after3 雪花VS紗雪 その1
えー現在の橋本家キッチンでは、紗雪と母さんが並んで夕飯を作っていた。
「弥生さん、こっちの下準備は終わりました。トレーに並べておけば大丈夫ですよね? 」
「ちょっと姉さん」
「あら早いわねぇ。ありがと。そしたらちょっとこっちのお肉の筋切って下味つけてもらってもいい? 今、手を離せなくて」
「弥生さんこれは一体?」
「大丈夫ですよー。こっちのまな板とステンレスのバット使いますね」
「一体私が何をしたと言うの?」
「うん、お願いねぇ」
うんうん、実に微笑ましい。
視界の端にうつるものが無ければ……。
「雪花……一体何でそんなことになってんだ?」
そこには椅子に縛りつけられ雪花がいた。
紐のせいで、ただでさえ大きな胸が強調されていてなんつーか……うん。母ちゃんいるしこれ以上は控えよう。
「それは私が聞きたいくらいよ。ねぇ、これほどいてくれないかしら?」
「「ダメよ!」」
雪花が俺に頼んだ瞬間、紗雪と母さんの声が重なって飛んでくる。
「ゆう君! 絶対ほどいちゃだめ!」
「ほどいたらご飯抜きにするからね?」
「え、えぇ……。一体何があったんだよ?」
「これを見て」
そう言いながら紗雪が黒いビンを俺に見せてくる。 えーっと……【新発売! NEWデスソース! 従来の十倍の刺激をあなたに!】
「……」
「わかった?」
もはや説明はいらなかった。こいつまた辛いの調達してきやがった。そう思って雪花を見る。
こいつ目を逸らしやがった。
「母さん、俺も何か手伝うことあるか?」
「じゃあ、お風呂掃除して沸かしてもらえる?」
「おっけ」
頼まれた仕事を遂行する為に、袖をまくりつつ風呂場に向かおうと、雪花が椅子をガタガタさせながらついてこようとする。
こわっ!
「お願い、ほどいて? 」
「……もうあのソース入れようとしないか?」
「しないから! それに……そろそろ限界なの……」
「限界?」
「……おトイレ行きたいの。このままだとこの歳にして大変な事になるわ。 けどもし、貴方がそういう性癖があるのならやぶさかでもないのだけれど……」
「はいほどきますよー! すぐにほどきますよー! だから変な事いわないよーに! そんな趣味はございません!」
いきなりなんつーことを!
「母さん、雪花にも手伝ってもらうから連れてくよ。もうソースは持たせないから」
「はいはーい。こっちはまだまだ時間かかるからしっかり綺麗にお願いね」
「あぁ! せっちゃんズルい!」
紗雪がそう言った時には、雪花はすでにトイレに向かって駆け出していた為いなかった。
……ほんとに危なかったんだな。
「ふぅ……さて、お風呂掃除しましょうか」
「そうだな」
「ちょっと待っててもらえる? 浴室に石鹸置いてくるから」
「……一応聞くけどなんで?」
「だってお風呂掃除で石鹸踏んで……は定番でしょう?」
「うちに固形石鹸はないぞ? 」
「残念ね……ゴソゴソ……」
「ちなみにシャワーが間違ってかかって濡れ透けもないぞ。わかってるだろうけど、うちの蛇口はロック押しながら回すのだからな。 だから脱ぐな。ワザワザ薄着になるな」
「……夢がないわね」
なんでガッカリしてんの!? そして結局脱いだ上着着ないのかよ!
「ほら、さっさと洗ってしまおうぜ」
「わかったわ」
そして洗うこと数分……。
「二人だとあっという間だな」
「そうね。後は泡を流してスイッチ押して戻りましょうか」
「そうだな」
「じゃあ、流しちゃうわね」
そう言って雪花がシャワーを持って蛇口に手をかける………あっ!
気づいたときにはもう遅かった。
「きゃあ。まちがってじぶんにむけたまま蛇口をまわしてしまったわー」
なんつー棒読み……。
振り返ると、そこにはシャワーから出たお湯でずぶ濡れになった雪花が……っ。
「ねぇ見て? シャツが濡れて張り付いちゃってるの。こんなに透けちゃって……恥ずかしいわ……」
「そ、そうだ……な……」
「だから……抱きしめて隠してくれる?」
その言葉に俺の理性が飛びそうになった瞬間……。
ガラッ!
「あー! やっぱり! せっちゃんだったら絶対迫ってると思ったらその通りだった!」
紗雪がやってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます