第四章 飯草と羽鳥、和彦と七色
第11話 飯草祭と羽鳥優子の過去
飯草祭という少年。
俺の友人の彼は.....この町で有名な不良集団の不死鳥という名前の看板のリーダーだった。
簡単に言ってしまうと無茶苦茶に荒れていた。
しかし.....やり方は.....弱い奴らを救うやり方だったのだ。
不良チームなどを編成して、強い奴らとかからカツアゲとかしていたのだ。
弱い人を虐めている奴らとかから。
それしか.....生きる道が無かったのだと思う。
勿論それは駄目だと思うが。
だが、ある日の事だ。
祭にとって運命の日になったその日。
俺はたまたま祭が倒れている所に通りかかってボコボコにされていた祭を見つけてから家に運んで行って。
父さんと.....裕子さんに治療してもらった。
今思えば救急車を呼べば良かったと思うぐらいに反省している。
だけど.....救急車を強く嫌がったのだ。
祭が、だ。
親の世話になりたく無いと.....暴れたのだ。
だがそれをきっかけに祭は俺を慕う様になった。
俺の事を兄貴と言って、だ。
だけどそれは勘弁してくれと否定した。
その事に.....祭は驚愕しながら。
『じゃあ何て呼んだら良いんだ?お前の事』
と、言われた時に俺は。
笑みを浮かべて祭に向いて言った。
その一言を、だ。
『そうだな。じゃあ俺の友人になってくれ』
と、だ。
この言葉を受けた祭のかなり仰天した目は.....今でも忘れられない。
間違いじゃ無かったって思った。
そんな祭は俺を従える事も出来た筈なのに、と。
お前は.....と涙を浮かべて泣いた。
その姿を見て.....俺は心で強く決意しながら。
祭をその日、家に泊めてやったりした。
それから数日後。
祭を寄ってたかって不良一味が警察に捕まったのを知った。
俺は.....その事で改めて誓ったのだ。
祭を守ってやると。
絶対に不良達に渡さないと、だ。
それから数日して不良チーム不死鳥は解散した。
祭が解散させたのだ。
そんな祭の孤独を俺は誰よりも分かる気がする。
だから放って置けないと思っている。
俺の.....かつての姿に孤独な姿に似ていたから、だ。
そんな事件から一年、経った今でも祭の家族の事は詳しく知らない。
親の事も.....話したりしないし、話してくれと頼むと嫌がるのだ。
だから詳しくは聞かない事にしている。
七色さん。
つまり義妹さんとは祭は仲が良いらしい。
会った事は無いが、だ。
中学三年生の少女らしい.....という事は知っている。
祭の最大の支えになっている少女だと思う。
俺と同じ様に、だ。
それは簡単に言えば.....柱と同じで。
壊れたら.....祭は.....と思う。
だけど今日の事だ。
祭を支えている人がまた別に.....居る事を知った。
それは.....羽鳥という人物だ。
吹奏楽部、部長。
羽鳥優子。
ずっと.....祭の事を親戚という身で気に掛けている様だった。
俺はそんな羽鳥先輩が見せた顔を思い出しながら学校の外で.....校門より後ろ側。
その場所で少しぬるくなったスポドレを握りつつ学校を見上げていた。
俺は今、待っている。
智子が吹奏楽部に体験入部しているのだ。
なので待っている。
因みに菜美と祭りは先に帰した。
その事も有りつつ.....待つ。
オレンジ色の夕陽を体に浴びながら、だ。
「.....?」
そうして待っていると羽鳥部長がこっちに手を挙げてやって来た。
俺は驚きながら見つめる。
羽鳥部長はニコニコしながらやって来ていた。
そして俺の前に立つ。
「やあ。和彦くん」
「.....どうしたんすか?練習.....終わったんですか?」
「.....いや。練習は終わってないよ」
「え?」
俺は少しだけ素っ頓狂な声が出る。
羽鳥部長はその様に言いながら。
向こうに有る、運動場を見て走っている生徒を見つつそのまま俺に優しく笑んだ。
それから.....少しだけ複雑な顔になる。
「.....実は.....祭の事で話が有るんだ。今は休憩中でね。良いかい」
「.....え、ええ。.....まぁ良いですけど.....」
祭の事って.....?
俺は思いながら.....羽鳥部長を見る。
羽鳥部長は.....俺を見て柔和な笑顔をしながら.....少しだけ俯く。
「有難う。君は.....とても良い子だから聞いてくれるとは思ったけどね」
「.....はい」
羽鳥部長はその答えに少しだけ.....間を置いて。
それから.....威を決した様にこっちを見て。
そして.....言ってきた。
「.....祭はね。.....私を喧嘩の中で思いっきり殴ったんだ。昔」
「.....え?」
「.....昔の.....祭の幼い頃。オモチャの取り合いで喧嘩でなったんだ。私は殴られた衝撃で頭を打って脳に異常が出たの。その事も有って.....私と祭はとても仲が良かったのに疎遠になったんだ。.....だけど祭は.....私の事を気に掛けてずっと病院にも来てくれて。ああ良い子だなって。祭よりお姉さんだけど私は.....祭を同学年の大切な存在に見ていたんだ」
「.....」
そんな過去が有るとは知らなかった。
羽鳥部長は音楽室の方向を見ながら.....石を少しの力で蹴った。
そして.....俺を見てくる。
「.....祭はその事も十字架で背負っているだろうね。そんな祭の事で緩和剤になっているのが君と.....七色だ。君達が居ないと.....祭はとっくの昔に不良に戻っているだろうね。私だけじゃどうしようも無いんだ」
それから一呼吸置いて。
悲しげに羽鳥部長は話した。
俺は.....その姿に.....少しだけ眉を顰める。
「だからまぁ、簡単に言えば祭を不良にしてしまった原因の1が私だと思うんだ。.....私は頭の中に後遺症が残ってしまって.....」
「.....え?」
「昔の思い出の記憶が.....曖昧なんだ。大切な所が欠如しているんだよね。親も本当の親なのか分からないんだ。曖昧だから」
そこまで羽鳥部長が話していると。
向こうから声がした。
この様に、だ。
「羽鳥」
と。
羽鳥部長を呼ぶ声。
俺達は驚きながらその方向を見る。
「.....ベラベラと何、色々と和彦に話してんだお前は。あれこれ話すんじゃねぇよ」
「.....祭.....何で?お前帰った筈じゃ.....」
「.....ああ、忘れ物。それで戻って来たらこの様だ。羽鳥と和彦が見えたから来たら.....全く」
俺の言葉を受けつつ。
溜息を吐きながら.....羽鳥部長を睨む、祭。
羽鳥部長は.....笑みを浮かべて全部は話すつもりは無かったよ、と言う。
枯れ葉が舞う。
それが収まってから祭が話した。
「.....羽鳥。俺はな。お前のせいでこうなった訳じゃ無い。訂正を求める。俺は.....母親に虐待を受けたから.....不良になったんだ」
「.....!?」
「.....祭。でもね。貴方の原因に私も.....」
その羽鳥部長の言葉にアホ、と吐き捨てる、祭。
それから.....俺を見てから.....羽鳥部長を見た。
そして.....運動場を見る。
「.....俺はな。.....母さんに心を滅多打ちにされて虐待されて.....心が荒んだ。だから.....弱い奴らを助ける為に.....不良になってしまった。それだけだ。それの原因にお前は関係無いんだ」
「.....」
「.....お前を昔、殴った事は謝る。頭に障害が残った事も....悔みきれない。だけど.....それで不良になる程.....甘っちょろく無いんだよ人間はな」
そう祭は言いつつ。
鞄で俺に行こうぜ、と唆す祭。
言葉に.....俺は動こうと思ったが。
その際に羽鳥部長が言う。
「祭。待って」
「.....何だ。羽鳥」
「.....あのね。アンタは優しすぎるんだよ。祭。だから.....私も原因の1だと思う。だから.....後悔してる。私は.....アンタが大切だから」
「.....」
そして俺達は.....その場を後にした。
その直ぐ後に体験入部を終えた.....智子が戻って来て。
家に帰る事になった。
祭の.....不良のきっかけを聞いた事が有るが.....ほぼ詳しくは初めて知ったな。
その様に思いながら.....家に帰宅した。
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