第69話 奈々の合格発表
「で、奈々の番号は?」
「へ?えっとね、806番!ハーレムだね!」
と、そんなことを俺の隣で言う奈々。
今日は奈々の合格発表の日だ。うちの学校は校門に貼り出される為、今二人で見に来ていた。他のみんなも来たがってたけど、大所帯になるから俺が代表で。まぁ、兄貴だしな。
それにしてもなんだその番号。狙ってんのか?
列になって順番に見てる為、今は俺たちも並んでで順番待ち中。
奈々は隣で左手は受験票を握りながら、右手は俺の腕を掴みながらソワソワしていた。
周りから「リア充が!」とか「カップルできてんじゃねぇよ」とか聞こえるが気にしない。兄妹だもの。
ほんの数ヶ月前まで、ツンツンしてたのが嘘みたいだな。
「そんなに緊張しなくても奈々の成績なら大丈夫だろ」
「そんなのわからないでしょ! 奈々より頭良い人なんてたくさんいるんだから!」
「いや、そうは言ってもお前ずっとゲーム三昧だったじゃねーか」
「いやぁ……それはぁ……ねぇ?イタッ!なんでぇ!?」
誤魔化す奈々にデコピンしてやった。
まったく……。
そんな話をしているうちに順番回ってきたみたいだな。
「おい、そろそろだぞ。ちゃんと探せよ」
「えぇ……おにぃが見てよ。奈々無理!」
いや、お前の合格発表だろ!? あ、フード被りやがって! はぁ……。
「どれ、806……806っと……おっ!」
隣で奈々がビクッとなる。俺の腕を掴む手も心なしか震えてるようにも思える。
ホントに緊張してるんだな。まぁ、頑張る姿を見られるのを恥ずかしがって、ゲームって言いながらホントは一人で勉強頑張ってたのは知ってるからそんなに怖がるな。
俺はそっと奈々の頭に手をのせて言った。
「奈々、おめでとう。春からは同じ学校だな」
そう言うと奈々はすごい勢いで顔を上げると、目深に被っていたフードを取り受験票と発表ボードを見る。その目にはだんだん涙が溜まっていき……
「やったぁ! おにぃ! 奈々受かったぁぁぁぁ!うぅぅ……ふぇぇぇん」
ちょっ!こんなところで抱きつくな!
みんな見てるから! ん? 近くの男共がなんか言ってるな?
「なんだ兄妹か」
「巨乳だし可愛いな」
「入学したら狙ってみるか」
よし、予定変更。俺は奈々を強く抱きしめ返すことにする。お前ら見てろよ?
「ふあっ!?んっ……えへへ。おにぃ大好きぃ」
奈々はすぐに満面の笑みになる。それと同時に奈々を見初めてた男達の顔は渋い顔になった。
残念だったな?諦めろ……ってちょっと大人げなかったか?まぁいいや。
「よし、そろそろ帰ろう。みんな待ってるから早く教えてやらないとな?」
「うんっ!」
帰ってから奈々の合格を報告するとみんなも一緒になって喜んでくれていた。
紗雪なんかは一緒になって泣いてたり。
うん……ホントに良かった良かった。
ズズッ……おっと、ティッシュはどこだったかな……。
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