第3話 それぞれの過去

こうやって.....今でこそ元気だが。

俺達は昔はその。


余り.....元気では無かった。

何故かと言えば簡単だ。

俺と.....菜美は似ていたのだ。


何が似ていたかって?

そうだな.....心が荒んだ境遇が似ている。

でも俺の割合は菜美には勝てないけど。


菜美の父親は酒に溺れて.....裕子さんへのDVなどで常に家は荒れていたそうだ。

警察のお世話になった事も有る父親だそうだが.....。

それ以上の余り詳しい話を聞いた覚えは無い。

直接聞くのも掟破りかと思って聞いてないのだ。


それは.....菜美の心が壊れてしまう可能性も有るのも理由になる。

俺は絶対にこの先も聞かないつもりだ。

菜美は菜美らしく。

生きていってほしい。



「それはそうと.....良い加減に俺をモデルにするのは止めてくれ」


「何で?良いじゃん。直接顔が出る訳じゃ無いんだから.....」


「.....お前のそのヤンデレも禁止だ」


「.....?.....ヤンデレって何かな?」


いやいや、自覚ねぇのかコイツは。

思いながら俺は.....リビングで椅子に座っている菜美に説教をしていた。

あの後、俺は捕まって.....そして椅子に縛り付けられてまたモデルをしたのだが。

それは幾ら何でもコイツの未来の為にならない。


もう直ぐ、父さんと裕子さんが帰って来る。

と言うか.....ふと思ったが父さんと裕子さんはこの事を知っているのか?

思いながらジーッと菜美を見る。

菜美は何?と聞いてきた。


「.....いや。お前さ、エッチなイラストに関して.....俺の親父とか知っているのか?」


「.....知らないよ。お母さんも。何でかって言われたら.....話すのも面倒臭いからね。でも.....大人の人のお世話にならないといけない。だから.....ある人が私の事を知っている」


「.....ある人?」


「そう。ある人。正確にはその人は.....イラストの担当者だけど。神谷さんっていう人」


ああ、成る程ね。

それはそれで良いんじゃ無いか?

思いながら.....聞いてみる。

そいつは女なのか?と。


「.....女の人か?」


「そりゃそうだよ。じゃ無いと犯罪に巻き込まれるかもだから」


「まぁそりゃそうだな。考えているんだな。そこら辺は」


「当たり前でしょ」


まあって言うか。

万が一、担当が中年の男とかだったら今直ぐに俺が仕事を止めている。

何故かって簡単だろ、相当に菜美が危ないじゃ無いか。

ただですら.....エッチな今の状況だ。

更に危ない事になるかも知れないのに、だ。


「もし担当が男の人だったら.....和彦は止めてる?」


「.....は?」


「.....いや、男の人だったら止めているかって聞いている」


「.....何でそんな事を聞くんだ?」


俺は?を浮かべながら見つめる。

そ、それは.....と紅潮しながら菜美が言い淀んでいると、リビングのガチャッとドアが開いた。

俺達は慌てて話題を切り替える。

そして裕子さんが顔を見せる。

相変わらずのテンションで、だ。


「あれ?.....久々じゃ無い?そんな二人一緒って」


「.....裕子さん.....お帰りなさい」


「お母さんお帰り」


「たっだいまー!あ、そうだ、駅前でケーキ買ってきたよ!食べよう!」


へ?と俺達は顔を見合わせる。

夜ですしまだ夕食も食べてないです.....と俺は止める。

すると裕子さんはショボンとした。

本当にハイテンションだな。


因みに裕子さんは.....黒髪の長髪に。

40代とは思えない艶々の肌で顔立ちも整っており。

そして.....身長が164センチも有り。

足が長い。


でも.....もう分かるかも知れないが。

裕子さんはかなり無理をしている気がする。


何故か?

それは.....まあ俺達を元気付けようとしているから。

荒んだ心の俺達を、だ。

だから心配になるけど.....決して弱音は吐かないのが裕子さん。

俺は.....その様子を見ながら元気を貰っている。


俺達は.....その姿を見ながら.....太陽の様に感じている。

そして裕子さんが居なければ.....俺達は自殺なり何たりしているだろう。

俺は唖然とする菜美を見ながら少しだけ口角を上げる。


「.....お母さん.....ケーキって.....夕食食べてないから.....」


「あ、今から作るからね。ご飯」


「いや、話聞いてよ.....」


ハイテンションをしている人間を知っている。

だから俺は.....裕子さんになるだけ明るく接している。

そうしないと.....裕子さんが泣くかも知れないから、だ。

俺は.....思いながら.....夕食を作りに行く、裕子さんを見送る。


ガチャッ


「.....ただいま」


「.....お義父さん。お帰りなさい」


「.....父さん」


南井和夫。

俺の最後の肉親かも知れない.....父親。

親父の父親、母親は失踪した。

博打で出来た1000万の借金を親父に押し付けて、だ。

母方の家族は今、どうなっているか知らない。


その多額の借金については.....母さんと親父が十年掛けて返済した。

俺に残す訳にはいかないと。

死に物狂いで、だ。

だから親父の事は.....好きだ。


顔立ちは少しだけ巌の様な顔立ちに。

僅かにアホ毛が有る。

それながらも.....眼鏡にオールバックの髪で権限がいかにも有りそうな顔をして。

それでいながらも俺達を優しく見守っている。


これってツンデレなのか?という感じの中年のオッサンだ。

俺達には建前を守る為かあまり笑まない。

ただし、裕子さんと一緒だと笑んでいるが。

それは.....裕子さんを.....大切に思っている気持ちと。

守る為だろう。


「ただいま。裕子」


「.....お帰りなさい。あなた」


「.....勉強はしたか。和彦」


「したよ。親父」


うむ、そうか、と少しだけ嬉しそうな雰囲気を出しながら。

そのまま風呂に入りに行った。

因みにその風呂は俺達が沸かしておいたのだが、まぁ良かった。

それを柔和に皆がら確認した裕子さんは、よし!、と言ってご飯を作りだす。


今日の夕飯は.....唐揚げの様だ。

俺達は直ぐに顔を見合わせて、作るのを手伝う。

そして.....楽しく話をした。


これが.....俺達の家だ。

そして俺達の.....家族だ。

皆んな.....それなりの過去を抱えている。

だけど支え合って生きている。


今は.....この今は。

楽しもう。

その様に思いながら俺は.....包丁で味噌汁用のネギを切る。

そして横に居る.....菜美に渡した。


「.....どうしたの?和彦」


「.....いや、こうして.....一緒に活動出来るのが嬉しくてな。久々じゃ無いか」


「.....そうだっけ?.....あ、でもそうだね」


考え込んでそう言う、菜美。

そうだ、これは.....二ヶ月ぶりだからな。

大切にしたいのだ。

思っていると裕子さんが、何々?、と混ぜての様な顔をする。


「.....一緒に行動出来るのが嬉しいって事ですよ。裕子さん」


「.....へ?」


「そういう事。お母さん」


「え?.....へ、へ?」


俺達は顔を見合わせて笑みを浮かべた。

そして.....食事を作る。

裕子さんは???の様な顔だったが。

まぁ良いか、という感じで食事を作るのに戻った。

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