同化

 俺は瓦礫の上に立ち尽くしていた。

 侵蝕は消え去り、飲み込んだ建物たちの残骸を全て吐き出していた。


「バース! 無事だったのね!」


 飛び込んできたチェリーコードを受け止め、少し強めに抱きしめる。

 自分を見失いそうになりながら長い記憶の旅を終え、チェリーコードが恋しくなっていた。

 俺は俺だ。チェリーコードと過ごすかけがえのない記憶が俺を俺でいさせた。


「アレシャンドラはどうしたの?」


「……さあ」


 ただ一つ言えること――それは、アレシャンドラは死んでいない、ということだ。

 存在はない。それでも、アレシャンドラという魂と記憶はどこかで生きている。俺は彼女のことを忘れない。


「行こうか。この街とはおさらばだ」

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