第4話 会社の喫煙所が俺の住処だ!


 俺の名前はFK。アニメ好きのしがないサラリーマンだ。


 そんな俺がいつものように会社の喫煙所で鈴羽のおっぱい画像を収集していると、同じ部署のNさんが鼻歌交じりにやってきた。


「よう、K。やってんな」

「お疲れさまです。サボらせていただいてます」


 毎度のことだが俺は仕事をしていない。仕事をしているフリと喫煙所でアイコスをふかしているだけ。そして、このループで一日が成り立っている。ついでに言うと、鈴羽のエロい画像も集めているが。


 メビウス・ライトに火を点けるNさん。会社で仕事をせずに給料をもらう方法を熱く伝授してくれたNさん。イケメンで一度や二度ではない社内不倫を経験している(つい最近もあった)Nさん。社内不倫どころか奥さんも不倫していたことが判明した(ここ数日の出来事だ)Nさん。この人これで、課長補佐である。


「K、最近どうよ?」

「そうですねぇ、ここのところずっと思ってたんですけど……俺たちよくタバコを吸いに喫煙所へ休憩しにくるじゃないですか?」

「まあな」

「でもタバコって、一般的には健康寿命を縮めるって言うじゃないですか?」

「そうだな」

「そう考えると、俺たちって命削って休憩してるんだな、とか思うんですよね」


 俺がしょうもないことを言い放つと、Nさんはなにかを察したのか、なぁKよとタバコの灰を落とした。


「そんなことより、そろそろ結婚でもしてみたらどうだ?」

「……ケッコン?」


 それは、俺がこの世で悪魔の信仰として忌避し、また唾棄すべき因習として憎悪してきた言葉だった。


「あれなんていいんじゃないか? 〇〇支店の、Sさんとかどうだ? 歳近いだろ?」


 俺は急に白けてきた。なんか匂うなこの状況。


「ここのとこ、仲良いんだって聞いてるぞ。カナちゃん、カナちゃんて叫んでたって聞いてるぞ」

「それ、Yにですか?」

「まあ、そうだな」


 任せろ、Sさんとの飲み会ならセッティングしてやるよ、とNさんが強引に話を進めてくるので、俺は自分の性的趣向を改めて披露しなければならなかった。


「俺、おっぱいが揺れているような子が好きなんですよ」

「ああ、そうだったな。俺はスレンダー系が好きだが」

「あと、リストカットしてるような闇の深い子が好きなんですよ」

「リス……なんだって?」

「リストカットです。手首とか、太もも切るやつです」


 俺はおっぱいの大きな闇属性が大好物なのだ。


「なぁK……」

「はい」

「俺が知る限りだが、そんな子は風俗にしかいないぞ」


 知ってる。俺も風俗でしか見たことない。


「そろそろ行くか」

「はい」


 午後三時過ぎ。外に長居できない季節。俺はNさんの後に続いて歩きだした。


 俺たちは今日も仕事をしていない。


 つづく。

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