第3話 違和感

今すぐに部屋中を乱射してもいいのだが、そうなると後処理に困ってしまう。どうやって見つけ出そうかと考えながら先程仕入れてきた四十七番を使用する。

四十七番の効果により大きく削られたメンタル値が少し回復し、昂っていた気持ちがほんの少しだけ安らいでくる。


「ふぅ、危うくヤツの術中に嵌るところだった」


焦っても仕方ないと思い、先ほどまで飲んでいたエールの容器を手に取る。四十七番とエールの効果でメンタルはだいぶ回復するはずだ。

重さからしてまだ数口分は残っていた。マーケットに出かけていたのは十分ほどで部屋に残していたエールは未だに冷えていた。


俺はそのエールを一気に……





飲み干すことはできなかった……





いや、口をつけることすらできなかったのだ。





エールの容器から伝わる圧倒的な違和感に気づいてしまったのだ。全身の毛が逆立ち、嫌な汗がにじみでる。

まさか!?

いや、まさかというのはおかしい話だ。俺は知っていたはずだ。ヤツらの好物がエールであることを……

脱出困難な容器に自ら入り込む、それはヤツが罠に嵌ったわけではないのだ。この精神攻撃の効果は絶大だ。俺は今後一生、「エールの容器の中にはヤツがいるかもしれない」というトラウマを抱えることになる。

強力な武器を手に入れ完全に油断していた。

ヤツのほうが一枚も二枚も上手だった……


そして、ヤツがいる……。ヤツは今も俺の精神を完全に破壊しようと容器の中で暴れ狂っている。


いや、本当に先ほど遭遇した個体なのか?もし違っていたら恐怖に怯える夜になるだろう。


容器の中を覗き込んで確認するか?


無理だ……。俺は“ハンター”の銃口を容器に向け引き金を引いた。


強力無比な“ハンター”が一瞬にしてヤツを絶命させる。確認しなくてもわかる、“ハンター”に敵うヤツなどいないのだから。

ヤツを殺した……。


しかし勝利したわけではない。


圧倒的な敗北だった……

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