第一部
覚めない夢
ことの発端は妄想だった。
つまらない高校生活。何もない日常に嫌気が差していた。もし異世界が本当にあったら、なんて馬鹿げた妄想を抱いていた。
そんなある日、俺は夢を見た。
夢にまで見た異世界。そこで俺は目を覚ました。夢の中で目を覚ますなんておかしな話だが、はっきりとそんな感覚があった。
上半身を起こすと、そこが花畑であることがわかった。天国なのではないかとは思わなかった。ここは異世界でありただの夢ではない、という妙に確信めいたものがあった。。
予感通り、俺がこの夢から覚めることはなかった。
夢の中で眠ってみても、目が覚めると同じ花畑にいる。何度か試してみても、一向に夢から覚めることはない。
いや、もしかしたら、これは夢ではないのかもしれない。胡蝶の夢という話があるくらいだ。これが実は現実で、今まで現実だと思っていたものが夢だった、という可能性もある。
いずれにせよ、俺にとって異世界への転移は都合がよかった。
ここには社会のしがらみなんてないはず。俺の好きに生きてやろう。俺は自由だ。
大きく息を吸い込んで叫ぼうとすると、すすり泣きが聞こえてきた。立ち上がって周囲を見回すと、花畑から少し離れた池のほとりで少女が膝を抱えていた。
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