第64話 睦月とデート

 さて、今日は睦月とのデートの当日になったわけだけど……。

 家の前で待っててって言ってたけど来ないな。寝坊か?

 ん?車?うちの前に?ってあれ?


「ゆうちゃんおはよー!」


「睦月!?その車どうした?」


「どうしたってあたしの車だよ。社会人だもん。車くらい持ってるよ」


 ちょっとびっくりだ。

 そして怖い。

 ラノベのテンプレの怖い運転パターンじゃないだろうな?


「何そんな微妙な顔してるの?失礼だなぁ!ほら、早く乗って。ちょっと遠いんだ」


 睦月に言われて助手席に乗る。

 睦月も運転席に座った。二人ともシートベルトをちゃんと締めて──。


 結果だけ言うと、運転はホントに普通だった。怖くもなく、遅すぎることもなかった。

 まぁ、そりゃそうだよな。でなきゃ免許持ってるわけないか。

 そして大体二時間位走ったかな?俺達が乗った車は止まった。


「さ、ついたよ!」


「ここは?」


 なんか派手な建物だな。


「ライブハウスだよ!」


「ライブハウス?」


 いや、ライブハウスはわかるけどなんでだ?

 俺が首をかしげていると睦月が説明をつづけた。


「ほら、前に見せたギターあるでしょ?友達の真似たってやつ。その友達が今日ライブやるからゆうちゃんも連れていきたくて」


 あぁ、あの黒光りの。なるほどね。そういえばゴリゴリのライブとか見るの初めてかも。

 声優のなら行ったことあるけど。

 ちょっと楽しみだな。


「ほら、そろそろ時間だから入ろ!」


「あ、あぁ」


 そのまま睦月に手を引かれて俺達はライブハウス内に入っていった。


 ──そして現在は客のいなくなったホールの中に二人でいる。

 結果だけを言おう。

 すんごかった。鳥肌立つほどかっこよかった。帰ったらみんなにも教えよう。


「あ、来た!」


 誰が?

 睦月の声に反応して視線を追うと、そこにはさっきのバンドメンバーがいた。


「睦月、おまたせ。そっちの子が昔から言ってた子?」


 口を開いたのは睦月と同じギターを持ったボーカルの人だった。

 この人が睦月の友達か。肉の人か。

 俺は軽く会釈だけして挨拶する。


「そうだよー!ねぇゆうちゃん、この子が前に見せたギター教えてくれるあたしの友達でまひるちゃん」


「よろしくね?」


「あ、はい」


 なんか、すごいカッコいい女の人だな。


「ついでにメンバーも紹介するわね。来なさい」


 まひるさんがそう言うと、後ろにいた三人が一歩前にでてきた。


「こいつがベースのコウタ。残念イケメンだけど、金髪ロングのロリ彼女がいるわ」


「あぁっ!ひでぇ!誰にも言わないでっていったのに!」


 うん、この人のベースはすごかったし見た目もカッコいいんだろうけど、このメンバーだとなんか普通だな。


「こっちはドラムのカイト」


「どうも」


 声低っ!すげぇ重低音ボイスだな。かっこいい!けど、その肩の鷹はなに?めっちゃこっち見てるけど。


「ちなみにその鷹は剥製だから安心して。彼は鷹匠もやってるせいか、鷹がいないと落ち着かないみたいよ。ね?」


 剥製……か?今目が動かなかったか?

 あ、カイトさんが目逸らした。


「最後に彼女がソキンニア。キーボードよ」


「うふ、よろしくね?」


 おぉ、銀髪の美人お姉さん!エレナみたいだな!けど、なんか肩幅広い?気のせいか?


「さ、紹介も終わったし焼肉に行きましょう。睦月達も来なさい」


「え?いいの?やった!ゆうちゃんもいこう!」


「え?あぁ」


 そんなこんなで打ち上げに付き合うことになった。


 焼肉屋につくと個室に案内された。


「この部屋は完全防音だから騒いでも大丈夫よ。コウタ!ワタシはとりあえずミスジね」


「はいはい……」


 まひるさんがそう言うけど、なぜ焼肉食べるだけなのに防音?

 って思ってるとカイトさんとソキンニアさんがスマホを取り出すと順番に歌い始めた。

 えっ、なに!?

 隣の見ると睦月も目を丸くしている。


「くそっ、またS止まりだ!」


「あら?私はSSいったけど?」


 あぁ、カラオケのアプリか。

 けど、こんなところでやらなくてもよくない?

 他の二人を見ると、まひるさんはノートPCを出してなんかカタカタしてる。

 コウタさんはみんなの分の肉を焼いてわけている。なんか健気……。


「なぁ睦月?これ、俺達来る意味あった?」


「まぁ、おごりだっていうからいいんじゃないかな?ほら、食べよ食べよ♪」


 俺の分は睦月が焼いてくれてるみたいで、どんどん目の前に肉がくる。このミスジっての上手いな!

 後、カイトさんの鷹のよだれすごいけど大丈夫なの?絶対剥製じゃないでしょ!?


「「あ!」」


 ん?


「ごめんまひる。今連絡がきて、うちの姪っ子がイヤな事を言われたみたいだから今から鷹けしかけてくる」


 そういって出ていくカイトさん。


「まひるちゃんごめんね。私も奥さんが寂しくなってきたみたいだからそろそろ帰るわね」


 そう言うソキンニアさんに、まひるさんは手を振り替えすだけ。

 ……ちょっとまて。奥さん?ソキンニアさんに奥さん?え?


「言ってなかった?ソキンは男よ」


 まひるさんは言いながらビールを飲む。


「「……」」


 それからしばらく食べたり話したりしてるうちに時間も時間だから解散することになった。


「まひるさん、会計きましたよ。……まひるさん?」


「ぐぅ……」


「あぁ!またこの人寝てる!酒弱いくせに飲むから!」


 不憫な……。


「えっと、今日はあたしも持ち合わせないから……ごめんね?まひるちゃんにはあたしからも後で言っておくから?」


「あぁ大丈夫ですよ。こんな事だろうと思いましたもん……はぁ」


「じゃ、ごちそうさまでした」


 店の外に出ると、外はすっかり日が暮れていた。


「じゃあそろそろ帰る?」


「ゆうちゃん何言ってるの?」


「え?」


「あたしもお酒飲んじゃったから運転できないの。そしてたまたまホテルも予約してあるの」


「えーっと、つまり?」


「デートはまだまだこれからって事♪」


 あぁ、そういう事ですか。納得。




次回はイチャイチャ回!!

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