第5話 会社の喫煙所も危険がいっぱいだ!
俺の名前はFK。アニメ好きのしがないサラリーマンだ。
今回も会社のエピソードが続く。
仕方がないことだ。
俺は基本的に家と会社を往復する日々を送ってるわけだし、サラリーマンの大半はそうであろう。
ところで講釈になるが、仕事をするフリというのは基本的に1時間が限界だ。それ以上は本当に仕事が入ってきてしまう。俺の仕事の大半は同期のEさん(女性)がやってくれている。彼女には感謝しかない。仕事をサボる俺を許容し黙認してくれているのだ。諦めはつまり寛容である。ありがてぇ、ありがてぇ。
そんな感慨にふけりながら、俺は喫煙所でアイコスに電源を入れていた。
最近思うのだが、こんなに実話を書いてしまっていいのだろうか。名前も会社の人が見ればすぐに分かりそうなもんだ。まぁ誰も見ていないだろうし構うもんか。
「寒みぃな、K」
「あ、お疲れさまです」
声をかけてきたのはT部長だった。この方、数年前に飲酒運転で免取り&降格人事を食らったが、いつの間にやら部長職に復帰した猛者である。
ちなみに弊社の職務規定では飲酒運転で警察の厄介になっても人身事故でなければセーフだ(最悪でも降格・降級であり諭旨解雇にさえあたらない)逆に言えば人身事故を起こすと、どんなに軽い交通事故でも問答無用で懲戒解雇である。
俺は会社の職務規定には詳しい。暇さえあれば読み込んでいるのだ。当然だろう。仕事をサボるというの高度な頭脳戦でもある。仕事をしないという覚悟は、いつ解雇されるか分からないというリスクも背負っているのだ。(解雇の)境界線を理解しなければならない。
前置きが長くなったが、前科持ちの部長が手を震わせながらアイコスに手をかけていた。外は寒い。
「K、最近どうだ?」
「そうですね。最近、よく思うんですけど俺、白髪が増えたなって」
「そうか?」
「ええ、あんま目立たないんですけど横なんて結構白いのが混じってきてますよ」
「ああ、そうだな」
俺がサイドの髪をかきあげて見せるとT部長も納得したようである。
「部長は髪染めないんですか?」
「昔は染めてたけど面倒くさくなってな」
部長はロマンス・グレーの髪が目立つ。ハゲとは無縁だな。
「まあ、染めるならいっそ灰色にしちまったほうがいいよな。今から黒くしてもおかしいだろ」
「シルバーグレーみたいな感じですか」
「そんな感じだな。後は家で簡単に染められるとイイんだが――」
部長が途中まで言いかけて、その視線の先を追いかけると専務がいた。
「よう、お疲れ」
お疲れ様デス、と俺と部長は返した。タバコを吸いにきた専務だったがタイミングが悪かった。俺と部長は一瞬でアイコンタクトを交わし、アイコスを仕舞い込んだ。
「じゃあ、まあそういうことで」
「はい」
もう行くのか、と専務のお言葉を微笑で受け流し、俺と部長は歩き出した。
髪を染めるだ染めないのだ、そういう次元の話はやめにしよう。年齢とともに人は多くのものを得て、また失うのだ。髪がない人も大勢いる。専務も仕事と引き換えに失ったのだ、髪を。
ツルツルである。眉毛もない。眼光鋭く声もデカイ。ゆえに反社会勢力なのでは? と俺は勘違いしている。
鈴羽のおっぱいに癒やされよう。居場所を失った俺はそう決意した。
つづく。
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