第11話 何か怪しげなアイテム拾ったよ
明日から使える異世界で役立つ英会話
戦闘終了! もっとも、それは戦闘なんていう高尚な命のやり取りではなく、敵モンスターにとっては一方的な虐殺行為みたいなものでしょうが。でもそれでいいんです。あえてモンスターの命も経験値稼ぎという記号化することで罪悪感を隠匿できますもんね。モンスターに基本的人権がないのは、我々労働者に労働基準法がないのと同じようなものです。どちらも見たことないし。ねえ、ほんとにあるんなら労働基準法見せてよ。ねえ。ねえ。
モンスターの人権とやらはこっちに置いといて、ファンタジーRPGにおいてバトル後のお楽しみといえばやはりアイテムドロップでしょう。クモとかトカゲとか、物品を持っていなさそうなモンスターを倒した時に得られる金品を、設定上価値のあるものだとどのように表現するかで世界設定のセンスと異世界物の面白さが評価できますもんね。さて、アイテムドロップの問題点は、パーティ内でどう分配するか、です。人望ヒエラルキーに比例して分配するか、それこそ基本的人権に基づいて平等に分けるか。パーティ内のパワーバランスを保つためにも重要な問題です。
きらり、とてもきれいな伏線の匂いがぷんぷんする指輪がドロップしました。光沢の抑えられた滑らかなシルバーの、彼女のしなやかな薬指にとても似合いそうなシンプルな指輪です。何か、古代文字が彫ってあるようですが……?
・何か怪しげなアイテムを拾ったよ
Lesson 1
「Here you are. This is what you should have.」
「What is this ? I think , Is it a special ring? But ……」
「That is right , But?」
「(In a whisper) I wondered if you would propose to me.」
「What? Did you just say anything?」
「No , Nothing!」
「はい、これ。君が持っててよ」
「これって、指輪じゃない?」
「そうだけど?」
「(小声で)プロポーズするのかと思ったわ」
「ん? いま何か言った?」
「ううん、なんでもないっ!」
……ケッ。
あ、失礼しました。異世界転生者は突発性難聴を発症しがちです。ヒロイン役の美少女の言葉には物語上聞き逃してはならない伏線ワードが含まれる場合があります。一語一句完全網羅お願いします。見てるこちらがイライラしますから。もう、耳の穴かっぽじってよぉく聞きやがれって具合です。ちなみに「かっぽじる」とは耳の穴関連に特化した日本語独特の表現で、漢字では「掻穿る」と表記します。英語にはない表現で、あえて言うならば、指をチョキにして自分の両目を差すあのハリウッド映画でお馴染みのハンドサインが適当なところです。
「え?」と聞き直す表現として pardon? と習った記憶があると思います。「もう一度言ってもらえますか?」的な意味合いを持たせていますが、実際にはほぼ使いません。対話中のタイミングで ah? や un? といった相槌のような発音でも聞き取れなかったんだと汲み取ってもらえます。
本来なら Did you say と聞き返す必要もないでしょう。だって、絶対聞こえているはずですから。どうやったら目の前で対話中にピンポイントで恥ずかしい一瞬を聞き逃せるんですか。そういうプレイですか。
Lesson 2
「Here you are.」
「No thank you. It feels so bad.」
「Here・you・are.! This is what you should have!」
「Ah yeah , I can not hear yoooou.」
「ほら、これやるよ」
「いらない。なんかキモい」
「やるって! 持ってろよ!」
「あーあー、聞こえないー」
here you are とはもはや慣用句化された合いの手のような語句です。「はい、どうぞ」と何かを手渡す時に使います。意味なんて考えなくてもかまいません。対して no thank you は激しい拒絶を意味します。もう触れるのも嫌って空気が顔に出ちゃってるくらいです。柔らかく遠慮したいのなら I am OK くらいに留めておきましょう。
I can not hear you はほんとは聞こえちゃってますよね。だって I can not って言っちゃってますもん。トイレマスターであるあなたの取り扱い方法を完全にマスターしちゃった感のある森で出会った美少女です。おまえの言っていることは理解できないという意味での I can not hear you. なのでしょう。こういう突発性難聴も仲がいい証拠なのかもしれません。
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