第六部

来客

「今日も平和だな」


 城のバルコニーからティルナの街を見下ろし、俺はぽつりと呟いた。

 バースの名が犯罪の抑止力となり、ここ最近はティルナで仕事をすることがない。犯罪者も鳴りを潜め、俺の手を使わずとも事足りるようになった。そのおかげでチェリーコードとの穏やかな暮らしを享受できている。

 さて、今日は何をしようか。仕事が減ったのはいいけど、それはそれで退屈だ。チェリーコードは買い物に行ったし、俺もちょっと外に出てくるかな。

 バルコニーから部屋の中へと戻り、支度を始める。

 すると、ポケットの中でスマホが激しく震えた。着信はギルドの受付からだった。


「バース様、お客様が訪ねてこられましたよ」


「お客様?」


 誰だろう。依頼かな。


「わかりました。すぐ行きます」


 思い当たる人物はいなかったが、とりあえずロビーへと下りることにした。

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