第3話 スキルを発動させたとき


 明日から使える異世界で役立つ英会話




 異世界転生の醍醐味は何と言ってもチートでしょう。その輝かしい能力を華々しく開花させ、規格外の魔力でレベルの違いをがっつり見せつけてやるのです。それはもう絶対的圧倒的悪魔的実力の差って奴をさりげなくかつ大胆に爆発させます。爆発こそ狂気じみた現代アートです。知ってました?


 ド派手な演出なら何も魔法じゃなくとも構いません。精霊との契約とか、神の秘法とかなんとか、失われた古代技術やら、それっぽいワードにあれっぽいパワーみを付加してやれば何とでもなります。


 何故異世界に転生すると魔法が使えるのかとか、レベル制なのにスキルシステム採用してるんだーとか、そんな些細なことはこの際無視しましょう。使えるスキルはガンガン使っときましょう。それこそ異世界転生者の特権であり、転生により破綻した人格にとって唯一の取り柄なのですから。




・スキル(特殊能力)を発動させたとき




 Lesson 1




 Hmm, It is something like this. Well, How about everyone?


 ま、こんなもんだろ。ええと、みんなどうかした?




 初めての魔法戦闘で超ド級の攻撃力を提示しておいて、「こんなもんだろ」の一言で片付ける世間知らずさと言ったら! ちゃんとeveryone と仲間の存在に気をかけてみせたりするのはもはやノリツッコミの域に達しています。


 天然ってある意味最強なんだって異世界の仲間に再認識させるためにお茶に誘うような軽い口調で発言すると効果的です。




 Lesson 2




 You say, My magical power is abnormal, It means that it is too small scale.


 俺の魔力の規模がおかしいって、それって弱過ぎるって意味だよな。




 ええ、わかっていますよ。ええ、そりゃあもう。あなたの魔力はチートによって極限まで高められ、規格外の威力があることなんて一目瞭然です。あなた自身もそれに気付いているはずです。


 しかし、アブノーマルなんて表現で奥ゆかしさと謙虚さを演出するなんて、なんと計算高いことでしょうか。You say, と一言付け加えることにより「おまえが言ったんだろ」と責任を擦りつける心憎い慎ましやかさも忘れずに!




 Lesson 3




 My right hand is blizzard. And my left hand is furious wind. Based on the contract of the soul, Become a cage of absolute temperature! Eternal・Force・Blizzard!


 我が右手は吹雪、我が左手は猛風。御魂の契約に基づき、絶対零度の檻となれ! エターナル・フォース・ブリザード!




 呪文の詠唱、あるいは必殺技の名称。それらをスキル発動時に叫ばなければならないなんて誰が決めたんですか? そうです! 言った者勝ちなんです!


 意味なんて知ったこっちゃありません。文法が間違っていたってちっちゃいことは気にすんな、の精神です。どうせあなたの魔法攻撃を喰らった者はすでに亡き者となっているんです。恥ずかしがらずに、絶叫してやりましょう。きっとみんな目をそらしてくれますって。

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