第3話

 今、俺の目の前ではアサルトアーマーどうしの模擬戦が繰り広げられている。どちらのパイロットも腕は確かな様で、どちらも一進一退、っという感じだ。


二足歩行車両、通称アーマーと呼ばれている人型の重機は、全高8メートルほどの人が胴体部分に乗り込むタイプの人型重機だ。元々はただの建設現場や工事現場などで活躍する重機扱いで、宇宙暦80年代頃、他惑星への人の入植の為、地ならしや建設現場や工事現場などで大いに活躍した。性能も向上した新しいタイプも次々と開発されていって、建設現場で見ない事はないほどだったのだが・・・。


アーマーが犯罪に使われる様になった為、それらに対抗する為に地球政府や地球連合軍はアーマーに武装を施した、新基軸のまったく新しい二足歩行戦闘車両、通称アサルトアーマーを開発した。兵器の技術は日進月歩と言うが、あっという間に高性能なアーマーを量産していった。


犯罪にアーマーが使われたからアサルトアーマーが出来たなんて皮肉な話だな。宇宙では宇宙海賊なんて輩までいるらしい、ほんと、同じアーマー乗りとして憤りを覚えるよ。


俺も二足歩行車両、アーマーの免許は持っているけど、この模擬戦ではいい参考になるかもしれない。まあ、ただ見ているだけなんだけれども。


アサルトアーマーのひとつ、ロングソードという機体が、地球連合軍が次期主力アサルトアーマーになるのか?、と言う実験の為の模擬戦らしい。今のところはロングソードの方が押している様に見受けられる。やはり新しい機体だけあって性能差は歴然としているな。


ペイント弾を当てているのだが、シールドできちんと防いでいるのがショートソードの方だ、しかし、相手のロングソードも同じようにシールドでしっかりペイント弾を防いでいる。


「ええーい!お嬢ちゃんは何やっとんじゃ!ペイント弾ぐらい避けて攻撃せんか!」


『無茶言わないで下さい!避けるだけで必死なんですよ!』


ショートソードのパイロットから無線通信が聞こえてきた、かなり焦っている様だ。しかし、ショートソードってのは確か小回りがきくタイプのアサルトアーマーじゃなかったっけ。機動性でかく乱すれば、いくらかはマシな模擬戦になるんじゃないかな。まあ、素人考えだけど。


ロングソードが放つペイント弾が容赦なくショートソードを捉えていく、そして模擬戦を監督していた仮設テントの指揮所でなにやら無線のやり取りと話声が聞こえてきた。


「カークス大尉、ショートソードの被弾率が50%を超えました」


「よし、模擬戦終了、ショートソードは大破と見なす、二人とも、模擬戦終了だ、アサルトを降りろ」


『了解!』


『りょ、了解しました』


お、どうやら模擬戦が終わったようだぞ。軍配はロングソードに上がったようだ。まあ無理もない、そもそも基本性能で負けているからな。流石は次期主力機、っと言った所か。


ロングソードの機体から男の人のパイロットが降りてきて、こちらに来て一文字博士に声を掛けた。


「な、だから言っただろ、ショートソードとロングソードじゃ性能差があるんだよ、ま、この結果は当然だろうから俺のスコアには加算されないだろうけどな、はっはっは」


「おのれ~、調子に乗るなよ若いの、アサルトの性能のおかげだと言う事を忘れるでないぞ」


「はいはい、わかりましたよ、それじゃあ俺はこれで」


ロングソードのパイロットは指揮所へと行ってしまった。そしてショートソードのパイロットの女の人もこちらへとやって来た。


「すみません、一文字博士、負けてしまいました・・・」


「う~む、なぜじゃ、なぜわしが改良した内蔵武器を使わんかったのじゃ、スパイラルナックルにブレストビーム、ショルダーミサイルなどあったじゃろうに」


「あ、あんな実戦的な装備!模擬戦で使える訳ないじゃないですか!既存の携行武器だけで対処しなければならないのですよ!それに、あんなカリカリにチューンナップした機体!動きがピーキーすぎて扱い辛いったらなかったですよ!」


「わ、わかった、わかった、お疲れじゃったな、今日はようやってくれた、ゆっくり休むとええ」


「・・・はい、それでは失礼いたします」


ショートソードのパイロットも指揮所へと行ってしまった。負けて悔しいだろうな。さてと、俺もそろそろ帰ろうかな、いいものも見れたし。会社へ帰ろうと思い、踵を返そうとした所で、一文字博士からふいに話掛けられた。


「電気屋、どうじゃった、今の模擬戦は」


「はあ、そうですねえ、素人の意見なんですけど、もう少しショートソードは小回りが利くのを生かして接近戦に持ち込めば何とかいけたかもしれませんね」


「・・・ふ~む、」


「射撃戦といっても距離を詰めていければ命中率も上がるのではないかと・・・」


「・・・うむ、」


「まあ、素人考えですけどね、参考にならないと思いますよ」


「お前さん、何と言う名前じゃったかの」


「川田です」


「そうか、川田君と言うのか、お前さん、なかなかいい目利きをしとるようじゃな」


「まあ、俺もアーマーのライセンスぐらいは持っていますからね」


「ほ~う」


その時、突然基地の方から警報サイレンがけたたましく鳴り響いた。みんな何事かと辺りは騒然となり、指揮所にいる人達は無線を使ってなにやら基地とやり取りをしている様だ。


「な、なんじゃ?警報?何があったんじゃ」


「さあ?わかりません、何でしょうか?」


その時、一人の兵士が上空を指差してこう言った。


「おい!何かわからんが空から何か落ちて来てるぞ!」


上空を見上げると、何かよくわからないが、巨大なアンモナイトの殻の様な何かが無数に落下してきているようだった。何だあれは?よくわからんがただ事じゃない気がした。










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