第7話
事務所でめぐちゃんを拾って、俺達は今、スペースポートへ向けて移動している。この町を襲っているスペースモンスターのゴブリンは町を破壊し、人を襲い、やりたい放題暴れまくっている。それを横目で見ながら、俺達はただひたすら前進していく。
「・・・博士・・・」
『みなまで言うな、助けられる命には限界がある、いちいち助けていてはわし等が逃げ遅れるぞい、こいつ等はまだ尖兵じゃ、これからもっと数が多くなるぞ』
『この町は、いったいどうなってしまうのでしょうか』
『お嬢ちゃん、この町、っと言うよりこの惑星全域で似たような光景になっとるはずじゃ、地球連合軍が各所で戦っておるようじゃが、じきに脱出するはずじゃ、わし等も急ぐぞ』
「え!?、地球連合軍が脱出してくるって、連合軍でも対処しきれないのですか」
『ああ、そうじゃ、この星に駐屯しとる連合軍の規模など、たかが知れておる、この惑星ミズンは言ってみれば辺境惑星じゃからな、あまり重要視されとらんのじゃ』
まあ、そうだよな。地球連合軍っといっても、俺達と同じ人間だからな、出来る事には限度があるか・・・。
スペースポートまで、もうあと少しという所まで来た。ここまでスペースモンスターの妨害は無い、順調だが気を引き締めていこう。そう思った時、スペースポートの方角から何隻もの宇宙船が飛び立って行くのが見えた。避難してきている民間人を乗せて飛び立って行った様だ。俺達が乗る船は残っているだろうか、急がなくては。
スペースポートの入り口ゲートが見えてきた、そこには地球連合軍のアサルトアーマー、「ロングソード」が何機か警護していた。その横を通り過ぎようとしたとき、地球連合軍のアサルトからスピーカーで声を掛けられた。
『今更どこ行こうっての、船なんてとっくに出ちまったぞ』
俺もスピーカーに切り替えて返事をする。
「余っている船は無いんですか?」
『残っているのは俺達が脱出する船だけだ、言っておくが民間人を乗せる余裕は無いぞ、俺達はぎりぎりまで踏みとどまって仲間を拾ってから脱出するからな』
「そうですか、わかりました」
う~む、どうしようか、脱出する船は残っていないそうだ。無線に切り替え、博士に相談してみる。
「博士、どうしましょうか」
『う~む、そうじゃな、とりあえず宇宙船発着場まで行ってみるかの』
「わかりました」
俺達はスペースポートのゲートを潜り、宇宙船発着場に向かう。その途中で逃げ遅れた人達がまだ大勢残っていて、地球連合軍から助けが来るのを待っている人達がいた。かなりの人数だ、まだこれだけの人が取り残されていたのか。
「博士、地球連合軍からの救援はいつ頃来るのでしょうか」
『わからん、軍のトップが逃げ出しておるからのう、あまり期待せん方がええぞ、それよりも見ろ、あそこに輸送船が一隻展示されておるじゃないか、あれを使うぞい』
「ええ!?、あれは確か退役艦だったはずですけど、だから展示されていたのでは」
『あれを使うしかあるまい、わしよりも年寄りじゃろうと動いてもらわねばならん、お嬢ちゃん、おぬしはブリッジに上がり起動準備、わしはエネルギーポンプ車を探してもって来る、川田君はショートソードを船の格納庫へ収容させておくんじゃ』
「このアサルトアーマーを持っていくのですか」
『そうじゃ、護衛機も無しに宇宙へはとても出れんわい、何があるかわかったもんじゃないからの』
「はい、わかりました」
俺達はそれぞれ指示された事をしていく、めぐちゃんはこの船のブリッジに上がっていき、俺は船の格納庫へこのアサルトアーマーをもっていき格納する、博士はエネルギーポンプ車を探してもってくるみたいだ。
しばらくして、博士がエネルギーポンプ車をもってきて、この船の給油口にエネルギーを注入しはじめた。その時、めぐちゃんが言った。
「一文字博士、この船で逃げ遅れた人達を収容して脱出しませんか」
「・・・お嬢ちゃん、わかっておるじゃろう、この船は小型船じゃ、とてもあそこにいる大勢の人達を全員乗せる事などできるわけなかろう・・・酷なようじゃが、わし等だけでも逃げねばなるまい・・・」
「・・・はい・・・だけど、できるだけ乗せてあげられないでしょうか・・・」
「・・・お嬢ちゃん、この船は退役艦じゃ、出力はだいぶ落ちとる、とても定員分の人数の人を乗せて飛び立つことなどできんよ・・・アサルトは護衛の為に降ろせんしの・・・」
「・・・・・・」
その時、逃げ遅れた人達の何人か、こちらのやっている事に気がついて、こちらに向かって走って来た。まずいな、パニックにならなければいいのだが。
「おい!あんた等!何やってんだ!その船は退役艦だぞ、飛び立つ訳ないだろ!」
「そんなの、やってみなければわからんじゃろう、おぬし達も乗るなら手伝え」
「あんた等正気か!こんなポンコツ動く訳ない!我々と一緒に救援が来るまで待っていよう」
「すまんが、わし等はこの船で脱出するつもりじゃ、乗るのなら手伝ってもらいたいの」
「・・・勝手にしろ!どうなっても知らんぞ!」
逃げ遅れた人達は言いたい事だけ言うと、さっさと行ってしまった。やれやれ、混乱に乗じて何かやってくると思っていたのだが、何とか事は収まったか。どうやらパニックは避けられたようだ。船のエネルギー注入も無事済んだみたいだ。俺達はこの退役艦の輸送船に乗り込み、ブリッジに上がる。いよいよ出航か、うまく飛びたてますように。
重機動戦記ショートソード 月見ひろっさん @1643
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