第2話 親友からの電話はいつも緊張の連続だ!

 

 俺の名前はFK。アニメ好きのしがないサラリーマンだ。


 そんな俺がいつものように鈴羽でハァハァしている時、スマホが鳴った。


「くそ、なんだよ、今いいとこなんだよ!」


 俺は相手を確認した。前回のように数少ない親友を失うわけにはいかない。

 スマホの表示をうかがうと、長年の親友の一人、テリーだ。問題ない。フリックだ。


「もしもしKちゃん? テリーだよ」

「おう、テリーじゃねぇか。おめぇさん、久しぶりだな」


 陽気な声が届いた。大丈夫。今の所、イヤな予感はしない。


「テリー、知ってるか? 親友が結婚するらしいぞ」

「うん、聞いてるよ。そんな気はしてたけどね」


 テリーの言葉に若干の引っかかりをおぼえたが、話がややこしくなりそうなので無視した。


「なぁテリーよ。俺たちさ、結婚したらチンポ切るって誓い合ったよな?」


『結婚したらチンポ切る同盟』の話を持ち出すと、テリーはそういえばそんなものもあったね、とかぬかした。


「テリーは結婚しないよな? そうだよな?」

「うん、僕は結婚しないよ」

「ありがてぇ、ありがてぇ」

 神に感謝した。魂と思想を共有する同志がそこにいた。


「でもKちゃんは結婚したほうがいいと思うよ」

「はぁ? 結婚なんかしたら死ぬぜ?」


 思えば俺は超絶結婚否定派だ。過激派代表と言ってもいい。今でも地獄けっこんへの道は善意の言葉で敷き詰められていると考えている。それにチンポは切りたくない。


「そういえばKちゃん、憶えてるかな?」


 たいていのことは忘れちまってるよ、とシニカルに応える俺に、テリーは語りかけてきた。


「高校の時さ、Kちゃんに頼まれてIちゃんに会いに行ったことあるじゃない?」

「なんだっけ……?」


 なんのことだかさっぱり忘れていた。


「いやいや、Kちゃんが受験で忙しい時にIちゃんから電話があったから、代わりに僕に会いに行けって言ったじゃない」

「そうだっけ?」

「忘れてるの? 僕はハッキリ憶えてるよ」

「ああ、それで?」

「それで僕も訳がわからないまま指定のコンビニまで会いに行ったんだけど」

「ふむふむ」

「Iちゃんに、なんでアンタが来んのよって怒られたよ」

「そりゃそうだろ、Iちゃんは俺に用事があったんだろ? それがテリー、おめぇさんが会いに行ったら怒るよ」

「まぁ、そうなんだけど。Kちゃん、なんであのとき自分で行かなかったの? 僕、Iちゃんから雰囲気で何の話だかわかるでしょ? って言われて初めて気がついたよ」

「悪い、たぶん美人局だと思ったんじゃないかな?」

「つつもたせ? 知り合いにそんなコトしないでしょ」

「そうか? でもその節はメンドウかけたな」

「いいよ、僕は僕でIちゃんからちょっと殴らせてって殴られただけだから」


 テリーは嬉しそうだった。女性からの暴力はテリーにとってご褒美タイムなのだ。あくまで我々の業界での話である。


「それで今更だけど、Iちゃんの話ってなんだった?」


 俺は受験戦争の準備に忙しく、いまの今までそんな過去があったことをすっかり忘れていた。


「さあね、Kちゃん。僕にはわからないよ」

「そうか、まあいいや」

 

 しばらく昔話を続けて電話を切った。

 鈴羽のおっぱいは今日も元気に揺れていた。俺は股間に触れ、チンポがついていることを確認し、世界の平和を願った。


 つづく

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