ギルド

 正式にパーティーを結成すべく、俺とチェリーコードはギルドを目指していた。

 チェリーコードによると、ギルドでは依頼を受けることができ難易度に応じた報酬がもらえるということだった。この世界では主にこの依頼が生計を立てる鍵となっているらしい。


「着いたわ、ここがギルドよ」


「えっ、これがギルドなのか。城だと思っていた」


「お城よ。トップランクの人間だけがここに住むことができるわ。はぁ……ここに住むのが私の夢なの。ヒーラーの私にはとても叶えられそうにない夢だけどね」


「そんなことないって。俺だって絶対無理だと思っていた夢が叶ったし、絶対に叶えられないことはないって」


「ふふふっ、じゃあ、バースも頑張ってよね。私の仕事はあなたを治すことなんだから」


「そうでした……死なないように精進するよ」


 門の両端で像のごとく微動だにしない衛兵たちを通り過ぎ、いよいよ城の中へと足を踏み入れる。

 予想とは裏腹に、ギルドの内装は高級ホテルのロビーのようだった。

 中央には受付があり、巨大なモニターがシャンデリアの下にいくつも設置されている。恐らく依頼の情報が掲載されているのだろう。受付の左右にはカフェや道具屋が立ち並んでおり、奥にはフードコートのようなラウンジも見える。

 チェリーコードについて受付まで歩くと、メイドのようなドレスに身を包んだ受付嬢が深々とお辞儀した。


「パーティーの登録をお願いします」


「かしこまりました。お二人のパーティーでよろしいですか?」


「はい」


「それでは、お名前とクラスをお伺いします」


「私はチェリーコード、クラスはヒーラーです」


「俺はバース、クラスはバーサーカーです」


 受付嬢は「えっ!」と驚きをこぼした。


「え、えっと、ヒーラーのチェリーコード様とバーサーカーのバース様で登録してよろしいですか?」


「はい」


「か、かしこまりました。では、登録させていただきます」


 受付嬢がキーボードをたたいている間、俺とチェリーコードは顔を見合わせた。


「心配されちゃったわね。まあ、仕方ないわ。ヒーラーとバーサーカーのパーティーなんて前代未聞だもの」


「先が思いやられるな……」


 小声でささやき合っていると、受付嬢がカウンターに何かを置いた。

 手のひらに収まる長方形の機械のようなもの。見覚えがある。いや、まさか異世界にこんなものが――


「お待たせしました、パーティーの登録が完了しました。バース様はギルドへの登録が初めてということですので、スマートフォンを支給させていたただきます」


「……マジか。まさか異世界にもスマホがあるとは……」


「どうかなさいましたか?」


「いや、なんでもないです。続けてください」


「スマートフォンはランクや依頼を確認することができる便利な道具です。特定の依頼はギルドからしか受注できませんが、便利な機能がたくさん備わっていますのでご活用ください。それでは、よい旅を」


 スマホをジャージのポケットにしまい、俺とチェリーコードはギルドを後にした。

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