Stage4 思考と選択の遊戯(ゲーム)
そうは言っても “player”であることは、おれが決めることができるんだ。やめてしまうときもそうだ。やるかやらないか、進むか引き返すか、おれは事あるごとに立ち止まって考える。極端な話、ゲームとはそうした思考と選択の遊戯だ。
そう考えれば、現実とは無数の可能性からただ一つの正解を選び取り続けるゲームということもできる。正解し続けることが難しい過酷なゲーム。勝者のない、ゲームオーバーが約束されたゲームだ。
それに対し、ここでの選択肢は限られたものしか用意されていない。だからこそおれは迷うことなく次々と選択を重ね『迷宮』を奥に進み続けることができるのかもしれない。
考えて、選び、進む。
選択肢に行き当たる。
考えて、選び、進む。
選択肢――。
考えて、選び、進む……。
次々と選択肢をクリアしていく軽快なリズム。このリズムが気持ちを形作る。軽快な気分。いい気持ちだ。“player”をやめる? そんな理由は見つけられない。ここにいる限りすべては順調だ。
『悪意』が形を成したこの迷宮は、ここに暗闇と“player”を閉じ込めておくために存在している。数百の小部屋、数千の分かれ道――、縦横にはしる無数の通路。ここから地上に至る通路はわずかに一本だけ。狂った王の命令で、巨大な岩盤にこの地下迷宮をうがち抜いた古の坑夫たちが、地上とこことを行き来したその通路だ。“player” はそのひとつきりの道すじを求めて迷宮をさまよっている。
曲がりくねった石づくりの通路は暗く、いくつにも枝分かれしていて持っているあかりだけでは先を見通せない。曲がり角のさきや扉の向こうの小部屋、光の届かない暗がりからやつらの気配を感じる。手にはナイフがひとつきり。
いやな感じだ。
でも、おれは走るのをやめられない。立ち止まればおしまいと分かっているから。いくらナイフを持っているからといって、仮に銃を持っていたとしたって、迷いはおれに隙を生む。やつらにつけこまれ、取りつく手がかりを与えるのと同じだ。そうなってしまうとおれもたちまちやつらの仲間入りだ。暗い地の底に閉じ込められながら温かい魂を渇望する凍えた亡者に堕してしまう。それがいやなら走りつづけるしかない。
疑問? 分からないことはたくさんあるが問いかけたりはしない。進み続ければおのずと分かってくることだ。第一、これは自分ではじめたことなのだろう?
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