第3話 会社の電話は危険がいっぱいだ!


 俺の名前はFK。アニメ好きのしがないサラリーマンだ。


 そんな俺がいつものように鈴羽のおっぱいを書け! とスマホで絵師に無茶ぶりをしていると、会社の電話が鳴った。


 俺はアホなりに会社では本店のとある部署に生息している。当然、仕事はしてない。


 ここで解説を挟むが、会社の電話は大きく分けて二つある。顧客や取引先からかかってくる固定電話(大抵、ほぼ全ての職員の机の上にある)と、支店や渉外担当者からかかってくるガラケーだ。


 今回鳴ったのはガラケーのほうだ。無視だ、無視。


 俺が聞こえないふりをしていると、同期のEさん(女性)が出ろよ、と目配せをしてきた。


 言いたいことは分かる。鳴り響くガラケーは俺とEさんの中間地点に置いてあり、Eさんは熱心に仕事をしているのに対して、俺は喫煙所に避難しようとしているのだ。分かる、分かるよ。そんな冷たい目で見るな。俺が出るべきだろうさな。


 ファック! 出ればいいんだろ、と無言の圧力に屈してガラケーを手に取った。表示を確認すると〇〇支店からだった。


「はい、〇〇部、Kです」

「もしもし、〇〇支店のSです。Yさんいらっしゃいますか?」

「ああ、いるよ。代わるね」


 俺は前の席で適当に仕事をしていると思われる後輩のYにガラケーを渡すため、声をかけた。


「おい、Yよ電話だ」

「え、誰っすか?」

「〇〇支店のカナちゃんだ」

「誰っすかそれ?」

「カナちゃんだよ、カナちゃん! 出れば分かる。ほら」


 Yの野郎にガラケーを渡し、さて鈴羽のエロ画像でも探すかと意気込む俺。


「代わりましたYです。はい、ああ、なんだSさんじゃないですか! いや、いやいや、Kさんがカナちゃんカナちゃん言ってるから、誰かと思いましたよ! そうなんすよ。はい、はい」


 Yのでかい声が耳障りだ。


「ええ、はい。え? あ、はい、ちょっと待ってください。聞いてみます」


 Kさん、ちょっといいっすか? とYが振り返って尋ねてきた。


「なんだよ、いま忙しいんだよ」


 鈴羽のエロ画像の収穫が芳しくないんだよ。


「Kさんの下の名前って、なんでしたっけ?」


「なんだそりゃ。そんなの決まってんだろ。キリトだよ、キリト」


「え? そんな名前でしたっけ?」


 そんなカッコいい名前なわけないだろ。どこの黒の剣士だよ。俺はYを無視して鈴羽のエロ画像の収穫に勤しんだ。


 しばらくしてYがガラケーを返してきた。


「Kさん、さっきの電話でSさんが言ってたんすけど」


「なんだって?」


「いや、KさんがSさんのことカナちゃんって言ってたじゃないですか、それが伝わっちゃったみたいなんすよ」


「ん? おう」


「だからSさんもKさんのこと下の名前で呼びたいから、下の名前教えてくれって話だったんすよ」


「ちょっとなに言ってるか分からない」


 俺は鈴羽のおっぱい画像を探す、真理を求める哲学者のように。そして貧困のない世界を祈った。


 つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る