ミステリアス・レディー

 急いでロビーに向かい、受付嬢の案内でラウンジに通された。

 俺を待っていたのは、ミステリアスな淑女。少なくともこの街で会えるとは予想だにしていなかった人物だ。


「お久しぶりですね、レティさん」


「あら、あれからそんなに経ったかしらね。調子はどう?」


「おかげさまで。それにしても、まさかレティさんが山から下りてくるなんて思いもしませんでしたよ」


「ふふふっ、驚かせてしまったかしら。開かずのドアについて一つ気付いたことがあってね。あなたにヒントをあげようと思って」


 災厄よりも怖ろしいものが封じ込められている開かずのドア――この世界を滅ぼしてしまいかねないのであれば、触れるのはまずいのではないか。

 俺の疑問を察したのか、レティはさっさと手を煽いだ。


「あくまでヒントよ。思い出してはいけないわ。これは単なる私の興味。一人間がこの世界を終わらせるかもしれないなんて面白いじゃない?」


「あはは……ひとまず場所を変えませんか? あと、着替えた方がいいですね。この街でその格好だとさすがに悪目立ちしますよ」


「そうね。じゃあ、バースくんに見繕ってもらおうかしら」


 まずはぼろ布を着替えるため、俺とレティは服屋を巡ることにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る