第三部
裏切り者殺し
スラム街――ロウワン。
スラム街の名が冠されているが、ここには暗いイメージがない。むしろ、人間で賑わっており、決して治安がいいとは言えないながらも繁栄の兆しが感じられる。
俺とチェリーコードは人ごみをかきわけ、とある酒場で情報屋を待っていた。
今回はギルドからの正式な依頼ということで、高い報酬はもちろんトップランカーへの仲間入りも確約されている。ただ、それだけに難易度の高い危険な依頼だ。
「アナタたち、ギルドから紹介された人たちネ?」
「そうだ。俺はバース、こっちはチェリーコード」
「アタシはユーイェン、よろしくネ」
小柄な情報屋――ユーイェンは席につかなかった。手招きして酒場を後にし、俺たちは近くにあるぼろいアパートの一室に通された。
「ここは?」
「アタシの家ネ。さて、早速だけど本題ヨ。ギルドからはターゲットの情報をアナタたちに話せばいいと言われたネ」
ユーイェンは冷蔵庫からジュースの缶を二つ取り出してこちらに投げた。
缶が錆びかけて賞味期限が怪しいところではあったが、一口飲んでみると案外美味しかった。
「ターゲットの名前はウェイズリー。元ギルドのトップランカーで、防御力がトップクラスの怪物ネ」
「そんなに防御力が高いのか」
「材質不明の鎧と兜で全身を覆っているネ。どんな攻撃にも耐え得る強度のおかげでトップランカーまで上り詰めたらしいネ」
「へぇ、俺とは真逆だな。それで、どうしてギルドが直々にそんなやつを消そうとしてるんだ?」
「裏切りのせいネ。ウェイズリーは強すぎるがゆえに、ギルドの依頼をこなすことに飽きたのネ。次から次へとトップランカーを殺していって、この世界を支配するつもりネ。トップランカー狩りネ」
トップランカー狩り、か。なるほど、最近妙なランクの上がり方をすると思っていたらそういうことだったのか。
破格の攻撃力を持つバーサーカーが買われたのも頷ける。破壊的な攻撃力と堅固な防御力のぶつかり合い――まさに矛盾といったところだろう。
「入手した情報では、ウェイズリーは今ロウワンに潜伏中ネ。居場所の目星もついてるネ」
「わかった、準備しておくよ」
「また明日ネ、殺し屋さん」
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