出会い
「・・本日より、第三霊刀士隊に着隊しました。新任霊刀士、近衛桜です。よろしくお願いします。」
学校の教室ほどの会議室で一人、少女は立ち上がり皆に向かって深く礼をした。それと同時に喝采が数秒彼女を包み込む。その間に少女はゆっくりと頭を元の位置に戻してゆく。
喝采が止むと同時に奥の席で鎮座していた上品な顔立ちの男が立ちあがった。そして、バンカラ風ともいえる霊魎院の制服を僅かに揺らしながら、男は近衛桜に近づいて行く。二人の距離が一メートル程度まで近づいたところで男は歩を止め、口を開いた。
「初めまして、私は第三霊刀士隊隊長の
石上はそう言って桜に向かって手を伸ばした。
「よろしくお願いします。」
やや機械的に彼女は石上の手を握った。その手は彼の細身からは想像もできないほど固く、また大きかった。・・思えば握手なんて何年振りだろうか、もはや傷心の記憶をなくした彼女にここ数年の握手の記憶など残ってはいなかったのだ。桜が感傷に浸っていると、石上の隣に座っていた男が急に立ち上がった。派手な髪色、具体的には茶髪で細身の遊び人のような雰囲気の男だ。
「たいちょ~、こんな可愛い女の子の手握れるなんてずるいですよぉ。いいなぁ~。」
馬鹿っぽい口調で言いながら、男は桜のもとに駆けてきた。それと同時に桜の顔はやや赤くなっていた、どうやら「かわいい」と言う言葉に反応したらしい。
「俺は
伊田がそう言うと、桜は石上と握手していた手を離して恥じらい始めた。石上もそれをみて少し戸惑っていた。そんな時。
「おい、伊田、困ってるだろやめてやれよ。」
石上の隣に座っていたもう一人の男が立ち上がり、小走りで三人の元に向かってきた。
「ああ~、すまんすまん、やっぱりイケメンは違うねぇ~。」
言われるくらいには端正な顔立ちの寡黙そうな男だ、身長は百七十五センチメートルくらいで、やや筋肉質。男が伊田に近づくとすぐさま伊田は男に向かって飛びかかり、そのまま彼と肩を組んで桜に向かってこう言った。
「こいつは
陽炎と紹介されたその男は怪訝そうに伊田の手を払いのける。
「・・と言う事だ、まあ色男かどうかはしらんが。」
桜は彼がそういうのと同時に彼の顔を見た、遠目では分からない程度に少し赤みががった髪の色。その色に心を捉えられた気がするのはなぜだろうか。
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