第4話 関原玲

 関原玲せきはられいは、地元の病院で、清掃業をしている。パート従業員である。

 責任を持って働いている同僚たちには申し訳ないが、ものすごい超がつくほどの裏方の仕事だし、賃金も底辺に近い。

 まず看護師たちには下に見られているため、ほとんどあいさつされることはない。一度、新人らしき看護師にあいさつをしたところ、無視されてしまったので、それ以来、看護師たちには誰にもあいさつしていない。本当はした方がいいのだろうが、今さらあいさつをしても不自然なだけだし、その勇気もない。

 唯一気さくにあいさつをしてくれる存在は、入院患者さんくらいのものだ。しかし、その入院患者さんの一部から、「幽霊」とあだ名されていることも知っている。鬼太郎みたいに長い髪で顔が隠れているからだが、それには理由がちゃんとある。

 仕事柄、床の掃き掃除やモップがけのときに下を向いていることが多い。それがクセになって、日常でも下を向いて伏目がちになるようになった。それに加えて、鬼太郎の前髪である。

 だから、「幽霊」と。

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