第2話

 俺は会社を出て、電気自動車のエレカーを走らせる事30分、目的地の地球連合軍が駐屯している基地に着いた。ゲートの入り口に衛兵のような見張りの人がいる。俺は入り口手前で車を止め、衛兵に挨拶する。


「こんにちは、今川電気設備工事店ですけど、連絡をもらってやってきました」


「ああ、今川電気さんね、お話は伺っております、どうぞお通り下さい」


門衛の人は車の通行止めのバーを上げて、何かを渡してきた。


「これを付けて下さい、簡易身分証です」


「あ、どうも、第二演習場はどこのあたりになりますか」


「第二演習場はこの道を真っ直ぐ行って突き当たりを左に曲がると見えてきますよ」


「わかりました、ありがとうございます、それでは」


簡易身分証を首から提げて車をゆっくり走らせる、施設内は徐行運転だ。急いで来てほしいという事らしいが、慌てずゆっくり移動する。


さすが地球連合軍の基地だけあって、広大な敷地面積だ。いろんな施設があるみたいだし、格納庫にはきっと戦闘用の二足歩行戦闘車両、アサルトアーマーが格納されているんだろうな。外からは見えない様に基地の外側に壁がつづいている。


しばらく道をまっすぐ行って、突き当たりまで来た。ここを左だったな、車の進行方向を変え左折する。すると、見えてきた、広い運動場の様な土がむき出しの演習場が目に入った。あそこかな、第二演習場ってのは。


演習場の入り口近くまで来て、車を止める。他にも何台かのエレカーが駐車していた。中には高級感のあるエレカーまであった。何かお偉いさんでも来ているのかな?まあいいや、仕事、仕事、俺は車の後ろのドアを開け、電気工事士が身に付ける腰道具を腰に巻く、腰道具には色んな工具がセットされている、電工ナイフにペンチ、プラスドライバー、他にも色んな物がセットされている。・・・よし、ヘルメットも被り準備できた。車のバックドアを閉めて第二演習場の敷地内へ向け歩き出す。


第二演習場に入ると人だかりが見えてきた。制服を着ている人もいれば、背広を着ている人もいるようだ。なぜか白衣を着ている人もいるみたいだ。近づいて声を掛ける。


「こんにちは、今川電気設備工事店ですが・・・」


すると大勢の人達がこちらを向いた、なんだか緊張してきた。声を掛けると大勢の中から白衣を着たご年配の人がこちらに向かって返事をしてきた。


「おお!よくきた、待っておったぞ!」


「今川電気の川田と申します」


「挨拶はええ、早速問題発生じゃ、このアサルトアーマーが起動せんのじゃ、色々調べたんじゃが、加圧ポンプもバリアブルコンプレッサーも問題無しなんじゃ」


「・・・アサルトアーマーの起動ですか?」


「そうじゃ!」


どうしよう、困ったな、電気工事とは関係ないのだが・・・、俺に出来る事といったら電源の線をもってくるぐらいなのだが。・・・ん?これは?あ!これが原因じゃないのかな。


「あの~、ちょっとよろしいでしょうか」


「なんじゃ?手短にな」


「この電源のコンセントが挿さっていない様ですが・・・」


「・・・コンセント?」


「ええ、これを、こうして、」


俺はコンセントにプラグを挿した。すると二足歩行戦闘車両のアサルトアーマーからウンウンと唸りを上げた。よし、アサルトの起動成功だ。


「お!おお!おおお!よしよし、起動したぞい、よくやった電気屋!これでコンペに出せるわい、ふぉっふぉっふぉ」


・・・何と言うか、俺はただコンセントにプラグを挿しただけなんだが。この白衣を着たご年配の方はこんなイージーミスをしてしまったようだな。


「起動してよかったですね、私に出来ることはこれくらいです、お役に立ててよかったです」


「うむ、ようやった、わしの名は一文字じゃ、おぬし、名は?」


「はい、川田と申します、今川電気設備工事店をこれからも宜しくお願いいたします」


「おお、今川のところの社員か、社長は元気か」


「はい、今は地球へ行っておりますが、社長は息災です」


「そうか、地球へのう、・・・今川とは古い付き合いでの」


「そうでしたか」


なるほど、それでウチみたいな小さな会社に仕事の話が来た訳か。白衣を着ているって事は科学者かな、俺なんかよりも頭がいいはずなのに、コンセントの挿し忘れって結構ある事なのかな。


「どうやら問題は解決したみたいですね、それでは次期主力量産機の性能実験をします、皆様、所定の位置についてください」


「やれやれ、ようやく再開か、俺の愛機、ロングソードの相手は型落ちのショートソードかよ、ま、やるだけやってみますか」


・・・なにやら模擬戦のような事をするみたいだな、集まっていた人達がそれぞれの持ち場に移動していった。


「おい、電気屋、折角だからこの模擬戦を見ていけ、素人の意見も聞きたい、参考までにな」


「は、はい、わかりました」


なんだろうか、模擬戦を見学させてもらえるのか。それはなかなか体験できないぞ、こちらとしてはありがたい事ではあるけど。


「ふん、わしが改良したショートソードに腰を抜かすなよ」


「型落ちしたアサルトなんて勝っても嬉しくないけどな」


「なんじゃと!ショートソードはまだまだ現役じゃ!若いの!お前さんだって訓練兵の時に練習したのがこのショートソードじゃったろうが!」


「そりゃあそうだが、今はこのロングソードに乗ってっからな、こっちの方が性能は上なんんだぜ」


「ふん!性能だけで勝てると思うなよ、パイロットの腕しだいでこいつは化けるのじゃよ、そんなわけで、パイロットの者、ひとつよろしゅうな」


「は、はい、何とかやってみます」


地球連合軍の次期主力量産機のアサルトアーマー、ロングソードに乗っていったのが、威勢のいい若い男の人で、こっちのショートソードに乗るのがこれまた若い女の人のようだ。


この二人が模擬戦をするみたいだな、・・・さて、どうなるのかな?








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