パーティー結成

 鑑定屋を後にし、俺とチェリーコードは通りの中心にある噴水の縁に座っていた。

 俺のクラスはバーサーカーだった。か弱い女の子に突き飛ばされただけで死にかけたんだ、これから先が思いやられる。

 何より俺の気がかりは、この異世界で死んでしまったら現実に戻ってしまうのではないかということだった。

 夢から覚めるにはまだ早すぎる。せっかく夢が叶ったのだ、スローライフを楽しむなり無双するなりしてみたい。


「これからどうするの、バース?」


「バース?」


「バーサーカーだからバース。名前がないと不便でしょ」


「まあ、そうだけど……はぁ、どうするったってどうしようもないな。死なないように慎重に生きていくしかない。幸い今は平和なんだろ?」


「ええ、平和よ。でも、ランクが上がらないとまともな生活は送れないわ。私もせっかく街に出てきたけど、もう田舎に帰らなきゃいけないのかな……」


 チェリーコードの言葉でさらに気分が沈む。

 ランクなんてあるのか。ますますゲームみたいだな。しかし、ランクを上げるということは必然的に戦わなければならない。戦うということは当然死んでしまうリスクがぐっと上がる。

 つまり、俺の選択肢は一つ。


「チェリーコード、俺とパーティーを組んでくれないか?」


 瞬間、チェリーコードは勢いよくこちらを振り向いた。


「本当っ!? 冗談じゃないわよねっ!?」


「じょ、冗談じゃないって」


「本当に私なんかでいいの……? 私、回復しかできないのよ……?」


「回復できるからいいんだ。多分、君がいないと俺は長く持たない。君が必要だ」


 心なしか、チェリーコードの顔が赤くなったような気がした。泣きそうな顔になったかと思うと、今度は明るい笑顔を咲かせた。


「私、必要だなんて言われたのは初めて……うん、私なんかでよければついていくわ」


「改めてよろしく、チェリーコード」


「よろしくね、バース」


 俺とチェリーコードは握手を交わした。パーティー成立だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る