第5話 はじめてのごはんのとき


 明日から使える異世界で役立つ英会話




 肉! いいですよね! どんなに過酷で絶望的な状況にあっても、お肉を食べれば何とかなるって気持ちが盛り上がってきます。


 脂身もこんがりと焦げる寸前までカリッカリに焼き倒した塊にかぶりついたり、向こう側が透けて見えるんじゃないかってくらい薄くスライスした赤身をざっと炙ってどっぷりとタレに沈めて、ああ、もう、たまりませんっ。


 えっ、野菜? もちろん摂っていますよ。お肉を焼くときはいつもたっぷりのサラダオイルを使っています。サラダオイルはサラダですよ? すなわち野菜ですよ? タピオカって原材料がお芋だって知ってますか? すなわち野菜ですよ? あとは野菜教信者のためにアイロンがけしたような薄っぺらいレタスをお皿に敷いておくくらいですかね。


 異世界は現代日本と比較して文化レベルが低いのが一般的です。異世界に暮らす庶民の生活水準もやはり底辺を這うようなものと描写されがちです。庶民の食事はかなり原始的なものになるでしょう。肉を焼いたり、野菜を煮込んだり。調味料なんて概念が存在しない可能性も高いです。手作りパンは美味しそうですけどね。


 森で助けた美少女からお礼として食事をご馳走になるケースもあるでしょう。はたして、ジャンクフードの濃いめの味付けに慣れてしまったジャンク舌の転生者のお口に合うかどうか。甚だ疑問です。




・美少女の手料理が不味かったとき




 Lesson 1




 Hmm, Good. It is a great texture. What to say, Teeth and jaw seem to be trained.


 うん、美味しいよ。すごい食感だね。何て言うか、歯と顎が鍛えられそうだ。




 とにかく褒めることです。これは異世界だろうが、VRワールドだろうが、女の子の手料理を一口食べたからには第一声は「美味しいよ」と言わなければならない、と法律で決まっているくらいです。何でもいいから良い点を探し出しましょう。それも口に入れて咀嚼してすぐに!


 その際に、delicious(美味である)や tasty (風味が良い)でも構いませんが、歯を食いしばりながら搾り出すように発音できるgood(良い味だ)が適当でしょう。


 とにかく、目の前にいる美少女だけがこの異世界においての唯一の情報源となるのです。決して逃してはなりません。




 Lesson 2




「Would you pass me the salt?」

「Salt? Slime extermination salt? Here you are. 」

「Yeah, Use salt to make your cooking more delicious.」

「I do not know that!」



「そこの塩を取ってくれないか」

「塩? スライム退治用の塩のこと?」

「ああ、塩をふりかけると料理がもっと旨くなるんだ」

「知らなかったわ!」




 異世界の庶民の生活水準は押し並べて低い傾向にあります。しかし異世界ならではの謎技術はとても発達しています。とんでもない角度でとんがって発展しています。


 たとえば、この例文にある通りにこの異世界では塩は対スライム用アイテムとしてしか使用されていなかったようです。料理の味付けに活用しようって発想がなかったんでしょう。早速チート利権を見つけましたね。これはもう手放せません。この異世界を、ひとつまみの塩で成り上がっていきましょう!




 Lesson 3




 If I eat thet, I won't die, Right? That is like a blue-violet mushroom walking in pulsating.


 あれ、喰えるかな。青紫色でどくどく脈打ちながら歩いてるキノコみたいな奴。




 あれ、まだ森を彷徨っていたんですか。なかなかしぶといですね。


 しかも何とか食べられそうな獲物まで見つけてしまうとは。ラッキーです。こんな場合、実は強い魔力を持った謎生物とかって伏線であるケースも少なくありません。積極的に体内に摂り入れましょう。対毒判定に成功すれば魔力を獲得できるチャンスです。大丈夫! 火を通せば大抵のモノは食べられます。毒素は熱分解しませんけどね。

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