第7話 街に着いたとき


 明日から使える異世界で役立つ英会話




 集落です! 村です! 町です! 街です! 城下町です! 城塞都市です! 首都です! 王都です! インターコンチネンタルシティです! 意味なんて知るもんですか! 人が集まるところにはさまざまな物が集まります。それは水や食料といった生きるのに欠かせない物資であったり、手芸生産物や工業製品とか特産物であったり、そして情報や事件などのストーリー展開に必要なイベントであったり。人が集まる街にはそれなりの役割があるものです。


 ファンタジーRPG似の世界観ならば、やっぱり街は冒険の拠点となります。真っ白いシーツのきれいなベッドがある宿泊施設に泊まり、温かい名物料理と地元の銘酒に舌鼓をうつことでしょう。実際の中世ヨーロッパなら積極的に血を吸いに来る虫がいる藁布団に包まって、からからに乾いたパンを豆が浮いた塩のスープに浸してかじるんです。なんと贅沢なことでしょうか。えっ、ストロングゼロとモンスターエナジーのカクテルがあれば何もいらないですって? 質の悪いアルコールに逃げるというのも悪手ではありませんね。ともかく、街で情報を集めましょう。




・街にて




 Lesson 1




 Are you an another world reincarnation player? That is strange! I am also a reincarnation player.


 あなたは異世界転生者ですか? 奇遇ですね! 私も転生者なんですよ。




 異世界転生者があなた一人とは限りません。あなたごときがトラックガチャでSレアを引き当てたことを考えれば、むしろかなりの人数が転生者として異世界にやって来ていると考える方が自然です。一人より二人。仲間は多い方がきっと楽しいでしょう。


 me too と表現すれば、それはくだけた表現となり親近感を演出できるでしょう。しかし me too には相手を下に見る無礼感も含まれますので、「親しき仲にも礼儀あり」の言葉通りに also を使って堅苦しくコミュ障感をかもしてやりましょう。




 Lesson 2




 Who is the most important person in this city? And , Where is the Ma-Oh?


 この街で一番偉い奴は誰だ? それと、魔王はどこにいる?




 街のVIPどころか、みすぼらしい集落の長老や寂れた村の村長だろうとも、いきなりやって来たどこの馬の骨とも知れぬ転生者にあっさり会ってくれるはずがありません。常識ですよ? ですがそこは異世界です。問答無用に直球勝負で行きましょう。こちらは最高最強転生者です。チート利権だって握っています。低レベルNPCごときにへりくだる必要なんてありません。ついでに魔王とやらも支配下に置いちゃいましょう。


 魔王を意味する英単語として Devil や Demon閣下 、Satan などが挙げられますが、どちらも地球の宗教的意味合いが色濃い単語です。いっそのこと Ma-Oh と表現した方が異世界っぽい響きになります。どうせ一瞬で勝負がつくのでどう呼んでもいいですけどね。




 Lesson 3




「Are you sure I have to do , Some catastrophic , Subversive activity in this toilet.」

「Are you OK?」


「こちらのトイレで、何らかの破滅的な、破壊活動をしてもよろしいでしょうか?」

「おまえ、気は確かか?」




 ようやく人間のいる里に降りてこれたようですね。まずはおめでとうございます。Congratulation! ちなみにコングラッチュレイションの長いスペルはゲーマーなら慣れ親しんだ英単語なのでほぼ間違えずにかけますよね。


 are you sure とは口語文において確認の意味でよく使われる慣用句みたいなものです。本当に〜ですか? 的に使用します。それに対してare you OK となると意味はがらりと変わります。おまえ、気は確かか? 君は正気か? てめえ、アタマおかしいんじゃねえのか? などととても友好的歓迎を期待できる状況ではなくなります。まさに一触即発です。あなたの城壁の後門もまさに一触即発ですよね。後門って後門の狼の後門ですよ。他に何があるんですか。Are you OK?

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