死にたがり再び
眠れないうちに夜が明けた。
チェリーコードはまだ寝ている。あと二時間くらいは起きないだろう。
俺は眠気覚ましにカフェへと足を運んだ。
カフェには意外な先客がいた。クローディアだ。
まだ早朝だというのに、子供がこんなところにいるなんて何かおかしい。
「やあ、クローディア」
「あっ、お兄ちゃん。また会えたね」
クローディアの表情は冴えなかった。瞼には泣き腫らした跡があり、目の前に置かれたオレンジジュースには口をつけていなかった。
俺はクローディアの対面に座った。
「ただごとじゃなさそうだな。何があったんだ?」
「うん……ママがギルドに連れていかれちゃったの」
「ギルドに? またどうして?」
「ザ・リッパーの正体がママなんじゃないかって……絶対にママじゃないのに……」
話を聞くところによると、屋敷で召使いが血液のついたドレスを見つけ、そのドレスがクローディアの母のものであったためギルドに連行されていったのだという。
ザ・リッパーも金髪と碧眼の持ち主だった。雰囲気は全く違うが、どことなくクローディアに似ていなくもない。
「お兄ちゃん、私の依頼を受けてくれない?」
「依頼って言っても……昨日の殺してほしいってやつだろ?」
「うん。駄目?」
「駄目だ。いくらなんでもそんな依頼は受けられない」
「でも、私のせいでザ・リッパーが……もう私には止められないの」
どうやらクローディアはザ・リッパーについて何か知っているようだ。
俺はコーヒーとサンドイッチを注文し、それらがテーブルに届けられるまで何もしゃべらなかった。
ようやく注文していたものが運ばれてくると、サンドイッチの一つをクローディアにあげた。腹が減っていたのか、彼女は頬張ってすぐに平らげてしまった。
「もしかして、クローディアがザ・リッパーなのか?」
クローディアは曖昧に首を傾げた。
「ザ・リッパーは私の中にいるけど、違う場所にいるの」
「つまり、二重人格ってこと?」
「うーん、わかんない。ザ・リッパーが表の時のことはほとんど覚えてないの。でも、目が覚めるといつも血塗れだから……」
大まかな事情は理解できた。だからといって、とてもクローディアを殺す気分にはならなかった。逆に、このままザ・リッパーを放っておくわけにもいかなかった。
「よし、わかった。クローディア、ザ・リッパーのことは俺に任せてくれ」
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