第6話 レベルアップしたとき


 明日から使える異世界で役立つ英会話




 レベルアップおめでとうございます! さて、日常生活においてレベルアップ時に頭の中で流れるテーマは何の曲ですか? やっぱり「タタタタン・タッタッターンッ」ですか? それとも「ゥラタタター・ターター・ゥラッタター」ですか?


 そこらにいる魔物を倒したり、職人的なスキルを使用して成功判定を得たり、異世界では何かと経験値を獲得してレベルアップしがちです。まったく、便利な世界ですね。


 しかし気を付けなければなりません。名もなき村人Aだと思っていた通りすがりのおっさんも実は異世界転生者でかなりの高レベル村人だったり、弱小量産型モンスターと見せかけてその中身は異世界転生で強力スキル保持者かもしれません。異世界だからと言って油断は禁物。地道に経験値稼ぎから始めやがってください。




・レベルアップしたとき




 Lesson 1




 I need 25 Experience points to the next Level. I think it is enough to defeat three winpy monsters.


 次のレベルまで経験値25ポイントか。雑魚モンスター三匹でお釣りがくるな。




 次のレベルまであと何ポイント稼げばいいのかすぐにわかるシステムです。これを利用しない手はないでしょう。自分がどれくらい経験値を獲得して、どれだけ成長したのか一目で理解できるなんて、もう便利過ぎます。効率的にレベリングしていきましょう。


 enough to で「十分だ」と余裕の表現をして、wimpy monster と魔物を雑魚キャラ扱いしてやります。もちろん、その魔物は雑魚なんかじゃなく即死級の強敵です。パートナーとなる美少女に余裕を見せつけましょう。あくまでも、謙虚に、です。




 Lesson 2




 Is it so amazing that I am at Level 255

? This is the most bottom of my industry.


 レベル255ってそんなにすごいことなのか? うちの業界じゃあこれでも底辺だぞ。




 レベル99やらレベル999だの、そんなのは単にカウンターがストップしているだけでまったく最強感は演出できません。8bit機の最高数値255と表記するだけでシステム上限界数値に到達した天上感を盛り付けることができます。


 my industry で「うちの業界」と表現します。もちろん、異世界転生のおかげですでに実力は神レベルに達していますので、わざと底辺扱いされてやりましょう。その方が上から目線で見下したときとても気持ちがいいです。




 Lesson 3




 Where is the washlet, bidet-toilet!? My anus seems to break! What is this geyzer power? I, discharge, all!


 トイレはどこにあるんだ!? ウォシュレットだ! この湧き上がる力は何だ? すべてが、終わるぞ!




 例の青紫脈動キノコを喰ったんですね。清潔であることが当たり前の現代人にとって異世界のトイレは受け入れがたいでしょう。異世界転生したみなさまはどうしているんでしょうね。ちなみに「washlet」は商品名です。海外や異世界では通じませんよ。


 どうやら猛毒キノコを食べたせいで「トイレを我慢すればするほど魔力が増幅される」スキルを手に入れたようです。あなたの蠱惑の花園に穿たれた黒点が臨界に達したとき、神をも凌ぐ魔力が放たれるのです。深い森に独り、慟哭しましょう。誰かに秘められた魔力が届くはずです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る