてまた朝になった。

今日は.....五月の初日の土曜日で有る。

智子とこの前、電話で約束していたが.....智子と会う約束をしている。

何を話すかは決まって無いが.....。


「.....とにかくも.....今日も元気に行きますか」


思いながら欠伸をしてから伸びをして起き上がる。

そして.....横を見て俺は見開いた。

何でかと言えば。


また.....菜美が居たから、だ。

だけど今日は.....何か雰囲気が違う。

そして.....直ぐに俺は察した。


「.....菜美の奴め.....」


昨日も休みだからと徹夜していた。

そして起きたがそのままこの場所で力尽きて寝てしまったのだろう。

俺が起きるのを多分、待っていたんだと思う。


洋服に着替えていて机に突っ伏していた。

湯気の上がるコーヒーが二つ置いてあるし朝は起きていたのだろう。

俺は和かにそれを見る。


「.....」


俺は無言で寝息を立てる菜美に服を被せた。

そして.....俺は俺用に甘くしてあるコーヒーを飲みながら。

菜美を見つめる。

本当に横顔も.....美少女だな、と思いながら。


「お前が頑張っているから俺も頑張れる。今はとにかく休めよ」


その様に呟いてから。

約束の時間になる、服を着替えよう。

思いながらコーヒーを置いて俺は部屋を後にした。

戻って来てから.....菜美を起こして。

そして、と思った。



「和彦。朝食作った」


「.....おう。あ、そう言えば裕子さんと父さんは?」


「会社だね。今日は出勤しないといけない日らしいから」


「なるほどね」


起こした菜美は睡眠をしっかり取ったのか。

元気ハツラツに俺に接する。

俺はそんな菜美に笑みを浮かべて聞いてみた。

絵の事を、だ。


「.....菜美。絵は描けたか」


「.....うん。描けた。徹夜したからバッチリだよ」


「.....そうか。そいつは結構なこったな」


「.....それに今度、担当のラノベの新刊が出るからね.....」


それは楽しみだ。

菜美の描いた絵が早速、載る。

それ以上に楽しみな事は無いな。

思いながら菜美を見ると、何故か眉を顰めていた。


「.....どうしたんだ?」


「.....智子さんに会うのは良いけど、変な事をしないでね」


「あのな.....お前はどういう頭をしてんだ」


「.....私は.....ちょっと会う人が居るから行けないけど。変な事をしない様に」


付いて来るつもりだったのかコイツ。

そんな事にはならんよ、と俺は否定しながら溜息を吐く。

菜美は、どうだか、とツンデレの様な感じでプイッとそっぽを向いた。


全くなこのヤンデレって面倒臭い。

思いながら.....俺は溜息をまた吐いた。

しかし.....会う人?


「お前が今日、会う人って誰だ?」


「うん?あ、えっとね。また有名なラノベ作家さんだよ。仕事のお話。私の絵に惚れているって」


「.....うーん。えっと、何か.....お前、気を付けろよ」


「.....?.....え?うん」


それは嫌なパターンだぞ。

男で.....その、言っちゃ悪いが変態かも知れない.....うーん。

何だかモヤモヤするな。

思いながら.....顎に手を添える。

すると時計を見ていた菜美が呟いた。


「.....あ、和彦。.....約束の時間.....」


「あ.....あ!?しまった。食べないと」


「遅刻は駄目だよ」


「.....お前、応援しているのか嫌なのかどっちなんだ?」


全くな.....まぁどっちでも良いけど、とにかく急がないといけない。

今は午前八時四十五分。

待ち合わせは九時だ。

真面目に焦ってやらないと.....。


「.....ああ、そうだ。菜美。有難うな」


「.....え?何が?」


「.....いいや、何時もの感謝だ」


「.....?.....変な和彦」


今朝のコーヒー。

あれで思ったのだ。

お前が、仲間が居るから俺は一歩を踏み出せる。

その様に思いながら.....感謝の気持ちで飯を食った。

それから慌てながら外に出る。



「すまん。待たせたか」


「ううん。私も今来た所だから」


「.....その服装.....結構可愛いな」


「え?.....あ、うん。有難う.....」


俺と智子の待ち合わせ場所は駅だ。

そんな智子はきれいめ系の服装。

所謂、スカートメインだが、いやらしく無い。

そして.....下に長いニットとか。

名前が分からないのがもどかしいが。


本当に良い服装だと思いながら、行くか、と俺は智子を誘う。

智子は.....少し赤面していた。


「そうやって.....私を惑わす.....」


「あ?何か言ったか?」


「.....何でも無いけど!?」


突然の大声に俺は?!を浮かべながら。

ゆっくりと歩き出す。

すると刺さる様な痛い様な視線を感じた。


直ぐに背後を見るが.....何も無い.....。

何だ今の視線っつーか。

思っていると智子が反応した。


「.....どうしたの?和彦」


「いや.....かなり凄い視線を感じたんだが.....」


痛いっつーか、まるで弾丸で射抜かれた様な。

何だこの寒気?

思いながら.....俺は智子にさっさと離れようと言った。

取り敢えず、駅から.....隣町へ。

この場所は危険な気がした。



智子情報によると。

隣町におしゃれなカフェが有ると智子は言う。

その言葉通り、おしゃれなカフェが有った。

俺は智子にこんな場所を知ってんだな、と言う。


「.....私ね.....こういうカフェ、落ち着く場所が好きなの。だからね良く調べるんだ。新しい発見が有りそうだから」


「.....へぇ。流石だな。俺はこんなのマジに疎いから」


「もう。そんな感じじゃデートに困るよ」


そう言ってからボッと赤面した智子。

俺は.....というか俺も赤面した。

つまりこれはデー.....!?

しかし智子は完全否定した。


「違うから!これはデートじゃ無い!」


「お、おう?」


「.....全く.....全く!」


そう言われると少し.....うん、残念だな。

俺は少しシュンとした。


智子はとにかく行こう、早く、と急かしてくる。

ハイハイ、と言いながら扉を開けると。

店員さんが直ぐに出て来た。


「いらっしゃいませ」


「.....あ、二人で.....」


「畏まりました。あちらのお席にどうぞ」


そして俺と智子は見つめ合って頷き、椅子に腰掛けた。

一変した辺りを見渡す。

日本風のカフェなんだな、と思いながら。

良いカフェだと思いつつ.....視線を真っ直ぐに横にすると。


「.....ん?」


見た事の有る.....顔が。

あの顔立ちは菜美じゃね?と思ったんだが。

敢えて俺はスルーした。

何でこの場所に菜美が!?と思いながら。


「.....どうしたの?和彦?」


「な、何でも無い.....」


いや、ちょ、何故この場所に菜美が居る!?と仰天しつつ思っていると。

背後のカフェの扉がカランカランと音を立てて開いた。

それから.....白髪の頭をしたゴスロリの女の子が入って来る。

まるで.....人形の様なその顔立ち。


俺達は!?を浮かべながら見た。

智子がお人形さんみたい.....と呟く。

店内が.....ザワザワとした。


「.....」


「.....?」


で、何かを探す様にキョロキョロしていたその少女に店員が話し掛ける。

少し離れていた為に聞こえないがその際に俺と目が合ってかなりキツく睨まれた。

俺は!?と思いながら目を逸らす。


「.....???」


「和彦、知り合い?」


「.....そんな訳あるか。.....あんな白髪ゴスロリは知らない」


「.....じゃあ何で睨んでいたんだろう?」


分からん。

あの少女、誰かと勘違いしているんじゃ。

と思っているとその少女は.....笑顔になった。

え?と思っていると.....菜美らしき少女に抱き付く。


「.....?!」


「.....和彦?」


「.....いや.....何でも無い」


ちょっと待て、何がどうなっているのだ。

あのゴスロリの野郎、俺にあんなキツい顔をした癖に。

あの少女は.....菜美の知り合いか?


いや、マジで一体.....誰だ.....?

顎に手を添えながら考える。

すると店員さんが何時の間にか横に立っていて困惑していた。


「えっと.....ご注文をお伺いしても?」


「あ、す、すいません。じゃあその.....ケーキセット.....を」


店員さんは、畏まりました、と言いながら去って行く。

そして智子との集まりの筈が一気に少女と菜美の観察に変わってしまい。

あの少女の事が気になって仕方が無く。

俺はまた溜息を吐いた。

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