第二部

海と潮風

 照りつける日差し、ひんやり冷たい潮風。

 リバースを倒した後、俺とチェリーコードはレアルタでアパートを借りて暮らしていた。

 しばらく依頼は受けていない。今まで報酬を溜め込んでいたため、少しくらい豪勢な食事をしたところで金に困ることはなかった。


「ねぇ、バース、海に行きましょうよ」


「海ならアパートからでも見えるだろ。あちぃよ」


「違うわよ、海で泳ぎましょってこと。せっかく新しい水着を買ったんだし」


「んー、行くか」


 わざわざ太陽の下に出るのは気が引けたが、チェリーコードの水着姿を拝めるなら仕方ない。

 俺は重い腰を上げてハンモックから飛び下りた。

 レアルタでの生活には満足している。

 殺しをやめて気持ちにゆとりができたし、チェリーコードもアパートで家事をしてくれるようになった。一つ不満があるとすれば、チェリーコードの作ってくれるものが魚料理ばかりということだ。

 坂を下り、海水浴場に到着。ちらほら泳いだり日光浴をしている姿が見える。どれも観光客だろう。

 このくそ暑いのに皆よく平気だな。俺は身体が怠くて立っているのがやっとだ。まるで毒状態にかかっているみたいだ。


「じゃあ、着替えてくるわね。バースは着替えないの?」


「俺はいいや。あちぃし」


 海水浴場に常設された更衣室へと向かうチェリーコードを横目に、俺はパラソルを立ててその下にビーチチェアを組み立てた。

 ビーチチェアに腰かけ、先ほど買った瓶の飲み物を開ける。レアルタでは有名なジュースで、シーラという甘い炭酸飲料だ。

 シーラを一口呷る。

 ああ、平和だ。この世界では依頼さえこなせば働かなくても生活できる。トップランカーになれば一層贅沢な生活が送れる。

 しかし、依頼をこなさなければいつかは金が尽きてしまう。遅かれ早かれ殺しの世界に戻らなければならない。

 シーラの瓶を大きく傾けて飲み干す。

 身体が冷えてきたところで、水着に着替えたチェリーコードが戻ってきた。


「ど、どう? 似合ってる?」


 恥じらいに身をくねらせるチェリーコード。

 シンプルな白のビキニ。胸はでかいというほどではないが、そこそこの豊かさがある。長い髪は結い上げており、いつもとは違う色気を纏わせている。


「いいんじゃないか? 可愛いと思う」


「そ、そう。じゃあ、行きましょ」


「俺は泳がないぞ」


「海辺を歩くくらいならいいでしょ」


 チェリーコードに手を引っ張られながら、このまま今という時が永遠に続けばいいのに、と思った。

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