第2話 黙らせたいとき


 明日から使える異世界で役立つ英会話




 異世界の住人と言えど、それらは同じ人間である場合が大多数です。レアなケースでは住人全員がネコミミを装備してケモノ要素を持った人型生物であったり、何故か結婚適齢期の女性ばかりの街であったりしますが。非常に稀ではありますが人間以外の異形が普通に彷徨いている異世界だってあります。


 しかしながらそれら異形の者どもともコミュニケーションはとれます。口腔と咽頭の構造がヒトのそれと違っても流暢な人語を話したり、あるいはテレパシーの類のご都合主義的手段で意思の疎通が図れたりもします。


 残念ながらコミュニケーションがとれるからと言って、シンプルにこちらの要求が通るとは限りません。初対面の異世界の住人は口を挟む余地がないほどにおしゃべりな種族かもしれません。


 さあ、どうしましょう。




・相手を黙らせたいとき




 Lesson 1




 shut up! (Don!)


 黙れ!(ドン!)




 単刀直入にして直球勝負な表現になります。二つの単語をワンワードとして一気に吐き捨てるよう発音すると簡単で効果的です。


 むしろ難しいのはテーブルを握りしめた拳で叩くタイミングとサウンドでしょう。軽く空間を内包した拳で音を増幅させ、shutのtでDon! です。相手は萎縮せざるを得ないでしょう。




 Lesson 2




 Don’t say a word, Never again.


 もう一言も喋るんじゃない。二度とな。




 丁寧でありながらとても強い意志を感じさせる言い方になります。こちらは転生勇者です。レベルマックスです。存在価値は比較になりません。圧倒的上から目線で腐敗した生ゴミを見るような目で、単語を一つ一つ明確に発音してやりなさい。


 しかも有無を言わせぬ倒置法、有無を言わせぬ倒置法です。大事なポイントですから繰り返しましたよ。二度も。




 Lesson 3




 Go f ピー k yourself!


 うるせえ、ピー 野郎!




 はっきり言って放送禁止用語です。相手の尊厳を粉砕し、人格すら全否定する強烈な言い回しです。しかし遠慮はいりません。ストーリーの進行上、バトルでこちらの絶対的強さを示す必要があります。言うなれば宣戦布告です。


 言葉だけでなく仕草をともなえばより効果的です。相手の目を見ながらお好きな指を立てて鼻先に突きつけて差し上げましょう。どの指かって? ウフフッ、言わせないでください。(自主規制)指ですよ!(ドン!)

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